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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十一章 彼女は彼に気付かれない
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第325話 √a-25 彼女は彼に気付かれない

まさかの新キャラ


 九月二ニ日



 文化祭まで一カ月とちょっとの今日この頃。

 九月の初旬から準備に入っていた生徒会もこの時期を迎えると更に忙しさが増していた。

 

 

 美術部に依頼することとなった文化祭宣伝ポスターの上りが遅く辟易することもあれば、例年使用していた屋台の老朽化で急きょ発注するハメになったり。

 体育館使用団体の申請も受け付け始め、タイムスケジュールの割り当ては早い者勝ちの側面もあって各文化部の部長・副部長すぐさま生徒会へと駆けこんでも来る。

 物品を販売するクラス参加の第一次審査(基本的にそれが販売に値する商品かなど)を行い、食品に至っては使用する食材の一覧を制作させ、提出させる。


 それを生徒会と文化祭実行委員の二つ機関で動いていく――というにが文化祭裏舞台とも言える。


 一年だからとダラけることは出来ず。文化祭実行委員との連絡や書類伝達などは一年の仕事とばかりに放課後は走り回っている。

 

 生徒会にはそれなりの権限があることで、物品の発注は生徒会が行う。各クラスから必要だと言われた物品を文化祭実行委員が許可し、そうして生徒会を通して業者へと発注する形となる。

 ここまで面倒臭くしなくていいんじゃないか? とも思えるが、時折クラスからは不必要とも思えるものを希望してくるのでそれを実行委員にふるいに掛けてもらうので、必要な過程ではあるのだ。



「失礼します。生徒会でーす」



 そうドアをノックして開けられたのは。放課後に主に活動をする文化祭実行委員本部(使用していない空き教室を利用)で、俺は資料の受け取りへと来ていた。

 

「はい……ちょっと待って……ください……ね」

「おー、井口だけか」


 机がくっつけられ、どこからか持ってきた収納ケースなどが置かれるも、どこか殺風景なその部屋には一人しかいなかった。同学年の女子生徒で、文化祭関連で最近は行動を共にすることが多くなった人でも有る。

 名字だけしかしらないが――井口という。


「急がなくていいぞ? 井口」

「は、はい……ああっ」


 焦ってか書類が床へと散らばる。それを見た俺はすっと部屋の中に入って、同じく書類を拾いまとめて井口へと手渡す。


「はい」

「あ、ありがとう……」


 どこか伏見がちな彼女は、長い黒髪で表情を隠しながらお礼を言ってくる。


「あとは、そのダンボール?」

「は、はい……でも、あ」


 俺はダンボールを手に持つと、実行委員本部の


「じゃ、いこうぜ」

「……そっちは重いから私が持つよ」

「いや井口はそっち持ってろって、それじゃ生徒会から男手駆りだされた意味がないぞ」

「……ご、ごめんね」

「いいって」

「…………」

「…………」


 それ以外の会話はと言えば、ない。

 彼女は文化祭実行委員で、同学年で、女子生徒で、井口という名字――それしか俺は知らないのだ。

 どんな話題を出せばいいのかイマイチに分からず、いつもはこのような沈黙が支配する。

  

「あ、あの」


 今までなら生徒会室や教務員室に付くまで会話などないことが殆どで、切りだすのも俺ばかりだったので、井口の突然の問いに少しばかり驚いてしまう。

 それでも驚いていても仕方ないので、すぐさま顔を引き締めて返す。


「なんだ?」

「あの……下之君は、なんで……生徒会に入ったの?」


 意外だ。事務的なこと以外では話さなかったのに、まさかの俺のことと来た。

 

「そうだな――入ったというより、入れられたってところかな」

「い、入れられた?」

「ほら、姉貴が――いや、副会長が俺の姉だからさ」

「……あっ、下之生徒会副会長。え、下之君って……えっ」


 どうやら井口は俺と姉貴が名字が同じだけで、関係ないのだと思っていたようだ。

 まあ、似てないからな。


「ああ、俺の姉貴。それで拉致られた」

「ら、らららら拉致!?」


 彼女は今までにない大きな感情を露わにした。


「特に気にしなくていいことだと思うから、それは置いておいて」

「え、置いておいていいの……?」


 深入りは良くないからな、うん。


「まあ、それでも何にも活動に入って来なかった自分としては新鮮だった……って語りまくって、悪いな」

「ううん」


 そう書類の束を持ちながらも首を彼女は振る。


「井口はどうして実行委員に?」

「私……いつの間にかクラスで決められてた」

「ああ、そうか……」


 なんか、聞いちゃいけなかったパターン?


「でも……少し楽しいから……結果的にはいいの」

「……そっか、そりゃ良かった」

 

 そうしていつの間にか生徒会室は近づくのだ。

 この日辺りから彼女とよく話すようにはなって――クラスと生徒会外では初めて話せる生徒が出来て、少しばかり嬉しかったりもする。

 文化祭の準備はまだまだ続いて行く。

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