第265話 √2-70 G.O.D.
学校が終わった……いや「人生オワタ」みたいな方面でなく、普通に今日の授業が終了したってことだぞ?
学校ではやはりアイツら――そろそろちゃんと”アロンツ”って呼んだ方がいいか。
そのアロンツに襲われることはなかった、学校での戦闘は今まで一度もない、というのも周回的に雨澄みと戦うのは学校が確実に存在しない日曜なのもあるが。
俺が倒された銃使いはホニさん曰く「我が力を使って倒しちゃった」と言っていたが……またむくり復活して襲撃してくる可能性も少しは考えていた。
「(にしてもホニさんは力を使ったんだよな……?)
使って良かったのか?
桐は使うなって連呼してたけども……あれだけ言っていたのにも理由があるとは思うんだが、どうにも俺には見当もつかない。
……はずなのだが、何故か「使ってはいけない」という危機意識のようなものが頭の隅は存在するのだ――
おい、俺。もったいぶらずに教えてくれないとお兄さんどうすればいいのか分からないぞ?
「(俺は相変わらず役に立たないな)」
……自虐に聞こえるかもしれないが、ガチで。ここで主人公的直感働かなくてどーするよ、俺。
そんな脳内一人漫才を繰り広げながらもいつものメンバーとの会話を忘れないという聖徳太子に一歩近づかんばかりの無駄な頭の回転振りを披露しながら帰宅していく。
「さってと」
家に着き、俺は制服を脱ぎ棄て、簡単な部屋着へとモデルチェンジすると一目散にバソコンへと歩み寄った。
電源ボタンを長押しした上で、立ち上がる液晶画面を眺めている内に椅子へと座り画面へと向く。
「グーグルさんの出番――でもないか」
自分のアカウントに入ったところでインターネットブラウザを立ち上げ、空いた左手で机に置かれていたテレビのリモコンを手に取ったと思えば電源を入れ、チャンネルを回す。
「……この時間帯ニュースやってねえなあ」
ミ○ネ屋とかニュースじゃねえし、情報バラエティだし。
「ならばまとめサイトを巡りながら……っと」
俺はテレビでニュースが流れていないことに不満を垂れながら俺はあるキーワードを検索する。
「”藍浜町 失踪者”……検索GO」
するとやっぱりお世話になったグーグルさんの検索結果画面には「藍浜町へようこそ」という文字列が一番上には並んでいた――
「藍浜町ってホームページ持ってたのかよ……」
海と山しかない正直に何にも無い町だぞ?
伝統行事のようなものがなければ、星の見える展望台のなければ、港の見える丘なんて大層なものないし、枯れない桜なんてあるわけない。
至って、平凡な町だ。あるとしたら――
「ホニさんの神様としての伝説……とか?」
…………今度調べてみよう、それを後回しにするほどに俺はある事柄が気になっていた。
それは学校で話しいたことで、どうにもアロンツの犯行だとほぼ断定するならば――いなくなった人の数=アロンツによって消された。ということになるからだ。
明確な数とマサヒロの言っていたことが本当ならば、失踪が始まったのは四月下旬――それから六月の下旬である今日までにどれほどの人がアロンツに消されたか。
それを知っておいたほうが、今後の襲来ペースを考える上で必要なことだった。
「あったあった」
なんとも「素人が頑張って作りました」感満載の手作り風味の町のホームページには真っ先に”藍浜町失踪者一欄”という項目が目に入った。
そのページの冒頭には「現在でも警察や町内会の方々等が~」といった断りがあった上で、失踪した日付順に消えてしまったであろう人の名前が並んでいる。
そこには六月、五月、四月と並んでいて――そして最後に「三月」という項目があった。
「ユイに言ってたことはガチか」
確かに上の四月の人数を見るに三月は一人のみ。人数数えをする前に詳細ページに飛ぼうと、最初の三月に失踪した人のページへと飛んだ。
「時 陽子……とき、ようこ?」
性別女性、年齢十三歳。中学ニ年生へと進級直前に失踪。
更には両親が亡くなっていることや引っ越してきた直後ということが書かれていたが……一応これはプライバシー的にはどうなんだ?
確かに特徴や情報を挙げるのは必要だけども……うーん。更には顔写真が載っていて――
「お、おう」
そこには普通に顔の整いながらも童顔な女子の顔が写っていた。
栗色の短い髪に、大きく澄んだ瞳。短髪のせいかどこかさっぱりとしたスポーツ系にも見えなくないその少女を眺める。
…………いや眺めるって、そんな小さな子を熱のこもった視線で見やる――そんな! 俺はロリコンじゃないよ!
ただ見惚れてただけだって、写真うつりが良いのか。俺にとってはかなりの美少女に見える――が、しかし。
「うーん? どっかで見たような気がするな」
どこだろ……身近な人に栗色の髪の子は居ない、姉貴は栗色とはまた違った暗みのある茶髪だから違うだろうし――って姉貴が失踪しているわけがない。
「思い出せん、思いつかん」
あー、気になるったらありゃしない……はあ。
それからのことだ。やはり一週間毎に訪れる雨澄から毎回逃げ切っていた。
一度現れた銃使いの男が現れることはなく、全日の放課後と日曜だけ非日常へ飛びこむ生活が続く中――そうして本格的に夏が訪れた。
七月二三日
クーラーがいかれて低温サウナと通常のサウナの半ばほどの蒸し暑さを誇る部屋の中で、どうしたら涼しくなれるだろうかと思考していると。
「ユウジ、海行こう」
「よしきた」
この間一秒あらず即決、そうして夏休み最初のイベントは海へ行くことに決定した。