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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第九章 G.O.D.<出会い>
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第279話 √2-84 G.O.D.

解き明かし?

 俺はどうなったんだっけか。

 確か今日は日曜だからと雨澄との戦いに備えて、だけども雨澄の張ったはずの”虚界”が途中で消えて、そこから反転した色の世界へと突然に変わっていった。

 雨澄とも銃使いとも違う大剣使いのアロンツの一人の男が目の前に現れて、それで……


「…………っ」


 俺は倒され、桐は倒れ、ホニさんが――


「殺されていった」


 あの惨状を思い出すだけで吐き気がする。酷かった、もう人を扱うようには見えなかった。

 ホニさんの姿が血にまみれ歪んでいく様子が、俺が最後の視界に映ったこと。


「…………全滅ってことは、俺も死んだのか」


 桐は恐らく再起は出来ないし、俺も意識が結局は落ちて。

 今は何も見えない暗く黒い闇の中に居るように、何も俺の瞳に映すことものは何もない。

 

「これが死後の世界……なんか?」


 身体の感じる温度が分からず、かつてまで感じていた痛覚も見つからない。

 音も色も何もかもが消え失せている。


「俺はこのまま終わるのか……いや、でも」


 終わりたくない。子供が駄々をこねるようでも、おれは終わりたくない、諦めたくない。

 このまま死んでなんかやらない。


「どうにかしてでも……俺は!」


 ホニさんを守り、俺自身を守り、家族も、今までの日常も守る。 

 これは今まで何度も何度も病気のように繰り返して来た決意。


「ご都合展開どんと来い、さあ俺の眼を覚まさせてみろよ!」


 誰かに、談判するように俺は叫ぶ。

 その瞬間に殻が割れるように闇が砕け散り、眩いまでの光が差し込んで来る。

 そして俺の居た場所は―― 



「おはようございます、下之ユウジ」



 覗きこむは深緑色で目元を隠した藍浜高校制定品の制服を着た女子生徒。

 そう、これは夢で出会った世界。ここは見慣れているが人のいない空虚な教室。その世界の主のように毎回話しかけてくる女性。


「ああ……おはよう」


 俺は目覚めたように顔を上げて、その女性に挨拶をする。


「久しぶり……ではないですね」

「ああ、前は二ヶ月ぐらい前だっけか。これで五回目か?」

「ええその通りです――この世界でのことですが」 


 前回に見た夢で最後の最後に言われた余りにも意味深げな言葉に俺は問いかける。


「……なぁ、この世界ってどういう意味だ? それじゃまるで世界がいくつもあるみたいじゃねえか」


 某作品で言う世界線ってか、いやいやそれは――


「正確には”有った”ですね」

「いやーおかしなこと聞いたな、いやそんな訳………………はい?」


 予想外の返しに俺は驚愕して裏声った声で思わず聞き返す。


「ですから、今までに”違った世界”が有ったってことです」

「違った……世界?」

「はい、ぶっちゃけるとですね」


 そうして彼女は衝撃の事実をあくまで淡々と、今までに何度も語り飽きたように話した。



「この”物語軸”の世界をあなたは何周もしてるんですよ?」



 …………物語軸の世界、何周。何周……!?


「つまりはゲームオーバーですね。バッドエンドを何度も向かえていることに――」

 

 ゲームオーバー? バッドエンド? 確かに俺はギャルゲーと現実の混じった世界を過ごしているけども。

 それじゃあ俺は……!


「おいおいおいおいおい、それじゃ何か! 俺は何度も今回みたいな失敗を――」

「ヒントでも言った通りですよ”過ちを繰り返さないことを祈っておく”と」

「あ――」


 ……思い出した。それは確か俺が覚えている限りならば三度目の夢、雨澄との初戦の頃はずだ。

 コイツの言うとおりなら、ニュアンスならば俺は何度も過ちを繰り返している……ということは、だ。


「……俺は何度も死んでるってことだな」

「いいえ。全ての世界がそうとは限らないんですよ」

「……は?」


 全ての世界。


「お前はその全ての世界を知ってるのか?」

「はい、大体こちらからは把握できていますから」


 以前と違って機械的に物事を伝える彼女に少しの違和感を覚えながらも会話を続行させる。


「下之ユウジがゲームオーバーになる要因としては”下之ユウジの死亡”と”ヒロインであるホニの消滅”ですね」

「俺が死ぬか、ホニさんが消えるか……それが要因なんだな」

「はい」


 …………待てよ、俺は反芻してなんと言った?

 俺が死ぬか、ホニさんが消える……?


「”死ぬ”と”消える”は意図的に別けてるのか?」

「そうですよ。ホニが消える条件として、戦死するだけではないのですから」

「じゃあ、なんなんだ?」

「それはネタバレなので自粛します」

「いやいや、今まで散々話して来たことも相当にネタバレだと思うぞ?」

「いえいえ、今まで話したのは今までの失敗したあなたに話した内容ですから」


 こいつが俺に話したのは、かつてのゲームオーバーを迎えた際に俺が聞いた事がら……ってことか。


「……同じ世界を繰り返してる、そんな解釈でいいんだよな?」

「いいえ”物語”を繰り返しているんです」


 俺のかつてのデジャブはもしかしたらこれが主因だったのだろう。

 同じ物語で同じ光景と同じ展開を繰り返した――だから俺は度々ある光景に出くわす度に既視感を感じていた。

 

「デジャブや物語の最初期に自分の意思がない中で動いていませんでしたか? 物語を繰り返すことで身体がその行動を覚えてしまったと考えるのが妥当ですね」


 それはおそらく耐性。生物が毒に強い免疫を死を繰り返すごと生存しようとする力によって作られていくように、俺も展開を繰り返すことで自分が覚えていた……ってことか。

 そして余りにも手なれた初期の場面は俺が他の部分よりも何度も繰り返したということなのだろう。

 更にはご都合展開とはいえ、アスリートにボコボコにされそうなほどに俺の腕力・脚力ほかもろもろの急激な向上も、俺の体がその鍛錬や動きの内容を覚えていたから……ということで強引ながらも頷ける。

 帰宅部だが運動は嫌いじゃない、が好きでも無い。そんな俺が空中でそれなりにも重量のある鉈を常時振りまわした上に身体を動かして空を飛ぶことなんて、常軌を逸した運動量のはず。

 それを数週間の内に身に付けて、実戦するなんて普通ならば考えられないことだ。

 そしてあの朝の調子の悪さは、ある予感によって身体が動くことを拒絶していた……? ストレスが原因で仮病が実際に病気に変わることもあるぐらいだ。恐らくは――


「なるほどな……じゃあ俺が今回の闘いで死ぬであろうことを身体が覚えているから、夏の朝は調子が悪かったのか」

「いえ、それは低血圧です」

「そこでギャグにするのか!?」

「私もいつまでもシリアスやってると死にますから」

「いや……そういう不謹慎な発言は死んだ奴の目の前で言う事でないと思うぞ」

「いえいえ、あなたはまた繰り返すのですから、実質生きる屍ですね」

「……お前って凄い嫌な表現するよな、それは天然か?」

「養殖で、完全に狙ってます」

「タチ悪ィ!」


 …………なんでまた急激にコメディ調になるのやら、緊張もクソもねえぜ。


「……はぁ、シリアスは持たないのな」

「下之ユウジは難しく間抜けな顔をしているよりも、間抜けにボケにツッコむ方が良いんですよ」

「そんなに間抜け連呼して……嬉しいか?」

「嬉しく、楽しく、実に。快感です」

「性格悪ィ!」

「でも、人の小難しい顔を眺めていてもいいものではないでしょう?」

「……まあ、そうだな」


 俺も桐やホニさんが小難しい表情をしているとどうにも気になって仕方ない。

 ……なんというか俺は心配性で、ある種の親バカみたいなものなのだろうか。


「で、下之ユウジ。あなたはどうしますか?」

「どうするって?」

「世界をやり直すか、物語を繰り返すか」

「……どっちも同じ――とは応えないぞ」 

「ほう、それでは違いを述べよ」


 なんという上から見下された感、しかし寛大な俺はそれをスルーしておこう。


「前者は最初からやり直しで、後者は今までと同じようにバッドエンドを繰り返すってことだろ?」

「そんなところです、さあどっちですか?」

「――ここでチェス盤をひっくり返すぜ」

「残念、このチェスはマグネット式なので零れ落ちることはありませんでした」

「安っぽ! マグネット要素があるせいでちゃちい!」

「しかしそれでもそれなりにするものなんですよね……」

「……まあな」


 って、いやいやいやいや!


「とーにーかーく! 俺はお前の挙げた選択肢からは選ばない」

「……はい?」

「美少女ゲームではセーブ&ロードが出来るだろ?」


 俺のやったギャルゲーではポイントごとに任意でセーブ出来て、任意の場所からゲームを再開出来る。

 ものによってはクイックセーブという簡易セーブ機能がついているものもある。

 

「まあ……そうですけど、それが一体何の関係が? 思いつきですか?」


 ちげーよと心の中でツッコミを入れて俺はそうして考える。それならば、と。


「だから俺は、この真相を知ったまま戦いのニ週間前に飛ぶぜ!」




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