第351話 √3-3 気になる彼女は○○○で×××で。
原点回帰狙いの、桐VSユウジ再び。この兄妹は本当に仲がいい。
プロローグのプロローグから進む日常、始まりの時。までの「1から7のダイジェスト。」第100部に追加しました。
√1に飛びたい方や、どんな話だったか思いだしたい時にオススメですー
「ユウジ! お主が転校生にセクハラしたというのは本当なのかぁ!」
家に帰って、パソコンに向き直ってネットサーフィンの真っ最中に俺の部屋の扉が開け放たれ、キレ気味に桐が仁王立ちをしていた。
「世界狭すぎだろう!」
なんなんだこの町は。学校の新聞でさえ出回る地域密着型新聞社会だと言うのか(?)
「これはわしが裏ルートで手に入れた!」
「お前は学校とも繋がりがあるんかよ!?」
こんな見た目だけはロリっ子な桐が藍浜高校との接点があるとしたら……いや想像できないって。
「正直に話して貰おうか! 胸の揉み心地は良かったかっ!」
「そんなもん新聞に書いてねえよ! ……てか、お前の攻略情報だろうよ。知ってたんだろ? 一部を除けば不可避なんだろ? そうなんだろ?」
「操縦不可能じゃったんじゃろ? だとしても揉んだことには変わりないんじゃからな、それで自分が逃げられる可能性の一つにするのは止めるのじゃな!」
「ぐ……」
まあ、桐が予め知っていても、俺がしでかした事実には違いない。
「し、知らねえ。あんなパニック状態で揉んでも記憶に残ってないからな」
ピッ……ピッ? なんだこの機械音というかボタンが押されたかのような音は。
「――録音した。そしてこれを生徒会に送るとするかの」
「いやいやいや! 確かに間違っちゃいねーけど、それは卑怯なんじゃないか!?」
「わしの√にお主を入れるまでは……諦めぬ」
「まだ粘ってるのかよ。日の経った納豆は粘りがなくなるように、お前も飽きると思ったんだがな」
「例えが、何か腑に落ちぬ!?」
「ともかく、NOロリてーことだから」
「ぐぬぬ……わしは何度も何度も誘惑してるというのに――ま、まさか本当に二次元にしか興味がない!?」
「お前も元は二次元だから、いくらか良い容姿してるじゃねーか。三次元にも興味だってあるさ……でもな」
「でも?」
「世界は……いや――都は桐を許してくれない」
「おのれ石○! 個人の嗜好まで踏み込むとは……貴様の描いた若気の至りをTOKY●MXほかUHF局でアニメ化してやろうか!」
「……なんか俺も色々とイライラさせられてるから、それは同意だ。アニメはフラッシュアニメでいいだろ」
「低予算で切り詰めて……ふふふふ――は、今は置いておいてじゃ!」
ち、と俺は舌打ちをする。話を逸らすことに成功したとばかり思っていたのに。
「てか、桐はなんで俺にそこまで固執してんだよ。どうせ弄り甲斐のある男なら誰でも言いロリ●ッチだろ?」
「訳のわからぬ侮辱を受けたのじゃ!?」
「いやいや、俺と桐は一応妹では通ってるけどよ。実質は今年の四月に会ったばっかりなんだからな? それで、求愛っぽいことされても困惑するしかねえよ」
ぽい、と言っていいのか分からない。襲撃具合だかが、まあそれは目を瞑る。
すると桐は、どこか今までの怒りながらも、どこか楽しそうな表情を変えた。
「会ったばかり……そうじゃな」
何かを含みを入れるように、桐は呟いた。
もしかしたら桐は、過去に俺に会っている……いや、ゲームのヒロインとどうやって出会うのやら。
元々俺の家族には、姉貴とミユと俺と母親しかいなかった。ホニさんも桐もユイも後からやってきた。
ホニさんとユイは今年の春に。桐は前からいたことにはなっている。
「…………?」
俺は桐のした表情の意味が分からずに首を傾げる。まったく身に覚えが無い。
「べ、別に良いじゃろう! 一目ぼれと、言っておけば十分じゃろう!」
「……桐も成長したら分かるさ、俺を選んだ愚かさを」
「ひどいぐらいに自虐!? ……少なくとも、お主と過ごしてきて後悔などしておらぬ。お主、ユウジは――主人公よりも面白い」
主人公より面白い? 主人公ってのは、ゲームのか?
「面白いって……言う程褒めてねーだろ」
「今の時点ならば十二分に褒めたつもりじゃ。それに”まだ”あるがの――今言っても仕方ないからな」
……? 桐の言っていることはイマイチ分からないことが多い。今の時点とかまだとか、お前は未来予知者か。
「……世界を繰り返したら、それは予知とは言えぬがな」
「ん?」
「なんでもない――だとしても、わしはお主を相当に気に入っておる。婿に来い」
「ストレートで男らしい告白だこと……だが、お断りだ。理由は以下略」
「よ、嫁に」
「性別変えてもしょうがねえだろよ、一応俺の妹だろうに……家族で恋愛感情とか勘弁して欲しいぞ」
そう言うと、ガッと俺に顔を近づけて。
「あ! 今お主は色々と敵に回したっ!」
「いやさ、この日本って国は近親で結ばれることが御法度みたいになってるだろよ。いくら画面上でそれが出来ても、現実では無理だからと、背徳と現実へのアンチテーゼを兼ねてる空想の産物だろうに」
と、俺は思っている。
「ぐ……マジレスかっこ悪いのじゃ。それにこの世界は現実でもゲームでもない――ぞ!」
「て、言われてもなあ。妹は生意気というか、姉貴は弟としての愛し方を間違っている気がするし、母親はアレだし。少なくとも、この現実で家族恋愛が出来たとしても何の感情も湧かないなあ」
ミユはなあ、今は嫌われてるし。姉貴は煙たいほどの溺愛ぶりに晴れ時々ウンザリだし。母親は以下略。
「ぐ……さりげなく、わしを除いたじゃと。ホ、ホニはどうなのじゃ!」
「ホニさんは、ギリギリアウトだろう」
中学生の容姿な上で神様だからな。
「聞いたらあやつ泣くぞ」
「ええ!? いや……ホニさんは可愛くて大好きだけどさ、なんてーかさ。俺と恋愛感情に発展することはないと思うんだよな――なぜか知らないけども」
ホニさんは俺に懐いてはくれてるのでいいのだけども。
「……ふうむ。それじゃあ、他の女子はどうなのじゃ? ユキにマイにユイもおるじゃろう? 生徒会メンバーも」
……俺の周りにいる女子手あたり次第だなあ、オイ。
「俺はそこまで女に飢えてねえ。ユキと姫城さんは、やっぱり遠い気がするんだよ。友達でいれるのが、逆に奇跡なんじゃないかと思えるぐらいだ。ユイとは普通に無い。生徒会はなあ……転校生は自分が発端とはいえ露骨に嫌われてるし、福島も同級生だって知ったのに会う機会さえ生徒会以外でないし、生徒会長もチサさんも何か違うんだよ」
ユキや姫城さん、生徒会メンバーとも知り得たのもあくまで俺が”主人公”になったから。
俺単体ではユイと話せていたのが関の山だろう。
「……ふむ、そうか。ならばわしじゃな!」
「完全に話聞いてねえな! お前とは、無理!」
「ぐぬ……わしとお主は肝試しで一緒になった仲ではないか」
「くじ引きの結果だろうに……てか、もう出てけ」
「い、妹に対する態度としては不適切じゃ! 首根っこを掴むな! そして外へと――」
俺は桐を扉の外へと放り投げた。
「恋愛ねえ……」
桐が俺に固執する理由は、やはりイマイチ理解できない。
そして、
「俺には無理だろ」
俺は恋愛向きじゃないだろう。自分でも自覚があるほどのヘタレっぷりと、女心は一切読めないし。
「だから、か……」
失敗した理由はそんなところだろう。だから、俺はもう諦めているのかもしれない。仕方なしに二次元に逃避していたのかもしれない。
「あんな、フラれ方されちゃあなあ」
……もう、十二時か。今日はアニメは予約して寝よう。なんだか、今日は疲れた。