第349話 √3-1 気になる彼女は○○○で×××で。
少し総集編風味で、次回からが実質の本編に……なるといいなあ
突然だが、俺は今かなりのピンチだったりする。
幼馴染が目の前で事故死寸前だったり、病み気味の女の子に殺されそうになったり、拉致られて生徒会に強制的に入れられそうになったり――
は、今までにあったことで。
今回はそれに見劣りもしないであろう、大事件だ。
「…………」
『…………』
俺の手は、柔らかい何かに埋まっている。
そしてその”何かに”薄々気づいてもいて、俺が何をやらかしてしまったのかも知っている。
色々言い訳をしたい、あまりにも理不尽経緯こそあれど――
したって意味がないことは分かっている。
だって、俺は衆目の中で女子生徒にセクシャルハラスメントをしているのだから。
鼓膜がお亡くなりになるんじゃないかと言う程の、女子生徒の絶叫を聞くのは、それほど後のことでもなかった。
今日のあの事件以来は罪悪感盛りだくさんで、俺は心が折れてしまいそうだった。
まぁ、いわゆる俺は、女性の胸を思い切りに触ってしまったことになる。
……言い訳をしたい、それが不慮の事故であると、それは――
結局は前方不注意の俺は、完全にクロだ。
そして、人生というものの世知辛さと、入学してからの連続ハードモードのあまりに感動で、砕け散りたい気分だった。
そうして俺は、その女子生徒と願ってもいない奇跡の対面を果たす。
運が悪い日はトコトン、ツキがない。
せめて別のタイミングで出会えて、土下座してもいいから謝れればいいと思う。
更に言い訳をするならば、俺も彼女に謝ろうと校内を探したが、雀の涙ほどの休み時間は終わりを迎え、彼女とまた出会うことが出来なかった。
『さ、さっきのセクハラ男!』
なんというか、あれだ。
これが最初のファーストインプレ……なんだっけ? 事実顔を見合わせての出会いは、これが初めてで。
俺の印象は、とにかくストップ安。
今までのどんな破天荒な出来事の中でも、このコンボはかなりにダメージが大きいものだ。
……うん、ちょっと今は引き籠りたい気分だ。数年ぐらい。
生徒会で、ズビシと被害者の女子生徒が顔を真っ赤にしながら俺を指差した。
もう、それを見た途端に俺の行動は決まっていた。
「本当に悪かったっ」
俺はもう頭を下げた。会長が唖然とし、チサさんは何か声を殺しながら微笑をし、福島はジト目、姉貴はあたふた、ついでに付いて来ていたユイも首を傾げている。
状況があまりに最悪で、俺の行動の下劣さもここに極まれり。
「こ、こっちにきてくださいっ」
この状況がマズいことに一瞬で気付く彼女は、俺を連れて生徒会室を出た。
「ど、どこまで私に恥をかかせますのっ!」
正直俺はパニくっていた。なぜ、あそこまで唐突に謝ったのだろうか、と今考える。
「……かさねがさね悪い」
「悪いですわっ! 私のむ、胸を揉んだ挙句に……生徒会室まで乗り込んで来るなんて!」
「……いや、それはな」
「言い訳は結構! ともかく、私に今後関わらないで頂けますこと?」
「……それがな――」
そのあと、俺が生徒会役員だと知って。この世の終わりとも思える表情を彼女は浮かべた。
起ること起ることが負の連鎖を繰り広げている、現在連続ボーナス中だろうか。
それでも、彼女が無視するということを言い残して去って言ったが、やはり俺はツイてない。
その時近くで聞こえた、カメラのシャッター音がその起りうる未来を如実に語っていたのかもしれない。
そう、これは彼女――オルリス・クランナとの出来事。




