第363話 √3-15 気になる彼女は○○○で×××で。
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打ち上げ会場はまさに葬式の雰囲気。
副会長と書記は乾杯の後まもなく姿を消し、まばらな体育祭委員の間ではひそひそと密談が展開される。
憮然とした表情で痛飲した体育祭委員の一人がついに机をひっくり返すと、
体育祭委員の女子がヒステリックに号泣。
生徒会役員のユウジはトイレ個室でメ●シャキを飲みつつこの悪夢が早く終わることを天に祈る。
挙句、会長が半べそをかきながら壇上で土下座をするという最高のエンディング。
これが藍浜高校体育祭の顛末である。
――というのはいくらなんでも嘘だ。
これも非公式新聞部が発行予定の新聞を没収の後、その記事を抜粋。
いやいや、そこまで悲惨じゃねーから! 元ネタが残念なことにあるから!
チサさんと福島が必死で新聞部の拠点を付きとめるも、既にもぬけの殻で記事データの入っていたメディアしか残されていなかった。
メディアには音声ファイルも残されていて――
『見つけられたことは褒めてやろう。だがツメが甘かったな! 貴様らがこれを見つけることも出来なければ、このメディアに入った新聞を刷るところだったが、それは止めておいてあげよう。それでは我が敵藍浜高校生徒会、また会おう!』
……以上。
それをプルプルと震える手でパソコンを操作して、チサさんは音声ファイルを閉じた。
「ふ、ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふうふふふふうふふふふふふふふふうふふっふふふ」
口からそんな恐ろしい声を漏らすチサさん。ああ……これはガチキレだ。
「やってくれるわね……杉谷。上等じゃない、次の行事まで叩きつぶしてあげるから、覚悟しなさい……ふふふふふ(以下略)」
おそらく杉谷と、いうのは非公式新聞部に関係のある名前なのだろう。
ちなみに怒りに燃えるチサさん以外は、してやられたこよりも疲労が勝っている。
「走り回って、あのオチはねーぜ……」
スポーツ少女な福島も、どうやら学校の校舎中を探しまわったらしく疲弊してぐったりとしている。
とりあえず「お、お疲れな……」「おう……」と言うなりテーブルに突っ伏。
「クランナは大丈夫か? ずっと外でやってくれてたけど」
「……大丈夫ですわ。心配してくれてありがとうとお礼は言わせていただきますわ(おかげで休めましたし)」
「そっか、なら良かった」
元気こそ無くなっているが、顔色も悪くないし大丈夫そうだった。
実際あの炎天下で午前の部の諸々の設置はクランナが動いていたのは確かなことで、だから午後の部の途中で休むよう言ったのだ。
「……ユイは?」
「アタシ……は、大丈夫です」
疲れのあまり口調変わってる。
「あまり体力仕事は得意じゃないので疲れました……ユウジはいいですね、実況で」
口調は丁寧なのに皮肉が混じり始めた!? もはや誰だ。
「いや、悪い……俺も手伝えれば良かったんだが」
「……問い詰めたくて言ったんじゃぬえ」
口調こそ戻るも不機嫌そうだった。
「(そんなにアタシ以外がペアの方が良かったのかよ)」
ブツブツと言っているのだが、正直まーったく聞こえない。
「まあ、お疲れな」
返しも力なく「……うん」と一言。なんてーかユイらしくないことこの上ない。
「お疲れ様ー、ユウくん」
姉貴は休まず来客対応から、委員への指示などや自らもクランナやユイと一緒に行動していたので疲れているはず。
今トイレに行って来たのだが、もしかすると今日始めてなのかもしれない。
「おつかれ姉貴……って、買ってきたのか?」
「ううん、購買のおばちゃんに貰ったの」
両手にはファミリーボトルのドリンクやらお菓子などが入っていた。
「生徒会室に紙コップは……あったっけ」
「姉貴、俺も手伝うぞ」
立ち上がって、とりあえずは姉貴の元へと向かう。
「ユウくんは休んでて?」
「ダメ。姉貴も疲れてるに違いは無いんだから手伝う、異論は認めない」
「……ありがとね。じゃあ、お手伝いお願いします」
「はいよ」
生徒会室の備品入れから紙コップと紙皿を取り出し、テーブルに並べる。
それで、俺はというと冷蔵庫に入れたままだったおしぼりを取りに行った。
「だれかチロビタ飲む人いる?」
福島とユイとチサさんが手を挙げたので、冷蔵庫で冷えたそれらを俺の分を含めて持っていく。
「あれ、そういや会長は……」
寝ていた。すやすやと寝息をたててテーブルに顔をついて眠っていた。
会長も何もしなかたわけでなく、宣誓の文章も考えた(結構普通)り、来客対応の為の椅子並べなどもした上で、競技にも参加していた。
「お疲れ様でした、会長」
俺はそう呟くと、なにか会長の体にかけるものはないかと探し。ちょうど着ることなく放置していた俺の学ランがあったので肩にかけておく。
「それじゃ、乾杯するか?」
小声で言うと、それぞれ「おー……」「はい」「……だぬ」などと答え。
音戸を取るのは……会長ダウン、チサさんは未だにパソコンを見つめてるし、まあ姉貴だよな。
「副会長、頼みます」
「いやいや、今日はアナウンス頑張ったユウくんで」
「いいのか? じゃあ――生徒会役員、お疲れ様な打ち上げ、開始からの――」
乾杯。
少し飲んで、少し摘まんで、少し話して。いつも以上に元気のない生徒会は、それから約一時間でお開き。
まあ、なんというか色々疲れた。今日はぐっすり寝るか――
「…………」
そういえば打ち上げの時に、時折クランナから視線を感じた気がしたんだが……また俺は何かしでかしたのだろうか?




