第335話 √1/2/a-OVA2 ミツドモエなラブバトル!
「ちょ……マイっ」
先ほどふっと触れた程度では済まされない、唇と唇がしっかりとくっつきあうという朝にしては濃厚すぎなモーニングキスを食らい、狭いトイレの個室の中で閉められたドアの方へと後ずさる。
「ユウジ様かわいいです……」
法悦の表情を浮かべるマイは色っぽい、ストレートに言えばエロイ。
「てかマイはなんでこんなところに! 男子トイレだぞ!?」
そう、女子が寄り付くことは金輪際ないであろう男子トイレに学園の花がいるものだから俺は大困惑だ。
「――ユウジ様が来ることを感じましたから」
うわあ、俺の周辺チートキャラしかいねえ。
ええと、なにか? 俺が家で二股(※っぽいのを)かけてた二人に襲われる寸前なのを、姉貴に目撃されたことで逃走するハメになり、姉貴でも入ることは無理であろう昇降口から近い男子トイレへと俺が逃げ込み、この数個ある個室に入ってくることを予測していた――だと?
「うん……なんか、すごいな」
「ユウジ様……追われていますね?」
やっぱ知ってるパターンだわあ。
「相手はユイさんとヨーコさんですね」
もはやチートとも呼んでいいのかわからなくなってきた。
て、ことは二股(※らしきこと)がバレてる……!? ヤバくないか、旧来のマイだったら――
「ユウジ様」
「はい」
「いいんですよ――ユウジ様はいろいろな方に人気がありますから――」
現在のマイはむしろ、
「だって私がユウジ様の一番なのは変わりませんから」
本妻の余裕。やべ、結構にドキっとさせられたぞ。
「あ、ああ」
そうふと答えてしまうほどに彼女の言葉や表情は魅力的だった。
「ユウジ様、教室に向かいましょうか?」
「そうだな」
そうして俺はマイとトイレを出た。
……って、これって何気にすさまじいシュチエーションじゃないか?
周囲の目を気にせずに俺の手をつかんで隣を歩くマイを見ていると、どうでもよく――
* *
ならなかった。
「おのれえ、彼女とはいえ朝っぱらからトイレに連れ込むなど言語道断!」
「温厚な我々でも黙ってはいられないものよのう」
「下之ユウジ! 前前から妬んでいたが――今は殺意だけだよ」
と、いうことで血走った眼の男子生徒に俺は囲まれている。
どこぞのアイドル応援着かと言わんばかりに、ピンク色の地に写真がデカヂカとプリントされている――マイのが、だ。
「私たちこそ! 姫城舞さんファンクラブである!」
やっぱりか。
「マイファンクラブはつぶれたはずじゃ?」
「ふふ、先輩たちは解散させられたが――今度は俺たちが! 姫城マイファンクラブ二世だ!」
解散してるよなあ、やっぱ。
「なんで前回はつぶれたか知ってる?」
「ふ、どうせ教師の介入という些細なことだろう」
些細ではないな、それ。ちなみにそれよりもファンクラブにとってはショッキングなことだけどな。
「――今から下之ユウジに天罰を下す、皆のものかかれぇ!」
……俺が何の対策もしてないかと思ったか? 大成果だよ!
まあ、あれは呼べば飛んできてくれるけどな。
「いでよ相棒! ”ナタリー”」
そうして俺の戦いはこれからだ!
ええと、続くようですよ。