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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十一章 彼女は彼に気付かれない
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第321話 √a-21 彼女は彼に気付かれない

青春爆発しろ

七月三一日



『夏休みだけど、何か?』

「いや、何かって電話してきたのお前だろよ」


 まったく良く分からないノリの電話がマサヒロから掛かってきた。

 不愉快のあまり切ってしまいそうになったが一応ツッコミを入れてから――通話を切った。


『ごめん』

「で、なんだよ。俺は忙しいんだ……手短に頼むよ」

『なにその出世に大きく差の付いた、少ししか話さなかった同級生に同窓会の開催を知らせる電話みたいな返し』

「はいはい、デュフフフフフフ」

『キモオタ笑いをした意味が分からん!?』

「で、なんだよ。俺は忙しいんだ……十秒で頼むよ、度数があと一しかない」

『そりゃ手短にするしかねえわ――って俺は公衆電話に掛けてんのか!?』

「もういいよ」

『……そうだな。とりあえず、知らせたかったのは、肝試し――』


 俺はその続きを聞くことも無く、携帯電話の通話を流れるような仕草で切った。


『もしもしオレオレ』

「どうも、俺です」

『……斬新な返しだな、とーにーかーく! 肝試しやるから人集めろっ、いいか?』

「とーにーかーく……断る」


 俺は不愉快のあまり携帯の今後なぞいざ知らず、携帯の裏側からリチウムイオン電池を抜き取った。

 すると俺の部屋の扉がバンと開かれ、


「こんなこともあろうかと、じゃっ!」

「桐通して会話すんなっ!」


 桐がタイミングを計り過ぎだろうと言わんばかりに仁王立ちしていた。

 と、いうことで第二回肝試しが決定してしまったのだった。





「第二回! ドカッ、トラップだらけの肝試し大会!」

「「(嵌った際のSE!?)」」


 夏の夜空の下、鈴虫とかがこれでもかと言わんばかりに鳴き続けている……まあ山の中だしなあ。


「(そういや……)」


 少し見渡して女比率の圧倒的に多さに改めて驚く。

 てか俺の男友達で、プライベートで出かけられる仲って……マサヒロだけじゃん。


「あぁ……」

「どしたん、ユウジ氏?」

「いや、俺ってコミュ力ないんだなあ、と思って」


 時代はコミュ力媚び力だというのに、俺ときたらっ!


「……そうかぬ?」

「そうだろ」

「コミュ力なかったら、ここまでオニャノコはべらさないだろうに」


 女の子をはべらす……だと!?


「そ、そんなこと意図してねえよっ」

「……なるほど。それでは天然モノか」

「は?」

「なんでもないぞいー」


 ユイは時々意味不明だが、今回も意味不明だ。なんだよ、天然モノって、養殖を馬鹿にしやがって(※してない)

 



「で、またユイか」

「ユイぴょんだよぉ、きゃはっ☆」


 声は完全に作った高い声、すげえキャピキャピしてる感がウゼエな。

 と、いうことで前回と同じくユイとペア。ほかの女子勢が「ぐぬぬ」と言ったような顔で手にくじを握りながらユイの背中を見つめているような気がするが、どうしたことだろう。虫でも付いているのだろうか?


「ユイ、背中見せてみろ」

「ひゃあっ☆ ユウたんにバック取られちゃったにゅう!」

「その喋り方キモいから止めろ……よし、付いてないな」

「なにが付いてるのかなぁ☆ ユウたん?」

「いや、山の中だから虫でも付いているのかと……」

「……見てくれたのか?」


 途端に素に戻るユイ。さっきから俺は真面目だってーのに。


「まあな、刺されて痕になっても困るし」

「そうか……あ、ありがと」

「おう」


 なんか後ろの女子勢の視線が強くなった気がする……今度は俺の方に。俺のTシャツ穴でも空いてるのか?


「イコー、ユウたん」

「その呼び方やめれ」




「いや……えーとさ……大丈夫か?」

「う、うう……」


 墓地入口を後にして数分。暗い空の元、豆電球の赤色の懐中電灯一つが頼りなく前を照らす。

 ……これは何かでなくとも十分に怖いな。


「ユイ?」

「……はっ! だ、だいじょうびゅでしゅ!」

「ユイ、それは素で噛んだのか? 演技なのか?」

「え、えりんぎ!」


 まさかのキノコかあ。


「本当にダメなら引き返してリタイアした方が良くないか?」

「よ、よよよよくない!」


 正直ユイの怖がりっぷりは凄まじい。風が吹いただけで「きゃあっ」とか「いやあ!」とか声をあげてくるもんだから、俺も心配になってくる。

 ここまで弱いなんてな……体育倉庫の時も相当怖かったんだろうな。でも、ん?


「前回はここまで怖がってなかったのに、どうしたんだ?」

「こ、怖がってにゃい!」

「無理すんなって……何かあったのか? こういう暗いところがダメになることとか」

「そ、そんなの」


 その時ガサッと何か小さなものが足元で走り草をザワつかせる音がした。


「やぁっ!」

「うお」


 一秒経たぬ間に俺の腕にユイが抱きついてきた。そのやはりな感触には声が出てしまうわけで。

 やっぱりユイも女だからな……なんか、こう腕に当たる温かくて柔らかい物体にはドギマギしてしまうものの、その一方で抱かれる腕からユイが震えていることが分かってしまう。

 少し立ち止まり、


「……落ちついたか?」


 怖さのあまりはぁはぁと粗く息をするユイを宥めるように声をかける。すると、呼吸も落ちつき。


「前回は……我慢した」

「ああ……」


 なるほど、な。まあ、顔も引きつってたし、内心では叫びまくってたんだろう。


「前回までは……演技しなきゃいけなかった」

「演技?」


 怖さのあまりか若干カタコトっぽくなってるのはいいとして……それは俺に対して、か?


「キャラが……崩れちゃうから」

「あ」


 ……そういうことか。

 我慢は確かに体に悪いし、本人にとっては辛い。出来ればしたくはないわけだ。

 それでもそうせざるを得なかった。なにせユイはそんなキャラではなかったから。

 あくまで天真爛漫テンシンランマン元気溌剌ゲンキハツラツとナゾ要素を組み合わせて出来上がったようなユイの通常の性格とはほぼ正反対の気弱なものだった。 

 だとしても、今回はなぜにここまで崩れてるのかと。


「じゃあ俺の前では崩していいのかよ」


 若干冗談めかして言ってみる。実際それは冗談のつもりではなくて、ユイの本心を聞きだしたかったからなのかもしれない。


「ユウジ……なら」

「ん?」

「ユウジの前なら……いい」

「っ」


 おいおい、こんな暗い中。姿も見えずなサウンドオンリー、更には素の声と来たもんだ。

 ……そんなこと言われたら、ドキりとするじゃねーかよ。


「誰にも……アタシのこと言わなかったし、今はユウジしかいないから」

「ああ、そうか」

「……ごめんな。こんなアタシはアタシっぽくないよな……うん、やっぱり――」

「いや、無理しなくていいから」

「え」


 俺はそうしっかりとした声で言いきった。その返しにユイも唖然としているようだ(※姿が見えない)


「ユイにとって怖いことなんだろ? それでもリタイアしたり怖がったりしてキャラを俺の前以外では崩したくないんだよな?」


 なんなんだろうな、この台詞。


「う、うん」


 答えるユイは未だに本調子でない。


「じゃあ皆に見えないところで怖がるしかないだろ? 怯えるしかないだろ?」

「…………」


 言い方がかなり悪いとは思っているが、まあ俺だしな。フラグを立てるのには向いてない性格ですし。

 ……いや、ユイのフラグを立てたいとかそういう訳では金輪際無いけどな。


「……うん、分かった。怖がる」

「その返しはどうなんだ?」

「少し意地張るのも止めようかな。だって怖いものは怖いし、それに」


 と、俺は何も言わずにその続きを待ち。


「なんだかんだでユウジがいてくれるし……ね?」

「あ」


 だから……せめて声ぐらい通常運行しろや!


「い、行くぞ」

「ま、まってユウジ――」


 そのあとユイは盛大に何度も声をあげた。

 隣に居ると、どうにも複雑な気分で最後の方には涙目で俺の裾を掴んでいた。

 声こそ可愛いが、時折キラリと光る眼鏡が現実へと戻される。


 ああ、このシュチエーションがユキとか姫城さんだったらよかったのに。

 ……とは全てはなぜか思えなかった。

 みんなの前では見せない”女の子なユイ”を見れた気がしてほんの少しだけ新鮮だった。





 そういえば道中いた黒いワンピースを着た小さな女の子の人形は芸が凝ってるな、と思ったら、途端に話しかけられて「あの、海はどっちですか?」と聞かれたので指指すと「ありがとうございます」とぺこり礼をした時にチラリと金属光沢のある鋭利なモノを手に持ちながらどこかに消えて行ったのだが、どうやらユイから見ると俺は一人で喋っていたらしい。

 ……なんだったんだろうな、あの女の子。次の瞬間にユイの血の気は引いて倒れたものだから、そっちに気を取られてしまい、戻る頃にはほとんど忘れてしまっていた。


 ちなみに戻って帰る直前の、思いだした頃にマサヒロに聞いてみると女の子なんて用意してないとのこと、むしろお前はどんな子でも捕まえるのな! と怒鳴られたので殴り返しておく。それを聞いていたユイはというと器用にも立ったまま数秒気絶していた。

 眼鏡のおかげでそれは誰にも気づかれずに澄んだらしいけども。



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