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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第九章 G.O.D.<出会い>
152/648

第288話 √2-93 G.O.D.

正直もっとしっかり書ければよかった



アト6

「時……陽子?」


 そのホニさんの姿をした彼女はそう名乗った。そして自分をホニさんの物の体の持ち主だと紹介した。

 急にホニさんの口調や人称が変わり、言葉遣いから性格もおそらくは変わっている。

 なぜこのタイミングでそうなったのか、それもどちらかとえば甘酸っぱい展開の時に。 

 ……甘酸っぱいは今関係するところではないか、重要なのは――何故今になってなのか。

 

「そう、中学二年進級を間近に控えてホニさんに体を預けた――陽子でいいよ」


 中学二年への進級? この町にある中学校と言えば藍浜高校の流れを汲む藍浜中学のみ。

 しかし藍浜中の女子はそんな古風なセーラー服を着ていない、もっと色合いは明るくスカート丈も基本的には短めだ。 

 

「それで陽子。制服が違うみたいなんだが、理由でもあんのか?」

「制服が違うってのは藍浜中って意味でいいなら、私はこの町に越して来たばかりだったからかな」


 進級直前にこの町に引っ越して来て、制服もその流れで前の物を使っていたってところか?


「下之ユウジ、私は今までアンタをホニさんの眼を通して見てきた。それでさっきの言葉は本当?」

「……は? さっきの言葉って?」

「告白だよ、こ・く・は・くっ! ホニさんにしたっていう”好きな人はお前かもしれない”みたいなヤツの!」

「ああ……ああ、そうだよ」

「……鈍感な癖してそういう答えは率直だね」


 なんというか年齢的に俺が年上のはずなのに馬鹿にされている気がしてならない。

 

「ちなみにホニさんはお前のことが好きみたい」

「へぇ……って、ええええええええええええええええええええええ」


 それって、なに? え、え? いやいやいや、俺なんかがモテる訳ないじゃん!

 オタクでシスコンでスク水フェチのヘタレ野郎だろ!? ないわー、俺がモテるとかないわー 

 それもホニさんにだって? いや俺が好きで一方通行なだけで、相思相愛な訳がないって!


「道端で騒がないでよ……まあここで話すのもなんだから、公園に行こっか」

「……おう」


 俺は衝撃の事実を聞かされた揚句に先導されていった……うーむ。

 そうして学校近くの公園へとやってくる。それほど人が居ないのは、こういう混み入った話をするのには最適かもしれない。

 おして手頃に空いたベンチに二人座り、拳二つ分しかないであろうように席を詰めてくる彼女に向かって俺は口火を切った。


「……それでそんなことをバラしたお前には何の利点があるんだ?」


 正直興奮冷めやらぬ嘘か誠か虚か正か、まったくもって判別できないこともあるが、極めて冷静に問う。

 突然に出てきたと思ったら、話すのはホニさん関連のこと。

 もしホニさんのヨリシロにされているというならば、何かアクションを起こすとも思っていたのだが。


「利点? うーん、ちょっとした恩返し?」

「恩返し?」

「ホニさんは奥手だし、下之ユウジは鈍いしで、なんともデコボコカップルというかなんというか……」

「いや俺が一方的に告白っぽいのをしただけで、付き合ってなんか――」

「とりあえず黙ってて」

「……スイマセン」


 ホニさんの顔でドスを効かされるとギャップで余計に怖い。思い切り気圧されて俺の立場が紐の無いバンジージャンプ並みに落ちていっている気がしてならない。


「恩返しってのはさ、私はこれでも――」


 と、言いかけて止めたので。何かと思い顔を彼女の覗きこむ


「私はずっと見てきたけど、知らないよね? ホニさんが私の体を……こういう場合ヨリシロって言うんだっけ? そのヨリシロにした理由」

「…………」


 知らない、というか聞いてさえいない。俺はいつか話してくれるのを待とうと、過去話をしてくれたホニさんの選択に託してそれ以上は踏み入れなかった。


「亡くなった人や動物って物が食べられない、ってのは分かる?」

「ああ……って俺のことをすごく馬鹿に設定して見てないか!?」


 もうこの世に肉体を離れて存在するぐらいしか出来ない……幽霊ということを信じるならばで、俺は勿論信じるのだが。


「分かるっしょ?」

「…………はいはい、そうだな」

「ホニさんも同じように食べられなかった――何かに憑くまでは」

「へ?」

「ホニさんから聞かされたよ……というか勝手に知ったんだけどね」

「勝手に知った?」


 私はずっとあなた達を見てたから……か?


「私さ、死ぬ手前だったの。飢えて」

「飢え……!?」

「そのまんまの意味でね、何にも食べなかった、飲まなかった。食べる飲む気力が完全に失せちゃったんだ――いきなり身の上話をされてもって顔?」

「いや、そうなのか……と」

「でもちょっとだけ聞いてね。私はあるショックで町中走り回って、その結果によく遊んだ犬と過ごした神社の前にやってきたんだ」

 

 さらに彼女は続けて言う。


「疲れ果てて、神石の神社から見える裏側にへたり込んで。しばらくそこでグッタリした後に、もう意識が薄れて体も動かなくなってきてたんだよね。そんな時にさ、一つの声が聞こえたんだよ」


 あの肝試しをした場所は人通りが少ないどころか滅多にない、学生がたまに神社前を溜まり場に擦るだけで――神主も来なければ、その神石の裏に人がいるなんて到底気付けない。

 少しずつ、彼女の言いたいことが分かってくる。もしかしてホニさんは――


「死なないでって、幼くて、それで悲しそうな声で」


 お揚げを貰って、一緒に過ごした彼女が。


「そしたら私はいつの間にか、意識が無くなって。気付いたら、私の中にホニさんが居たんだ」


 そういえばホニさんは言っていた。我がその動物の肉体に憑くと存在が希薄になる――半幽霊と称していたような気がする。



「存在を希薄にした上でホニさんが私の体を動かして、近くにあった果実を食べて、それを数日おきにずっとずっと、誰にも気づかれないで。それも――私を生かす為に」



「!」


 そう、か。ホニさんがあの子に永遠に会えなくなったっていうのはこういうことだったのか。

 自分がその中に入ってしまう面と面を向かい合うことはもう出来ないから、それも彼女が飢えるのを防ぐために。

 

「でもお前は見えてたのか? ホニさんから見える景色を」

「うん、そうだよ。一応私とホニさんは繋がって、会話と言うか意思疎通みたいのは出来たんだけどね――ホニさんは誰かと話すことができたから我はもういい、って言ってたけどね、私は自ら出たくなかったんだ」

「そう……か」


 俺はそう一言。俺はホニさんのことを一時誤解していたのを思い出し大きく悔んだ。

 ホニさんがそんなことするわけないのに、あれほどに優しい神様がそんなことするはずがないのに。


「どうして、とは聞かないんだね。ホニさんにもそうだった」

「無理して聞きたくないさ、本人が言うまでは俺は基本的に聞きだすことはしたくない」

「…………優しいね。でも人にね何か聞いてほしいこともあるだろうから、そういうのは気付いてあげた方がいいよ?」 


 優しくなんかない、ただ俺は人を傷つけたくない。臆病なだけだ。


「参考にしとく」

「うん、それでいいかも。じゃあ私はあなたに聞いてほしいです」

「じゃあ……話してくれ」

「分かった。つまり私はさ――もう居場所がなかったんだよ。家族も居なくなったし、学校には行くお金がないし、身寄りもなくてさ。だから私も死んでもいいかな、と思ったんだ。でもそれなら有効活用してくれるなら、ホニさんに体をあげちゃおうと」

「………………」


 中学校二年を前に引っ越し、そして家族が居なくなったという表現。


「なな陽子、お前が走り回ったってのは……今年の三月か?」

「そうだけど……なんで?」

「あと、もうひとつ。今みたいに髪は長かったか?」

「ううん、少し前までは栗色の短髪だったよ――?」

「っ!」


 …………全てが噛み合った。

 俺がアロンツに襲われ消されて失踪者と名を連ねる部分を見た際に、一人だけぽつんと三月に。それでいて両親が亡くなり、進級前で、引っ越してきてばかり。


 全てが合致する。三月に失踪したはずの栗色の短髪の少女と。


「なるほど、な……」

「私のこと知ってた?」

「まあ、な。サイトにのってた」

「えー、それって出○い系じゃないよね」

「え、ここでギャグシーン?」

「私もそれほど緊張を保てないのです」

「…………似たような奴と夢で会ったよ」


 しかし俺は彼女を知っていた。サイトを見てどこかで見覚えも有ったのもそのせいで。

 ほんの少しでも頭の片隅にそのアロンツが居なくなった後でも思っていたのはそれもあるのだろう。 


「てか何で黒髪に?」

「それはホニさん、神様ですから」


 …………神様だからな。で、いいのか分からないが。

 そこで俺はふと思う。今こうして彼女が表れているが、じゃあさっきまで居たホニさんはどうしているのか。

 潜んでいるのか、それとも――最悪の展開を覚えて俺は慌てて問う。


「それで今ホニさんはどうしてるんだ? まさかもう出てこないってことは――」

「それはない……と思いたい。というか私も自分の意思で出てきたんじゃなくてさ、下之ユウジがホニさんに告白したその後の間に追い出されてきたし」

 

 追い出された? という妙なフレーズを耳にするも、今はホニさんのことが気がかりだ。


「でも、そう長くは無いかもね――あっ、そろそろっぽい。じゃあね下之ユウジ、きっとまた話す機会があると思うよ――」


 すると彼女は突然目を閉じてがくりと首を落とした。


「お、おい」

「…………ん、え。えと……ユウジさん?」

「ホニさん、だよな?」

「うん、我はホニだよ?」


 彼女からホニさんにいつの間にか戻ってきていた。

 彼女が去り際に言った”長くは無い”というフレーズも”追い出された”というのも気になって仕方なかったが――


「ホニさんは覚えてない?」

「え、そういえばなんで……公園に?」

「ああ、そっか。少し休憩しててホニさんがうたた寝こいちゃってさー」

「そ、そうなの!? ごめんね、ユウジさん! ああ、じゃあ皆待ってるよね、早く行かないと!」

「おう、そうだな!」


 そうして俺は平静を装って俺はホニさん公園を出る。

 今引っこんでいるであろう彼女はこの光景をみれているのだろうか、もし見えているとしたら。

 なぜホニさんは見れていなく、彼女が現れた時のの記憶がないのだろう?


 様々な疑問が渦巻く中で、俺は頼まれた買い物を完遂していることもあって学校へと向かった。



* *



 我が今の今まで過ごして来た理由は、願いは知ることだった。

 でもユウジさん達と過ごすうちに、もうひとつの願い。


 それはユウジさん達と一緒にいたい。


 楽しく幸せで温かになれる時間、それは我にとって本当に大切なもので、ずっとずっと続いて欲しかった。

 でも、それはもう叶わない。我が中へと押し込められた事実が、より強くそう思わせた。


 あの子にはお礼を言わないと――ありがとう。我の代わりにあなたが告白をしてくれて。

 臆病な我はきっと何も伝えられずに終わってしまうから――

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