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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第九章 G.O.D.<出会い>
149/648

第285話 √2-90 G.O.D.

これでひと段落、ハッピーウエンディングも間近ですねっ!(え



アト9

 我はこの場所に居れるのは、あの子の体を借りているから。そして我が借りることを止めた時には。

 きっと、本能が言っている――我は。



HRS2-5


 

 ユウジさんに出会えて、本当に楽しい日々が続いた。

 今までの過ごした何百年が幾年が虚しくなるほどに、二つの季節だけで我は色々なことを知った。

 遠くから眺めた町の景色も、人が物を買う為に集う商店街も、勉学の為に歩き指定された席へと座って師の教義を受ける学校まなびやも。

 昼ドラというものの面白さと、人とつながる温かみと嬉しさ、人を失う悲しみと辛さ……そしてこれはおそらく一つの好意。

 

 我はここに居たいと思った。

 それは知る為に居座り続けていた理由だけではない、何かが生まれた――


 ユウジさんと一緒にいたい。お姉さんや桐やユイやユキに姫城さんの近くに居たい。

 ユウジさんの家へと連れて来て貰って、そうして家で一人過ごして昼ドラというものに熱中する――楽しめるものが有っても、やっぱり我は寂しかった。

 桐が帰る頃には部屋を飛び出して玄関へと向かって出迎えて、ユウジさんが帰ってくれば我はとにかくユウジさんの顔が見たかった。

 

 さびしがり屋の我はやっぱり誰かと共に居たかった。

 そんな気持ちの中でも一際一緒に居たいのが――恩人で、家族で、いつも隣に居てくれるユウジさんだった。

 ユウジさんが我を守ると言ってくれた時に、我は涙が出るほどに嬉しかった。それはきっとユウジさんだから。

 でもそれはユウジさんに迷惑をかけるのではと考える我が有ったけれど――ユウジさんに守ってもらえるというあまりにも優しい誘惑には抗えなかった。


 そのせいで、我がいるせいでユウジさんは命を狙われ。何度も何度も傷ついた。

 我はそんなユウジさんの姿を見たくなかった――大事な人が傷つく様をこれ以上に見たくなかった。

 だから我は自分を示して、ユウジさんに嫌われようとした。結果を考えるとそれは胸が裂けるほどに辛くてその一歩を踏み出せなかった。

 我が神であることを示して――きっと、不気味か異端か、嫌われるモノと思っていた。


 でも、ユウジさんは。


『うん、びっくりした』


 という拍子抜けした一言、聞き間違えたんじゃないかと疑うほどに。


『すげえ綺麗だった』


 その言葉の意味を一瞬で理解出来ずに、考える間もなく。


『いやー、ホニさんは可愛いだけでなく綺麗なんだなあ。と再認識させられた』

 

 我を可愛いと言った事実も驚いたけれど、そのを大きく上回った。

 我が綺麗? こんなに不気味な力に嫌悪か恐怖を抱くのが普通だと言うのに……?


『とんでもない、ずっと見ていても飽きないほどの素晴らしさだぞ?』


 そして我はそんなユウジさんの言葉に魅入られて、ついそれを問いてしまった。こんな我でも、いいの? と。


『どんなホニさんでも俺はいいぞ?』


 更に続けてユウジさんはこう言った。そんなユウジさんの表情は和らいでいて、つい見つめてしまう。


『俺じゃ役不足どころじゃないけどさ、俺がホニさんを守りたい気持ちは誰にも負ける気がしないんだ。こんな俺でよければ、これからも宜しく頼めますか?』


 嬉しかった。ユウジさんがここまで我を思ってくれて、でも。我はそれでも信じられなくて。

 嬉しいのに、それがあまりにも我にとって都合が良過ぎて――本当に我なんかを守ってくれていいの? ユウジさんも我のせいで、言いかけたところを遮られて。


『俺はホニさんが隣に近くいてほしい、もちろんホニさんと出会えたことを絶対に後悔してなんかいない――だからホニさん、ありがとう』


 我を守ると言ってくれて、我と出会えたことを後悔しないと言ってくれて、そしてお礼まで――

 そうして我は吹っ切れてしまった。この人に任せたたいと、共に歩いて行きたいと。



* *



 学校に行くことになって、色んな人を知りあって、色んな事を知って。

 タイイクサイという運動のお祭りにユウジさん達と出て、スイエイという遊泳運動をしたり、テスト勉強と言うものもした。

 そんな日常の中には戦いも有って……桐に連れられユウジさんが戦う中でただ逃げるだけの我、それはもどかしいけれど、ユウジさんと桐がそれを望まなかった。

 そうして日常はあっという間に過ぎて行って――そして夏の季節が訪れた。



 その戦いは今までと違った。

 色が違い、敵が違い、空気が違い、そしてユウジさんが違う――あらゆるものが今までの戦いと異なっていた。

 

 そしてその時にユウジさんは大けがを負って。

 

 それに怒り、堪えることの出来なかった我はユウジさんと桐の約束を破って、力を使った。

 ユウジさんは桐のおかげで治って行き、ユウジさんはその状況を話してくれた、


 でもそれにはどこか違和感があって、何かを我に隠しているようにも聞こえた。

 そして我にはもっと隠していることがあった。だから責めることも聞きだすことも――絶対にあり得ない。

 もしそれを聞けるとしたら、我自身のことを曝け出せてから。

 でも、それでユウジさんとの繋がりが、途切れてしまうことが怖くて――臆病な我は話すことをしなかった。


 

 そして夏祭り、あれから数日が経って、キモダメシというものに行くことになった。

 そこはあまりにも見慣れた場所で――我がずっと居た場所で、あの子と出会えた場所で、ユウジに救われた場所。

 ユウジさんが我と歩こうを言ってくれて嬉しい半面、我は未だに自身のことを話せずにいて――隠している罪悪感のようなもので十分に楽しむことができなかった。

 隣にはこんなに大切で、一緒のいたいユウジさんがいるのに。


『俺にホニさんのことを教えてほしい』


 そしてユウジが我のことを聞いてきた。言い出せない我が言えたことじゃないけれど、それは怖かった。

 事実を言ったところでユウジさんに嫌われてしまいたくなかった。離れてほしくなかった。


『ホニさんが気になるから……俺にとっての大事な人だから』


 その言葉が嬉しくて、そう言ってくれるユウジさんが嬉しくて。でも我は聞いてしまう。――後悔しない? というあまりにも調子の良い問い、自分が言えなかったのに最近の言葉の使い方で言う予防線を張るように、ユウジさんにそれを強いてしまう。

 更に我は自分の心情を思わず吐露してしまって。嫌われたくないと、一緒にいたいからと――これからも偽って過ごそうという余りにも都合の良い提案。


『嫌わない』


 その一言が信じられずに、我は問いただして――返って来た言葉は。


『ホニさんは、可愛い』


 どこか間の抜けてしまうような言葉に我は照れながらも、おろさくそれはあの子の容姿のことだと――言おうとした。


『俺はホニさんの可愛さは容姿にあると思う……だがしかし! 俺はホニさん自身が可愛いと思う。ホニさんの全てひっくるめて俺は――可愛いと思う』


 聞いていて気恥ずかしかった。石に拘束されていたせいで欠如している知識でも――それはむず痒くなるほどに気恥かしい。


『褒めてるに決まってる。俺にとって、今まで出会ったどんな人の中でも――群を抜いての可愛さを誇るのがホニさんだからな』


 畳みかけるように我は言われて、それに参ってしまって。思わず一人で空回りしてしまったような、感じさえしてくる。

 でもやっぱり我は気になって、そのユウジさんの言葉本当か確かめたくて――確かめる方法なんてないのに混乱する我はまた同じように――後悔しない、きっと嫌われる……と聞いてしまった。

 すると。


『好きです』


 昼ドラを見ていて分かるのは、それは余りにも直球な告白だった。それには我も変な声をあげてしまって、思い切り気が動転する。

 ユウジさんは突然なぜこんなことを言うんだろう、と。どうしてこの時に言うのだろう、と。


『嫌いになるわけないだろって……そんなことで心変わりするほどに生半可な気持ちじゃない、俺はホニさんのことを知りたいんだ』


 そのユウジさんは戦う時の決意に満ちたユウジさんで、それを見るだけで我は胸が高鳴った。

 この感情は今までに感じてことのない、息苦しいのに心地が悪くない――あまりにも不思議な感覚。

 ユウジさんの掛けられた沢山の言葉で、我はやっと話しはじめた。

 話すのにいつまでかかっているのか、そう自分を問い詰めたいほどの時間を要してから。

 

 でも今度こそ嫌われる、と思った。我が余りに膨大な時間を過ごしたことにひいてしまう、気持ち悪く思ってしまう――臆病な我はそう思った。それでもユウジさんは予想外で。


『すっげえなあと……思った』 


 短くて、その感想が来るとは思えなかった、唖然として、何か吹きこぼれてしまうように我は笑いが漏れた。

 こんな結果ならもっと早くに話して良かったのに、自分は我はユウジさんを全然信じられていないな、と。

 そんな風に重く受け止めずに、短く返してくれたユウジさんの気持ちが、配慮が――今はとても嬉しくて。

 その一方で我はユウジさんを責めるように言ってしまう。自分が馬鹿だと言ったユウジさんを否定せずに、今までの無茶を、我はつい勢いに任せて怒ってしまう。

 その時のユウジさんは腰が低くて、さっきまでのキリリとしたユウジさんは何処へ……と思う程の変わりっぷりだったけれど。


 我はそんなユウジさんが好きだった。


 これが昼ドラであるような愛情かは分からない、けれど嫌いじゃない……というか訳がない。

 だからきっと好き。


 それに照れたのか顔を赤くするユウジさんが……桐をからかう時のように表情豊かで。

 もしかしてユウジさんは同じ事を我にして楽しんでいたんじゃないかと思うようにもなった。

 ユウジさんが我にはとてつもなく可愛く見えてしまい、ユウジさんの隣を離れたくないと、尚更思ってしまった。



 そして今日はユウジさんがまた別の敵と戦った。

 何も言う事ができなかったけれど、気付けていた。ユウジさんが二つの週の間の様子の変化があった。

 桐の力を使うことなく、戦い。自分を鍛える際も桐に頼らない――二週間前から突然にそうなった。

 今日久しぶりに桐は力を使い、ユウジさんは空を飛んだ。

 まるで今日という日が分かっていて、今日までに備えていたように。

 見上げる先には戦うユウジさんが居て、かつてのように桐は我を連れながら我と桐自身を守る膜のようなものを張ることで敵の攻撃を防いでくれていた。


 見上げる空ではユウジさんが傷ついていた。あのいつもと違った戦いのようにあちこちから血を流して、それでもユウジさんは抗った。

 敵を追い詰めるほどに速い動きと大きな力で抗うユウジさんの姿を見て、我はユウジさんの表情を見つける。

 それは真剣で、真っすぐに見据えた敵に的を絞り、そして大きな決意に満ちていた。


 それでも敵は強く、ユウジさんは撃ち落とされた。

 駆けた先の背後から聞こえる何かがぶつかった音に気付くと、そこにはボロボロのユウジさんが倒れていた。

 あまりにも痛々しくて、辛くて、悔しくて――また思ってしまう。


 このままユウジさんを失いたくない、だから約束をまた……破ってしまおう。


 ユウジさんが居なくなってからでは遅すぎる、失ってからではどうしようもない――命あるもの、ユウジさんもその通りだ。

 だから我はユウジさんの名前を呼んで、返ってくるユウジさんの弱弱しい声に耐えられなくなって、我はまたしようとした。


 けれど、ユウジさんは言った。


『ポケ……ットの』


 途切れ途切れだけれども、それには確かな意味をこめて。きっとユウジさんのポケットをさすのだと理解して、一心不乱に探し、そして一つの小瓶が現れる。

 それは少し見たことの有る、ユウジさんが苦い顔で口にしていた飲みものだったように記憶した。

 この状況でそれが有って、きっとそれを飲みたいというユウジさんから、おそらくこれは何か意味のあるものだと考える。

 でもユウジさんは今は体を動かせないほどに弱っていて、仰向けにやっとのこと声を絞り出していた。


『それ……を、飲ませ……』


 やっぱり飲むべき物だ。

 それじゃどうすればいい、どうすれば我はユウジさんがこの飲みものを飲めるのか。

 

 そこで我は一瞬思い出す。時に見たドラマでのワンシーンを、昼ドラでは似たようなものが度々あった――

 見た目にはある一つの行為、でも実際は大切な事で。


 腕を動かして瓶を持つことも、口へ運ぶこともままらないユウジさんにどうしたらよいのか――


「(!)」

 

 我は気付いて、そしてそれを実行に移す。

 桐が我とユウジさんを守る中、我は瓶を開けて一気に全部の量を口に含んだ。

 そして――


「んっ――」


 ユウジさんに口づけをして、そこから押し込むように含んだ液体をユウジさんに送る。

 意味が分かっている。これは口づけで有り接吻であり――ドラマの中の恋人同士や愛し合いものがする”キス”というものであると。

 思った上でそれをして、そしてユウジさんの体が少しずつ動きを増やしていき――起き上がった。


『ありがとう、ホニさん……後少しだから、行ってくるよ。ホニさん』 


 我がユウジさんのあちこちの傷を見て制止するよう声をかけるものの、ユウジさんは空へと向かい――そして。



 世界の色は戻った。

 それはユウジさんが敵を倒した証で、我は空を見上げてユウジさんがゆっくりと落ちて行く様をみながら、ユウジさんの名前を呼び続ける。


 ここへ辿りつく頃には目を瞑っていて、がくりとうなだれた姿に我は驚き、理解し、哀しみ、そして叫んだ。

 答えてほしいと、ユウジさんが我の呼ぶ声に答えてほしいと――桐がシュンカンテンソウというものを繰り返してユウジさんの部屋へと運びながら我は呼び続けた。


 桐は重々しい表情でユウジさんと我を運び部屋に戻る以前から治癒をしている、そんな桐がユウジさんの胸や傷口に手を当てて治療を始めてから数分の内に「もう大丈夫じゃ」と安心を促す言葉を我にくれて「あとは目を覚ますのを待つのみじゃ」と、言って押し黙り。

 少しその聞かされたことに安心して気が抜けそうになる。でもユウジさんが目を覚ますまで我はまた呼び続ける――


「ユウジさん、ユウジさん、ユウジさん、ユウジさん、ユウジさん――」


 ユウジさんが目を覚ましたのはそれから二時間経った頃。

 起きてなお優しい表情を浮かべ、なぜそんな彼女が表情をしているのだろう、というような不思議な面持ちで見上げる先にで我はボロボロと涙を流してユウジさんの名前を呼んで――


「よ、良かったぁ……」


 安堵するように言葉を漏らしそれでも我は涙を流し続ける、その時のユウジさんはずっと我を見つめながら微笑みかけてくれていた。

 そんなユウジさんを見て我は勘付いてしまう……ドラマや物語で見た、この女性でも男性でも感じること。

 涙を流しながらもユウジさんの顔に見惚れていて気付いてしまう……きっとこれは生まれて、ずっと過ごしてきて初めて芽生えた――


 これは恋というものなのかもしれない。


 涙が溢れるのに心は温かで、微笑んでくれるユウジさんが嬉しくて、見ているだけで幸せで。守ってくれていたのが嬉しくて、隣にいてくれるのが幸せで。

 ずっと一緒に、ずっと隣で。我はユウジさんの変わりゆく心を表情を間近で見ていたいと思ってしまう――そうして我も顔をぐちゃぐちゃにしながらそうして微笑み返していた。

 

 

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