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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十一章 彼女は彼に気付かれない
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第333話 √a-33 彼女は彼に気付かれない(終)

「フフフ、冬が来たぞぉー!」


 相変わらずのハイテンションでクルクル廻る女生徒が俺の前には一人。


「いぇーぃっヤホージャパァァン」

「とりあえず近所迷惑だから、黙った末に落ち着け」

「わかったでら!」


 謎の語尾とともにビシっと右腕をくの字に曲げ敬礼する女生徒が俺の近くには一人。

 その女生徒はグルグル模様の蚊取り線香よろしくな伊達眼鏡を掛けている。


 通学路を進んでいると今は葉を散らした並木が並ぶ、そしてコートを羽織るのに体が時折ブルッと増え得るほどの冷たい風は冬の訪れを確信させる。


「いんやぁ、桜は今日も寒いですなぁ」

「そーだな」


 今日も冬風と歩く。


「……コガラシって、辛さ控え目な辛子みたいだな」

「否定はしないけども、すげえどうでもいいな……その発言はユキホイホイなので自重してくれな」


 あまくち暴君ハ○ネロとかって、もう暴君でもなんでもないじゃないか。

 ユキは根っからの辛党で、その話を聞きつけると飛んでくる……なんというかね、ユキのあまりにも浮いた要素だよなあ。


 二人の影はギリギリならば軽自動車も通れるであろう広めの歩道を進んでいく。

 それはいつもの光景で——すれば前を歩く女子学生は突然に立ち止まり、こちらへと踵を返した。


「むー、流石女たらしのユウジさんなのだぁ」


 声こそ作られて、陽気そうだが。眼鏡越しに見える表情はあまり芳しくない。


「どした? ユイ」

「ユウジはさぁー、こうやって二人歩いても他の女の子の名前出すんだー」


 まるで幼馴染ヒロインが拗ねたように言うユイ。


「二人歩いて……ねぇ」

「そうだよー、これでもアタシは——」


 ユウジの彼女なんだから。と、素の声で恥ずかしそうに呟いた。

 なんというか、弄りがいのあるヤツだよな……ユイって。するとユイはこちらに向かい、俺の隣を陣取るようにして歩き始めて、横目にユイに似合わない指と指をくっつけてくにくにしていた、その直後のこと。


「……手をつないでみるか?」

「ぶふっ!?」


 俺は驚きやふいに噴き出したと、いうより笑いによるものだった。


「なんだ! その反応はぁ!」

「いや、不意打ちだろよ……ユイが手を繋ぐ……ぷくく」


 ダメだ、なんかツボだ。いつも「びゃっははーい」とかいうテンションからの落差を考えると……くくく。


「そ、それでは! 手を繋ぐのか手を捻るのか手を縛るのかのどれかからセレクトしてね☆」

「手を繋ぐ以外はお断りしたい」


 痛いのは避けたい。


「じゃあ繋ぐかー!」


 すっ、と思いのほか小さいその手を、俺は捉えて包み込むように指を絡ませた。


「…………」

「…………」


 手を繋いだらさっきまでのコメディが吹っ飛んだ。なんというか、まるで恋人どうしのような甘酸っぱさ!


「いて」

「何か失礼なこと考えただろ」

「いや、ユイとは付き合ってる気がしないんだよな……」

「な……も、もっといい女がいるから!?」

「いや言ってねえから!」


 怒り方も完全に素である。最近はハイテンションユイとこの素のユイの二つを微妙にバランスよく聞いている気がする。


「そりゃ……付き合ってからも、大きく空気が変わらないのは……やりやすいからな」

「あ……そ、そういうことね」


 俺が少し照れるように繋いだ手と別の手で頬をかくと、ユイも察したように俯いた。


 バカップル○ねー! と罵声を浴びせてきても仕方あるまいと納得してしまいそうな、謎の沈黙。そして彼女はらしくなく頬を赤く染めている


「ユ、ユウジ顔が赤いぞ! おたふく風邪かー?」

「ユイこそ頬真赤だな! どうしたリンゴっぺだぜ、超健康体か? どした?」

「くぅ、そう返してきたか」

「そう返してきたぞ」


 バカップル消え○せろー! と怒りの猛抗議を上げられてももはや反論しようもない、謎の揚げ足取り会話。

 俺はしてやったりという表情をしていて、ユイもなぜかしてやったりという表情をしていて、なんてコイツら色んな意味で幸せなんだろうと思われること必須だ。


「まぁ……でも手を繋ぐってのもいいものだぬ」

「ああ、悪くない」


 二人を見守るように、青く澄み渡った冬空が繰り広げられている。

 春とも夏とも秋とも違う——遠くまで、永久に続くような広い広い空。


「更に眼鏡を取ると、なおよしだ」

「あっ」


 ユイの眼鏡を俺は取りあげる。

 それに気付いたユイが見上げるように俺の手に持つ眼鏡を凝視し、


「か、返せ!」

「いい加減慣れろって……学校でもちょくちょく外してるだろ?」


 あれから、ユイが何の変化も無かったわけではない。

 時折眼鏡を外すようになった。体育の時間やら固執して付けていたのを止めた。


「しかし……眼鏡がないと調子が狂う」


 耳の上辺り、つまりフレームがかかっていたところをユイは指で触っている。

 その上でこちらの方をちらちらと見て何かを伺っていたが、何のことか分からない俺に痺れを切らしたか、


「ほれ気の利いたコメントカモン!」


 と、また拗ねたように言った。弄りがいもあるけど——可愛いよなあ。 


「眼鏡無い方がいいぞ、俺には眼鏡属性ないし」

「……眼鏡属性ってなに?」

「いや……なんでもない、俺の妄言だ」

「……そう」


 はい終了。元ネタ分かった人多いよね。ううん、口に出さないでいいぞー


「出来てきたなっ!」

「そーかい」

「どうせユウジのことだから”眼鏡が無い方が可愛いぞ”とか想像してしまったさぁっ(笑)」

「む」


 若干貶された気がするので、俺も一応反撃に出ることにする——ユイは不意打ちに弱く照れ屋なのだ。

 少し間を空けてから、


「お前は眼鏡無い方が可愛いと……本当に思うけどな」


 半ば本気の口調で、それでいてそっぽを向きながら言ってみる。


「へ」


 今のユイはさぞ呆然としてます! というような表情していることだろう。


「なにより素顔が見えるってのが俺は好きだな。イイ顔してるんだから自信もてよ? な? ——お前はその素顔こそが可愛いんだから」


 そう言い放つと俺はユイより前を歩き始め——後ろを振り返る。


「え、ええ……ズルイ! 猛烈抗議だ……期待してなんかなかったのに……こんなこんな——不意打ちなんてさ!」


 俺はこいつが真面目な言葉に弱いことを知っている。

 俺のみ唯一だろうか? 違ったとしてもそれを知っている人は本当に少ないだろう。


 そして俺は後ろを振り返らぬまま歩を進めている

 その後ろではユイが顔をゆでダコのごとく顔を赤色に染めて俯いてることは俺は知らない。


 知らないったら知らない。


 こ、こっそりだなんて振り向いてないんだからね! 本当だもんね! 絶対だかんね! 




「ふぇぇユウくぅうんっ」


 電柱の後ろという変態極まりない立ち位置から本気で号泣しながら叫んでいる女生徒が一人。

 それはコートを着込みながらも涙目で前方のユイ達のいる位置を見つめている。


「イチャイチャばっかしてぇ……ひっくひっく……許さないんだから許さないんだからぁ〜」


 ユウジが進む度に電柱を替えて隠れる。そして周りの視線はかなり冷たく寒い……肌寒いのはこの人のせいではないだろうか。


 以下抜擢です。

 

「あれは……見てない見てない、号泣しながら叫んでいる副生徒会長なんて一寸たりとも見てない視界に入ってない!」

「うわぁぁぁん俺副生徒会長のファンだったのに」

「どうどう、どうどう」

「あんな副生徒会長もイイィ」

「おい」

「まぁ最近のコったらぁ」

「あんたもそのコに入るでしょ」

「流石です副生徒会長! 尊敬します!」

「尊敬する要素がどこに……」


 以上通学路を歩く生徒コメントより、ということでユウジの姉兼生徒会副会長のミナでした。


「身近な人だったから怒り倍増乾燥わかめのごとくぅ!?」


 なーにいってるんだろね、この人。まあユイは義妹ですけど。


「絶対奪い取ってみせるんだから——多少傷つけてでも、絶対奪い取ってやるんだからぁっ!」


 朝の空にその叫びは響く、その時のこと。


「ユウジ様のお姉様?」


 ”様”被ってんじゃんという使い古されたツッコミは当店ではいたしません。

 現れたのはクールビューティ? ユウジ大好きなヤンデレヒロインこと姫城マイ。

 そうやらマイにもつけられてたんですね。


「うぐっ……姫城ちゃん」

「絶対に……ユウジ様奪い取りましょう! ユイから!」

「うん……そうだね、そうね!」

「絶対に」


 そして二人の病んだ美女は、


「「多少傷つけても奪い取るっ!」」


 今この瞬間”ユウジ奪還ヤンデレ同盟”が生まれ、それが全校否や全国にその同盟会員が増えて行ったのは言うまでもない。

 いや、ないって。


 トゥビィコンテニュー……?



* *



 某生徒会室


「さて、今回のヒロインはユイでした……いかがだったかな?」

「アスちゃん、そんな世に○奇妙な物語風のBGM流してもそれほど恐ろしくはならないのよ……」

「納得いーかーなーい!」

「……そうね、それは同意だわ」

「ねえ、文化祭ってどうなったの!? 秋終わって冬になってるけど!」

「なかったことに——」

「ええええええええええええ、まさかシモノの提案通りのサプライズ……!?」

「——ならなかったけれど、カットね」

「なんか私たちの絡んだイベント全て本番が切り取られてるよね」

「……本番よりも準備の過程の方がイベントが起りやすいものよ」

「う、微妙にこの展開の核心付いている気がするよ……」

「さーて、次回のヒロインは……やったわ! アスちゃん、今度も生徒会主軸よ」

「えー、読者が飽きるよう」

「……とっても客観的意見ね、アスちゃん、でもどうするのかしら……シナリオ殆ど出来てないって」

「どうするのよ! もうこれ終わっちゃうわよ!」

「まあ√aOVAみたいな感じで、引き延ばすんじゃないかしら」

「……なんかスタッフがビクっとしたけど、本当に?」

「まあ、いいわ。とりあえずこの作品の核心に近づいてきたわね——盛り上がってないけれど!」

「出オチみたいな作品だし、そのあとはつまらないし、仕方ないんじゃないかな?」

「……また冷静な意見ね」

「とーいうことで、次回の生徒会でお会いしましょうー」

「え、ええ」



√a終了



「もしもユウジが”素顔を隠していた友人”と結ばれたら」

 これはそんな三つ目のユウジの”イフ”の話。



√a完結です! なんか他のシナリオと比べてえらい薄っぺらいですが許して下さい! ユイに至ってはまだエピソードが残っているので番外編の形でちょくちょく出すかもしれません。お読み頂きありがとうございましたー、そしてこれからも続くのでよければお付き合いくださいー


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