第260話 √2-65 G.O.D.
昨日は寝オチして更新ならずorz、連続更新は昨日で途絶えたことになりますー。
45回、回数にすれば40日前後……一応は頑張れたつもり。
更新もまた連続目指すぞー
HRS√2-3
我はどうしてここにいるのだろう。
我はどうしてここまで長く存在してしまったのだろう。
仲間に取り残されて――力を見に付けた我に頼って来る者がいるだけで、ずっとずっと孤独でひとりぼっちだった。
小さな世界に閉じ込められて、変わりゆく四季でさえも見飽きてしまうほどに――同じ場所をずっとずっと眺める。
それは退屈で、寂しくて――嫌になった。誰かが我を助けてほしい、どうかここから連れ出してほしい。
そんなことを長い時の中でずっとずっと思い考え願っていた――そう、我は。
そしてその願いが聞き受け入れられたかのように、我の元にやってくる一人の影。 ユウジさんと出会う前。今は話すことも会うことも出来ない――近くて遠い存在。
そうして僅かすぎる時は過ぎてもう一度、我は一人になった。
* *
我はどうしてユウジさんに守ってもらえているのだろう。
我はどうしてここまでユウジさんに守られっぱなしなのだろう。
あの時のユウジさんの傷ついた姿が目に浮かんで……あまりの惨さと酷さに胸が痛くなる。
我がいるせいで――我がいるからユウジさんは。
桐に神様でもある我の力を封じるように言われている、それが本当にもどかしく悔しい。
今すぐにでもユウジさんがが戦う場で共に居たい――けれど力がないから。ううん、あるけれど使ってはいけないから。
この力を使えばユウジさんに只でさえかけている負担を少しでも軽減できる、一緒に背負う事が可能かもしれない――その一方でそんなことを言ったらユウジさんを困らせてしまう、だから我は言う事を抑えた。
それでも我は、その自身が何もできないことに――失望してしまっていたんだよ。
「ホニ、行くぞっ!」
「う、うん」
今もこうして桐に手を引かれ、空から降りそそぐモノから桐は自身と我を守る。
桐だって役に立てているのに、どうしてどうして――?
「桐、なんで我は……力を使っちゃいけないの?」
「以前にも言ったであろう、使う事で誰も喜ばない――誰も望まない結末が訪れるからじゃ」
誰も喜ばない、それは我自身とユウジさんに桐も含むということ?
誰も望まない結末、まるで終わりが決まっているかのように――桐はなんで、そんな言い方を。
「桐は前にも言ったよね、今は言う事は出来ないって! 桐は言えないけど知ってるってことだよね!」
「…………」
「答えて桐っ! どうして我が使っちゃいけな――」
その時桐の足がバタりと止まる、繋がる手が緩んでいることに気付く頃には桐の顔はみるみるに蒼くなっていく。
「…………どういうことじゃ」
数刻の沈黙の後に、桐は衝撃で掠れた声でこう言った――
「ユウジへ一任した重量制御が切られているじゃと……っ!」
その意味はどんなことをさすのか、我にはまったく分からなかった。
ジュウリョウセイギョなんて言葉も、時折桐が口に出していた言葉なだけで我にはなんなのか分からない。
でもそれがきっと異常なことなのだと、桐の凍てついた表情を見て思い恐る恐る問いかける。
「桐? 突然どうした……のっ」
桐は身を翻して、突然に逆の方向――かつて走ってきた家へと走り出す桐に我も手を引かれて戻っていく。
焦りが垣間見え、何かに意識が行っているような。今までの冷静に我をの質問を受け流すこういう時の桐とは違っていた。
「ねぇ、桐どうしたののってば!」
「…………ユウジが」
「ユウジさんが……」
そうは行ってもいくら我でも分かってくる、でも我はそれを桐から聞かないと信じたくはなかった。
桐の行動も挙動も全部考えると――
「……ユウジが倒されたっ」
何かあった。そして桐が言うのなら、倒された。
ユウジさんが倒された? 誰に? 桐やユウジさんが度々口に出す”アイツら”とかいう人たち?
でも今まではユウジさんは傷こそあったけれど、帰って来れていた――でも。
「ユウジさんっ!」
ユウジさんが戦っていたと桐の言う場所に向かって――その時我は、かつてない絶望を見た。
そして我の中で何かが切れる、怒りなのか憎しみなのか哀しみなのかも分からない――
「ユウジさぁんっ! ユウジさんっ!」
呼んでも応えず、ユウジさんの体からは信じられないほどの血が流れ出す。
腕や足も、一番は心臓があるはずの左胸からどくどくどくどくと流れ続けて――地面を紅く紅く染めていく。
ユウジさんが突然我たちの目の前で意識が無くなったkとおはあった。でも今回は違う、見て分かる程に瀕死だった。
「ユウジ! しっかりしろっ! ――箇所復元。人物指定男一人、対処箇所……二十八ッ!」
桐の手元がぼんやりと明るくなり、ユウジさんの胸にそれは当てられる。それでも血が止まるには程遠く――
『来たか。しかし接続者が倒されたのが分かったかのような速度だな。まあ探す手間が省けていいが』
空を見上げると、そこには本で読んだ。飛び道具と言われるものの想像よりも小さく華奢な”ジュウ”それでユウジさんを――
『そこの神様。神様だからと俺は容赦しない、この世界では異の一種にしか過ぎないんだからな、じゃあ消えて貰うぜ』
見上げる先の男はジュウを構えて、我を狙うように向け直す――そんな男の行動を、我は虚ろ虚ろとしか見えていなかった。
今の我にはあるのは果てしない後悔と深く生まれる憎しみとふつふつと溶岩のように熱く膨れ上がる
怒り。
「――ごめん桐、ユウジさん。我はもう無理だよ」
「っ! ホニ、やめるんじゃ! 我がなんとかする! だからお主は力を使って――」
「ここで使わなきゃ、神様で居る意味なんてないよ……これじゃただのお荷物になっちゃうよ」
「落ちつくんじゃ、わしはユウジを治癒しながらも守れるから、な?」
「……これ以上桐もユウジさんにも迷惑だけかけたくないよ、傷つけたくないよ――」
今、そうしないと。我はもう耐えられないから。
「延々に続き包み込む母なる大地よ――深く蒼の色へと染まるすべての源の海よ――永遠に続き遠く広がる遥か空よ――全ての自然よ我に味方せよ――っ!」
地面が砕けて現すのは肥大化した植物が生ける物のように蠢く、空は朱色に染まったはずの雲が薄暗く雷を躍り光らせ、何もかもを吹き飛ばすかのような強く乱暴な風が巻き起こる――神様が怒るその時、この全ての自然が一つへの敵意のみで牙を剥く。