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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十三章 気になる彼女は○○○で×××で。
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第353話 √3-5 気になる彼女は○○○で×××で。

イイハナシカナー?

「行きますよ、した

「……ああ」


 俺はクランナからそんな呼び方であった。

 名字の下之から来たであろうが、なぜ”之”を失くした上で読み方を変えたのか。

 ……容易に想像は出来た。


『あなたにはそのような呼び方で十分です』


 と、言われた。

 そりゃ、クランナ目線だとセクハラをされた男だからなあ、俺ってヤツは。

 ”下僕”やら”カス”やら”ゴミ”やら言われなかったことが幸いなぐらいだ。

 

「とりあずは印刷室に行って、プリントのコピーだな」

「……そうですか」


 会話終了。すぐさま途切れてしまった。

 それで俺はと言うとクランナと隣を歩くのは気まずいレベルではないので、 俺が前を進むように先を歩いている。

 すると、後ろから声が聞こえた。


「あの……私はこの学校に来てそれほど経っていないのです。印刷室までの案内はよろしくお願いします」

「ああ、分かった」


 彼女はともかく律儀で丁寧で真面目だ。

 仕事と私情の割り切りが出来ているのかもしれないが、こうして頼むときは、普通に頼んでくるのだ。


 俺も入学してばかりとはいえ、一応チサさんに主要場所は叩きこまれた。 

 一応クランナも聞いていたが、どうにも覚えられてはいなさそうだった。

 仕事の事柄はすぐさま覚えるのだが、もしかすると道程を覚えるのが苦手なのかもしれない。


「…………」

「…………」


 無言が続く。しばらくは俺は彼女の様子が全く見えないまま、先を歩き、そうして目的地へとついた。


「ここが、印刷室な」

「……はい」


 教室の半分ほどの大きさの部屋で、そこには業務用のカラーコピー機と白黒コピー機がそれぞれ一台ずつ並んでいる。

 他には数多あまたの種類の紙質の違いから大きさ、色に至るまでを揃えている棚が並び、巨大なインクカートリッジが入っているであろう引き出しのあるだけの、カーテンで斜光されて蛍光灯だけが明かりの、コンクリート地がむき出しの部屋だ。


「……この印刷機をどうするのですか?」

「ああ、これをな」


 ポケットからプラスチックケースに入った情報記録メディアを取り出す。

 そこにコピー、印刷するプリントのデータが入っている。

 その記録メディアをカラーで印刷する必要はないプリントなので、白黒専用のコピー機に入れる。


「印刷機の電源を入れて”コピー”を選択してから、印刷機のカード挿入口に入れて、ここにある液晶で印刷したいものを選択する――」

「はい」

「選択したら枚数指定をして、それで印刷する紙をセットして、後は待つだけ」

「……なるほど」


 今ではそんなことしないであろう、と言わんばかりに手の平サイズのメモ帳とボールペンを構えて俺の話す事柄のメモを取っていた。 

 今までの生徒会の覚えることも、そうやってメモ帳に取っていた。


「なんてーか、真面目だな」

「……私のことですか? 当たり前ですわ。生徒会なんて真面目な人しか務まりません」


 もしかしてセクハラもするような不真面目で不潔な俺は生徒会に向かない、と遠まわしに言っているのだろうか。

 ……考え過ぎか。


「ま、まあな。あんな人らだけど、仕事はしっかりやる時はやるもんなあ」


 雑談して過ごす時間もあれば、こうして下級生へと指示を出して印刷を頼んで来る。

 その間に書記のチサさんは体育祭の備品の調査を、ユイとしているし。会長と福島も色々としているらしい。

 副会長の姉貴も、実質生徒会を統率しているだけあって忙しそうだ。


「当たり前です。あなた以外は真面目です」

「……まあ、俺はそうかもな」


 こうして仕事をやるのは、俺がただ流されているだけで。自分の意思でやりたいと言ってもいないし、かといってやりたくないとも言っていない。

 ただ課せられた仕事を機械的にやっているだけだ。

 ……そう意味では、俺はセクハラの事柄を抜きにしても不真面目なのかもしれない。 


「……肯定しても、印象が悪くなるだけですわよ」

「もともと、ここに入ったのも姉貴の為だ。俺の印象がどうなろうと、構わないさ」

「乱雑過ぎますわ。そもそも入ったのが……アネキ? えと、お姉さんのことですの?」


 なんで姉の為にそんなことを? というような顔をしている。


「いや知ってるだろうに。俺、副会長の弟だし」

「へえ、弟さん…………へ? あの、副会長というのは下之美奈会長……下之!? えええええええええええええ」


 今気付いたようだった。ええー、遅すぎないか。


「嘘を言うのはおよしなさい! あなたと副会長は、まっっっっったく似ていませんわ!」


 容姿で兄妹と分かるのは少ないよなあ。 


「それでも、一応俺の姉貴だ。まあ、姉貴はスゴイしな。成績優秀で容姿端麗で運動神経抜群で、生徒会で副会長もやっていれば、家では母親代わりに家事……凄い人だと俺は思うよ」


 それを踏まえても、俺を溺愛し過ぎなのだと思わざるを得ないが。

 こうして生徒会に無理やり入らされても、こうしているのは姉貴のことがあってだ。


「副会長は……凄い人なんですね」

「俺だって、姉貴にばっか背負わせちゃマズイしな。あの生徒会の入れられ方は抜きにしても、姉貴の負担を少しでも軽減出来ればいいと思って……俺はこうして生徒会やってるんだ」

「……そう、なんですか」


 家事も手伝ってはいるが、それでも姉貴の負担は大きい。朝早く起きて朝食と弁当をつくり、日の暮れる放課後まで生徒会の仕事をして、帰ったら夕食づくり。

 そのほかの家事もホニさんに手伝ってもらったり、俺もやっていたりはするが、膨大なのは違いない。


「姉貴には色々迷惑をかけてたしな、それに姉貴が俺を推薦した時点で、俺に入ってほしいって言ったようなもんだしな」

「自意識過剰でなくて?」

「それでも、姉貴は嬉しそうだから俺はいい。裏方でもサポート出来ればいいさ」

「…………」


 印刷室で、印刷機がウィンウィンと音をたてて印刷される中。俺はクランナにそんな話をしていたのだった。


「……ふぅん、そうですか」


 小声でクランナが何か呟いた気がしたが、それはよく聞きとれなかった。 

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