第368話 √3-20 気になる彼女は○○○で×××で。
ユイとか誰得だよ!
……少なくとも俺にとっては俺得なんだよ、ゴメンネ。
「「えー………………」」
ユイが未だぽやぽやと眼を半開きにしながらうとうとしている最中、いつものメンバー揃っての静かな驚きの声だった。
「えっと、その……どういうことなの」とユキが明らかな動揺を隠せずに。
「何が起ったのか分かりません……ユイさんが眼鏡を外したら」姫城さんも外見上はそれほど変化はないけども、混乱していることには違いないようだ。
「めっちゃ美少女」と、俺は続ける。
「「………………えー」」
いつものメンバーの総意はやはり驚きだった。
今度は先ほどとは違って大きめの声だったか、ユイも眼を覚まし始めたようで。
「どしたユウ……ジ……っぁ!?」
今までのユイの声とは違う裏返った高く透き通る声……うん? ユイの通常の声は作っていて、もしかしてこっちが素だったりするのか?
耳に眼鏡が掛かっていないことで違和感があったのか、何かに気付いたかのようにはっと表情を変えると、顔を真っ赤にするのが俺の目にも見えながらも、ユイは机に突っ伏した。
「すーすー(棒)」
……切ないぐらいの棒演技だった。
「ユイ、バレバレだ」
「うぅ……」
そうして起きあがってユイは、あたふたと無意味に手を動かしながら。
「め、眼鏡は!」
「ユイさんすみません、少し待って下さいね」
何故か姫城さんがユイの眼鏡を取りあげていた。色々聞きたいこととか、言いたいことがあったから果てしないグッジョブ!
「か、返して」
まだ寝ぼけが治らないのか、いつもと違う声で舌足らずなこともあって――な、なんかかわいいな。
「なんかかわいいな」
「えぇっ!?」
「「!?」」
ユイが真っ先に驚き、他の皆も驚いた。
「ん? なんか変なこと言ったか?」
「へ、変に決まってる……アタシが眼鏡取ったら!」
「眼鏡かけてる方が変だろ」
「変だったの!?」
「「えぇっ!?」」
総じての驚きは三回目にして更に音量が向上である。いや、それが変じゃないとか一体どこの大道芸世界だよ。
「いや……そのグルグルはどうよ」
「で、でも注意されたことないっ!?」
「……なんでなんだろうなあ」
「ええぇ!?」
素の声で、素の表情で驚いていた……なんだかなあ。
「で、ユ、ユウジさっき可愛いって……」
「違いないが?」
「「あっさり!?」」
ユイも同調して驚かれた。
……まあ狙ってるんだけどな。ユイ弄る機会なんてあんまり無いから、あまり嫌な感じにならないようなモノで。
「てかユイもったいねーな、可愛いじゃねーかよ」
「か、かわいいかわいい言うな!」
おもしれー……まあ、実際ギャップ凄まじすぎて可愛いことには違いないのだけども。
「確かに……かわいいよね」
「かわいいです……」
「」
「えぇえ!?」
マサヒロは以下略。女性陣二人の意見も同じだった。
そう言われる度に顔を赤くして、俯きがちになるんだが……あ、やべ。ガチでかわええ。
いかんいかん、ここで止めておくか。
「――まあ、ユイは嫌みたいだし無理強いはしないからな」
姫城さん、ユイに眼鏡返してあげて。と言ってユイに眼鏡が戻る。
どこか自信なさげだった先程までのユイとは違って、少し口元が引き締まった気がする。少し顔の赤みが残っているのは御愛嬌。
「ええとだな……フェイクだ!」
「「ええー」」
恐らくは今までのアタシはフェイクだ、引っかかったなはーっはーっは。と言ったところなのかもしれないが。
「無理あるぞ、ユイ」
「はーはっはは…………忘れて下さい」
せっかく戻った(残念なことに)ユイは更に素に戻って敬語を使用してのお願い。
ここまで誠心誠意を見せらると、参っちゃうなあ――
「お断りします」
「ごめん、無理」
「すみません」
「」
「EE!」
と、まあユイの弄り方を見つけた俺たちだったが。これ以上は流石に可哀想になってくるので止めた。
「(……でも、少し嬉しかった……かも)」
そんな言葉が聞こえた気がするが、ユイの為を思って聞かなかったことにしよう。
とりあえず、ユイかわいいよユイ。
割とガチで。
* *
その頃――じゃないですよ。
ユウジの冗談のつもりがタラシが発動してるじゃないですか! どこまであなたは……
まあ、あとあと一人で愚痴りましょう。
「(”ルリキャベ”シナリオとはほぼ無関係とはいえ……ここまで大きな変化があるというのか……!)」
ちなみに桐が小学校での授業中に何かを感じ取って思います。
「(ユイの眼鏡解放は前回のイレギュラーな√時、しかし時期はもっと先のはずじゃ……)」
深刻そうな面持ちで、
「(また、何かが起こっておることなのじゃな)」
そう心の中で呟く。
「きりちゃん、さんすうおわったよー」
「あ、ほんとだー☆」
……初めて聞きましたが、この桐キモ!
「(キモイいうな!)」」
この返しがキモイです!




