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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十一章 彼女は彼に気付かれない
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第322話 √a-22 彼女は彼に気付かれない

√1や√2と比べてあざとい?


尺がガチでないんだよぉ!

今回のシナリオは重大だけども、これからのプロローグでもあるから長ったらしくは出来ないんだよぉ!


「…………一日だけ、一時間だけ」


 その長身な女性は鏡の前で体に合わせるように浴衣を広げて呟く。


「少しだけ……ならいいよね?」


 そうしてふふ、と笑った。



八月四日



 俺考案で夏祭りに行こうということになった。

 メンバーは下之家女性陣といつものメンバー揃ってとなる。

 ちなみに俺が誘ったところ「え、お祭り!? ユウジとっ! ……皆で? やっぱそうだよね……でも行くよ!」とユキからOK「ユウジ様とお祭りですか、お祭りデートですかっ! あ、皆でですか。少し残念ですがユウジ様との初めてのお祭り楽しみですっ」と行く気はマンマンでOK。

 その他姉貴は「ユ、ユユユユユユウくんと手を繋いで二人夜店を巡りながら、最後には……お姉ちゃん絶対行く!」と最後の部分だけしか聞いていないことにする。

 ホニさんは「ユウジさんとお祭り……懐かしいなあ――じゃなかった!? 楽しみだよっ」と嬉しいOK「わしも行こうぞっ!」と桐も行くことになった。

 ユイにも「お祭り? ぐふふ、金魚すくい名人なアタシを連れて行くだと? 楽しみだっ!とモロに行くことを喜んでいた。



 で、俺は楽しみのあまり一時間と二十分前に来てしまった。



「ユキと姫城さんの浴衣姿楽しみだ……」


 二人には何でも似合うけど……浴衣は特別な感じも出て更に良さそうだなあ。

 あ、ニヤつてる俺きめえ。


「(いくらなんでも早すぎたか?)」


 そう思い始め、お祭りの会場の一つである商店街の入口で短パンにTシャツの軽装で立ちつくしていると、


「あ、あの」

「うお!?」


 驚き方が妙に大げさな気がするが、実際のところこんな人とと出くわしたら瞬間的には驚くことだろう。

 その声をかけてきた人は声からすると女性で、肩口で揃えた茶色の髪にスラリとしたスレンダーな長身に青地に百合の絵が施された柄の浴衣がよく似合う――顔を見なければ、なのだが。

 そう、彼女は妙リアルな仮面を付けていた。それも狐の、何故か毛まで付いて剥製なんじゃないかとも思えてしまうほどの。


「あの、下之ユウジ君ですよね」

「えと……どちらさま?」


 少なくとも、俺をフルネームかつ君付けで呼ぶ女子は学校のあまり親しくないクラスメイトぐらいだ。

 声はあまり聞いたこと……ん?


「あ、あの……下之ユウジ君のファンで」

「俺のファン……?」


 俺のファン? ないない。


「俺の扇風機だと……」

「そっちのファンじゃないです。あ、憧れなんですっ」


 ああ……分かってきた。例えモノマネでかぶせても、その人の地声でもある癖が少しでも垣間見えるのだ。

 少なくともこの人は俺のファンではないだろう――なぜなら、俺にそんなこと有り得ないから!


「そ、それで……し、下之ユウジ君とお祭りをご一緒したくて!」

「ああー」


 改めて時計を確認して未だに集合時間まで大幅に余裕があることを再確認する。


「いいよ」

「本当ですかっ!」


 狐のお面を付けたままだが、喜んでいるのが声からよく分かる。


「じゃあ、行くか――ユイ」

「はい――って、ええ!?」


 今付いてこようとした瞬間に俺がそんなことを言ったものだから、驚いた上にゲタでコケそうになる彼女。


「ん? どしたユイ?」

「な、なにを言っているんですか下之ユウジ君っ! ア、私はユイなんて名前ではなくてです」

「じゃあ、お面の中身見せてくれないか?」

「そ、それはダメです!」

「俺のファンなのに、俺には顔を見せてくれないのか?」

「う、うう……」


 凄い俺が意地悪に見えるが、こんな分かってまで演技する必要はないだろう。

 するとさっきまでの演技を止めて、肩を下ろしてはぁをため息をついてからいつもの声に戻り。


「……はぁ。モノマネはいつも通りの完成度だと思ったのにぬう」

「残念、クセというものは残ってしまうものなのだよ」 

「ユウジに見破られるとは……不覚」

「俺のこと甘く見過ぎ、で。なんでこんなことを?」

「っ! いや、特に意味はないぞ! ただアタシは浴衣が着たくなってな! 別にユウジとお祭りを廻りたいからしたんじゃないんだからねっ!」


 ツンデレっていいよね。思っていることを簡単に吐露してくれるおかげで扱いが楽で。

 まあ、ここまであからさまなツンデレはそうはいないだろうけど、今回ばかりはユイは素のようだ。


「で、仮面は付けたままか?」

「も、もちろん! だからユウジがいるのだ! ユ、ユウジの裾を掴んで歩いていれば恥ずかしがり屋の彼女みたいで……か、かかかかか彼女!?」

「自分で言ってどうしたよ」

「とーにーかーく! アタシはこのままでお祭り廻る! じゃなきゃ帰って着替えてくる――」

「待てって」

「にゃ!?」


 踵を返して帰ろうとするユイの腕を掴んだ……なんて声をあげるんだか。


「せっかく浴衣着てきてそれはないだろよ。それにお前が仮面取っても大丈夫だろ」

「え? で、でもアタシってバレたら――」

「悪いけど、あの眼鏡かけてなかったらユイって分からん」

「そ、そうだよな……どうせアタシは眼鏡でアタシだもん」

「そんなこと言ってねーだろ、っと」

「わ」


 俺はユイの仮面を強引にも外した。


「うう……なんてことするんだよぉ」

「少しは自信持てって……ああー……言わなきゃダメなのかよ」


 正直今のユイは凄まじく可愛らしかった。肩口の茶色ショートに長身でスレンダーな体、そこに大きな瞳があって祭りの喧騒か少しばかり潤んでいるようにも見える。

 きゅっと結んだ口も綺麗な線の眉毛も額に少しかかる前髪も、顔全体で見てかなりに整った顔立ちだと分かる。


「い、今のユイは……か、可愛いんだから少しぐらいは自信持てって」

「か、かわ……っ!?」


 いつもならば「ユウジが可愛いって……デュフフッフフフフフ」などと小馬鹿にされるし、頭が回るのですぐさま冷静になるのだが、ユイ本人は照れ屋だった。

 そんなことを言われたユイは茹でタコに負けじとばかりに顔を赤く染めてしまっている……本当になんか可愛いなコイツ。


「そ、そそそんなことユウジが言うとおかしいし!」

「こ、こら叩くな」


 と言ってもぽかぽかと力なく拳を握って俺の胸を叩く。

 客観的モードにするば、俺が女友達か彼女を怒らせて、出来レースよろしくな夫婦喧嘩を繰り広げているように見えるんじゃないだろうか?

 心なしか人の視線も入口なだけあって集まっているわけで。


「えーい、もう行くぞユイ」

「えっ、えっ……どこに?」

「廻るんじゃねーのか? とりあえず集合時間まで二人で廻るぞ」

「あ……う、うん!」





「ユ、ユウジ! 金魚めっちゃすくえた」

「うお……そんなに貰って大丈夫なのか?」


 俺は金魚すくいのユイの手に持つ桶を見て驚いてしまう。おいおい……軽く数十匹はいるぞ。


「うんにゃ、一匹もいらんぜい。おじさーん、あんがとー」


 キャッチアンドリリースらしい。


「一匹も貰わなくて良かったのか?」

「うぬ、可愛いけど飼うとなると大変だからぬ!」

「まあな」


 水槽やポンプが家の物置に有った気がしたが……出すのは面倒だし、ユイの言うとおり生きるモノを育てるのは大変だからな。

 ユイもどちらかというとゲーム好きが有ってか、金魚すくいそのものを楽しんでいたようなのでヨシとしよう。

 傍から見るユイは眼鏡で隠れていた部分が露わになり、こんなぱぁっと太陽のように明るく嬉しそうな顔をするんだな、と少しばかり新鮮だった。



 

「そ、そういえばユウジ」

「ん?」


 片手に綿飴、片手にチョコバナナを構えて隣を歩くユイが話しかけてきた。


「アタシの……アタシの、な」

「アタシの?」


 ごめん。俺には心詠とかないんで、その後に続く言葉がわかりません。


「浴衣……どう思う?」

「似合ってるぞ」

「に、似合ってる!? そんなことをすぐさま返すなんて、やっぱりユウジはタラシだ!」

「ええー、褒めたのにそんなこと俺は言われるのかー?」

「ど、どうせ女の子には脊髄反射のようにそんなこと言ってきたんだろっ」


 今のは明らかに好感度を上げるポイントなのに、なぜかユイを怒らせてしまった。

 まったく、意味が分からない……が、まあ。弁解はさせてもらうか。


「そうは言うがな、俺はその青い浴衣似合ってると思うぞ? 爽やかで可愛らしいんじゃないか?」

「そ、そんなこと言っても何もでないからなっ!」


 湯気は出てますがな。


「少なくとも俺はこうして女の子と二人きりで屋台巡りなんぞ、それほど経験ないからな。大体は何人かで動くからそんなこと言う暇もないし」


 実際その通りで、こういう時は団体行動だ。そんな知り合いが何人もいる中で、気恥かしくて言えるかってんだ。


「ふ、ふーん、じゃあユウジは二人きりのお祭りはアタシが初めてなのかー」

「まあ、そういうことになるな」

「……ごめん、仮面付ける」

「だから付けるなって、言ったろー」

「やだ! こんな顔見せられるかっ、こんなこんな――」


 そんなこんなで時は過ぎるわけで、いつの間にか集合時間が迫っていた。

 ユイは着替えの為に家へと帰り、俺は集合場所で待つこととする。

 そこには既にユキ達が待っていて、どこか怪訝そうな顔をしていたのに俺は首を傾げた。



* *



 とある暗い部屋にて、以下略。


「だ、だれ!?」

『ユウジにとっては義妹――』

「ふ、ふざけるないでよっ!」



* *



「ユ、ユユユユウジが知らない女の子と屋台廻ってる!?」

「誰なんでしょうか、あの女性は……ああ羨ましい。早めに来てみればこんな光景に出くわすなんて!」

「……男の子だもんね。色んな女の子と一緒にいてもおかしくないもんね!」

「その結論はどうかと思いますが、なんでしょう可愛らしい方ですね……思わず嫉妬してしまいます」

「あんな子ユウジの知り合いにいたかなあ?」

「私も知らない方ですね……どなたなのでしょう。そしてユウジ様とは一体どこまでっ!?」

「そ、どこまでって!? どこ……まで?」



* *



「なんじゃ……と!?」


 まさか、そんなハズは……っ!


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