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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十三章 気になる彼女は○○○で×××で。
209/638

第347話 √3-0b

OVA編の異常の平和な裏では。このような出来事が――


後日修正予定

「桐! ユウジさんの中で何かが起ってるってどういうこと!?」


 二〇一一年三月三十一日を最後に二〇一〇年の春へと巻き戻される世界。

 しかし今回ばかりは、巻き戻ることはなく、かといって進むこともない――最後の三〇分をループする世界。


「……ユウジの部屋に行ってみれば分かるじゃろう」


 そう言って桐は自室をホニを引きつれて出て行くと、ユウジの部屋へとやって来る。

 そして桐は扉を開ける――


「え……色が」


 ユウジの部屋は色を失くしていた。それはモノクロの世界。

 時計の針は零時を指したまま静止しているのが見える。ユウジはベッドの上に完全に硬直して横たわっている。


「ユウジさんっ」

「ダメじゃ、見ておれ!」


 桐が部屋に入ろうとすると、何か電流のようなものが桐を走り抜ける。


「くっ」

「桐っ」

「ダメなのじゃ――この部屋そのモノがフリーズしておる!」


 扉越しに見えるモノクロの世界は、時が止まっていて、それは見ているだけで冷たさを感じる。

 まるで、本当に凍らされているように。


「ともかく、ホニはまだ早まるな……わしではこの惨状じゃ、まずは状況を整理するのじゃ」

「……うん」


 ホニさんは瞳を閉じるユウジを振り返ると、ゆっくりと扉を閉めた。





「……今の状況になってしまったのは、おそらくは以前に話した違うゲームが混ざり込んだことに起因するじゃろうな」


 そういえば桐は言っていましたね、「はーとふる☆でいずっ!」が混ざったことで世界がごちゃ混ぜになり、何かが起きてしまうかもしれない、と。

 桐の推測は当たってしまったわけですね。


「今のはバグの一種とも考えられるじゃろうな――ホニが分かるように言えば、ユウジはゲームの中の病気に発症したことになるのかの?」

「病気……それもゲームの」


 ホニの表情が絶望に沈んでいき。桐は小さな唇を強く噛みしめる。



『――本当にそれだけなんでしょうか? 桐』



 すると、どこからともなく桐の部屋の中に、桐でもホニでもない声が響く。


「だ、誰じゃ!?」

「あっ――ユミジ!?」

「ホニ、お主! 今の声が誰か知っておるのかっ!」

『すみません、今はラジカセのスピーカー越しなんで声しか出ないんです。何か液晶画面のある電子機器ありませんか?』

「…………あまりわしにはハイカラなものはないでの、古いモノになるが――」

『あの、ごめんなさい。ゲー○&ウォッチは勘弁してください』

「注文が多いのう……最新型じゃから壊すんじゃないぞ」

『……初代ゲー○ボーイアドバンス。バックライトが無いので暗いですが……お借りします』


 すると電源も入れていないのに、桐の手に持つゲー○ボーイアドバンスが起動する。

 ロゴが表示されると――


「ぬぉっ!?」

『ユミジです、どうも』

「というか、お主は何者なのじゃあ!」


 桐はそうさけぶと、ホニはその声をフォローするように。


「桐、この人が我の記憶を残してくれたんだよ」

「なんじゃと! やはり何かの手によるものだったのじゃな! 一体どういうつもりじゃっ」

『……いつかお答えしますが、今は急ぐことがあるでしょう? ”プレイヤースペース”の原因不明の凍結についてです』

「ユウジの部屋の凍結と言いたいのじゃろう? それで、お主はどこまで知っておる。そしてお主は、今までに何をした」

『……知っているか、という質問はあまりにも抽象的過ぎてお答えできませんが。何をしたと言うと――私は”サブプレイヤー”の”アドバイザー”をしていた、と言ったところでしょうか?』

「お主は小難しい単語を並べて、自分が高尚だと思えておるのか? そうじゃとしたら、わしは軽蔑するぞ」

『ごめんなさい、悪気はないんです……えーと、ちょっと苦手なんです――以前に現実に展開したゲームで、主人公のサポートをしているキャラを”アドバイザー”と考えています。つまりは、桐、あなたのことです』

「……まぁ、一応そういうことにはなるな」

『そして私も、主人公になれなかった方をサポートしているのです。その方は主人公下之ユウジと同じように現実にゲームを展開させはしましたが、主人公になれなかったのです』

「……その主人公になれなかったのは、誰じゃ?」

「桐、きっとそれはミユだと思う」

「ミユ!? だ、誰じゃ! 新キャラか、ここで投入されても困る一方じゃ!」

「違うよ桐。ミユはユウジさんの――今は引き籠っちゃってるけど、本当の妹さんだよ」

「ユウジに妹……!? 引き籠り……あ、あの時の前髪女かっ!」

『きっと、あなたの考える方です。あの方が、ゲームを起動したことで世界は混ざってしまったのでしょう』

「それでお主は、さっき言っておったな? ゲームが混ざっただけが原因なのかと」

『ええ――桐、あなたは主人公下之ユウジに”メモリープロテクト”……記憶を封じているでしょう?』

「……っ! そうじゃな、わしはユウジの記憶をシナリオが変わるごとに封じておる! それが何の――」

『記憶というものは、大きな情報の集合体です。消したならまだしも、封じているだけだと下之ユウジは”今までに失敗した世界の記憶・今までのシナリオを完走した記憶”を持っているわけです。この意味がわからないわけではないでしょう?』

「じゃが、しかし! ユウジもヒロインも過ごす時間は変わらないはずじゃ! ユウジと例え接触しなくても、別にシナリオは進行しているはずで、ユウジだけが記憶を持つことで……」

『キャラクターデータ……現実に展開されたヒロインのデータは、あの箱に記憶されているのですよ? 元々がゲームなのですから。しかし下之ユウジは現実の人間です。キャラクターデータとは勝手が違います』

「……つまりは、わしがユウジの記憶を封じることで負荷がかかっていると」

『はい。このゲームの展開された、この世界に、です』


 ……黙って聞いていると、凄まじい規模ですね。ユウジの存在はかなり大きいようですね。

 ――勿論、分かっていますけれど、改めて確認しただけですよ。


「……わしが記憶を封じるのが原因の一つでもいい、じゃが! それでどうなるのじゃ、わしには到底思うつかぬのじゃ! ……今まで頑張ってきたが、わしの力も二〇こそあるが限られておる。痒いところに手が届くとは限らないのじゃ……少なくともわしには、どうすることも出来ないのじゃ」

『そこで、私はお邪魔させていただきました。失礼な物言いですが、ご容赦を――私は桐の心詠の上位互換とも取れる、人の情報を読みとる”情報読込”という能力を持っています。それで下之ユウジの夢の中を映しだします』

「液晶の中のお主にそんな力があると?」

『信じられないかもしれませんが……今映し出しますので――私は声だけで、呼ばれた時のみお答えします――』


 そして小さな携帯ゲーム機に映し出されるのは――妄想の世界。

 二〇一一年四月を迎えた、偽りの季節。





「……ありえないことじゃな」


 桐は言っていた、ゲームを攻略しない限りは二〇一一年四月に季節が進むことは無いと。


『下之ユウジはその中で、私たちのいる世界と同じように過ごしていることになります』

「ユウジさんは夢の中で……?」


 ユウジは夢に閉じ込められた、と言ったところでしょうか。


「見て分かるほどのチグハグじゃ! なぜに三人と交際していることになっておるのじゃ!」

「わぁ……マイとユウジさんが付き合ってた頃の我って……」

「緊急時とはいえ、ここまで三人とのイチャイチャしているのを見せられるとは……」

「……うん、ちょっと我も蚊帳の外みたいで寂しい……かな?」

『桐の言った通りに、チグハグなんです。設定も、後日描写も、関係もですね』

「……おかしい点ばかりじゃな」

「それでユミジにはこれを見せてもらったけど……どうすればいいのかな?」

『お気づきでないでしょうか? 時折出る場面は実際にあったことですよね? 桐もホニも知っているでしょう?』

「……まぁそうじゃな」

「そう……だよね」

『それ以外の要素がちぐはぐで、この世界の設定は三つの世界が統合してしまった、という”イフ”な世界なわけです。キャラクターの情報も統合されているはずですが……何かおかしくありませんか?』


 それを聞いて桐は考える。少し経ち、目を見開いた。


「……ヨーコとホニが同時に存在しておらぬ!」

『そういうことです。ホニの消えてしまった世界もあれば、ホニが消えない世界もある。それが合わさったことで、ある隙間が出来ました。あの世界には今までの記憶や情報を統合して完成されたキャラクターで構成されています。桐も試したことでしょうが、下之ユウジの世界では重複してしまいます』

「……相も変わらずに遠まわしじゃな。ようするに――」


「我が行けば、ユウジさんは助かるの?」


 桐が憤りに身を任せて、画面へと怒鳴りつける寸前でホニは立ち上がって言った。


『そういうことになります……それでも、危険は伴うものです。基本的には下之ユウジの見ている夢に変わり無いのですから――下手すれば下之ユウジは壊れます』

「そ、そんな淡々と言う事か!」

『本当に申し訳ないんです。もともとこういうもの言いんですので……もちろん下之ユウジの世界に跳びこんだホニにも危険が伴いわけではないのです。最悪の場合、下之ユウジのフリーズを解けずに取り残されてホニも同じようにフリーズしてしまう可能性もあるのです』


 ユウジにもホニにも、それは危険なこと。それでも、フリーズを解かなければ世界は繰り返すのみ。


「……我に何か出来ることがあるなら、なんでもするよ。我は――ユウジさんに何度も救われたんだから!」

『出来ます。そして私からもお願いします』

「ユミジとやら、なぜお主もユウジに固執する? この世界が繰り返されることから脱却していからか?」

『それもないわけではないです……でも、個人的に下之ユウジには目を覚ましてほしいのです。ミユさんはもちろん私個人でも』

「本当か?」

『本当です』

「……わしには何も出来ぬ。もし出来るとすれば”回復能力”を応用して、フリーズを解くワクチンのようなものが出来るぐらいじゃ……ホニが入れなければ、何の意味ない」


「――桐は十分だよ。桐も我を何度も助けてくれたの知ってるよ……我にしか出来ないなら、やらせて」


『……それでは、今の下之ユウジの部屋から入るのは、フリーズしたところにそのまま入ることですから、リスクが伴います。そこで――』

「――うん、わかったよ」

「すまんな、ホニ。わしは直ぐにワクチンを精製する――」



 

 ホニさんの部屋の前に、携帯ゲーム機を持った桐とホニが並ぶ。

 ゲームをホニの扉へと向けて、


『座標を固定。ホニの部屋と下之ユウジの部屋をリンクさせます』

「……これもユウジが気づいていれば成功することじゃな」

「大丈夫だよ、きっとユウジさんは気付いてくれる――我を覚えててくれるよ」

『――リンク継続は最長六十秒、最短は三十秒。制限時間以内にワクチンを発動してください』

「わかった」

「ホニ、ユウジを頼む!」

『……よろしくお願いします』


「行ってくるよ――ユウジさん、待っててね」


 そうしてホニは跳ぶ。ユウジの夢の中の”イフ”世界へと。

 ユウジを取り戻す為に、世界をまた動き出させる為に。

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