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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第九章 G.O.D.<出会い>
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第245話 √2-50 G.O.D.

コッチが本物ですヨ

 昼食を終えて教室へと戻る。

 ホニさんの満足げな顔を見ていると、もう俺は一日の幸せを一気に享受した気持ちになる。

 そうして駄弁りながら喧騒にまみれた廊下から教室の戸を引くと――


「なっ!?」


 そこには戸を隔てて小さかった女子生徒の悲鳴というか……嬉しい悲鳴と表現すればいいのだろうか?

 一応は一種の興奮状態のように「キャー」やら「かわいいいいい」などとペットショップに行ってガラス越しに見る愛らしい動物たちに感嘆をもらす女性の様子にもどこはかとなく似ていた。


「ユウジどうした? そんな扉前で固まってたら……うおう!?」

「ユウジ、何か見え――あっ!」

「な、なんですか!? ええと、あの女の子は――」


 そう、それはまた沢山の女子生徒がわいやわいやと囲む中にいる、本来はいるはずのない人物。まあ女の子という表現から性別は特定出来ていたと思う。

 俺の反応でそれはいることが異常だと読みとってくれれば幸いだ。


「あっ、お兄ちゃーん!」

「げ……」


 その予想外の展開への驚愕と共に悪寒が体中を駆け抜ける。なんで、なぜに奴がいるのかと。


「お兄ちゃん? げ、なんてひどいよー」


 少し悲しそうに演技するものだから「シモノくん、せっかくこんな可愛い妹ちゃんにそういう反応は無いんじゃない?」「そんなシモノくん、ボク残念だな~」「ねえ、この子お持ち帰りしていい?」などと非難の声が上がる。

 そんな地味にも効果覿面こうかてきめんで殺傷性の高い展開に怖気つきそうになるも必死でこらえて、キツく言い放つ。


「だめだろ桐。勝手に学校に来ちゃ」

「えへー、ごめんなさい」


 ……あれ、思いのほかキツくないぞ。ち、畜生このヘタレ野郎の俺がっ! そんなだから主人公になったはずなのに彼女の一人も出来ないんだよぉっ!


「……で、何でいるんだ?」

「午前授業が終わったから来てみたのー☆」

「いやだからって、家に居ればいいだろうに」

「だって……お兄ちゃんに会いたかったんだもん」

「…………」


 クラスメイトズな女子生徒はそんな可愛らしい(俺からみれば只のブリッ子)妹こと桐の言動に沸いた。

 クラスメイトズな男子生徒はそんな言葉を向けられた俺への敵対心は一の不燃ゴミを集積するゴミ処理場でのゴミの積まれていく勢いで積もってゆく。

 塵も積もれば山となると言うが、今回の妹発言は前年度比約三十倍のペースで俺へと向ける鋭い視線を強めている。

 どこからかは何かワラのようなモノに釘を打ちつける音が聞こえたり、信教宗教もびっくりなほどに怨念を籠めたテノールとバスの合唱でネチネチと文句やら罵倒の言葉が言われ続ける。

 

 もう、どうしろと。俺は何もしてないのに敵が増えて行くという微妙どころか大いに理不尽な展開に心の内で誰にも知られることなく涙を飲んで、一応は答えておく。


「だとしてもここは遊び場じゃないからな、勝手に来るな」

「あ……ごめんなさい」


 女子の方々は「正しいことだけど言い方ってものがあるんじゃない?」「シモノくん、もっと優しくしなきゃ」「ねぇ、だからこの子持ち帰っていい? 二日で返すから」

 男子の方々は「なに悲しませてるんだよ」と全員打ち合わせしたかのように右手親指を下へと向けるという、ギャルゲの選択肢でどれを選んでもバッドエンド直行のトラウマが蘇る。

 いやさ、なんで俺は怒られ妬まれ憎まれているのかと……そうか、ホニさんの笑顔の代償がこれってか。でも、それでもホニさん笑顔が見れるってなら俺は後悔なんぞないさ。



 というような実は桐が諸悪の根源なのにクラスメイトに気圧されてネガティブオーラを発散するユウジ……傍目から見ても、私も一女子ですけど可哀想に思えてきます。

 昨日は特訓攻めで、その特訓をするという抽象的な事だけをホニさんに知らせて、その中身のハードさを桐以外の誰も知らないからで……本当に報われないというか、流石の私もやめたげてよぉ。



 若干ネクララモードに入っていると、隣のホニさんが久しぶりに友達と再開した子供のように。


「桐~っ」

「あー、ホニちゃん」


 桐の元へと駆けて行く。その幼い容姿のホニさんが桐の手をぎゅっと掴む光景は「なにこれ悶えたい」というようなあまりにも可愛らしい光景に教室は一気に静まり返り、なんとも生温かい視線が一点へと集まる。

 正直俺は怒りの矛先から逃れられたので好都合で、それでいて見ていても飽きない光景にホニさんの桐への行動は一石二鳥の救世主だった。


「んー、桐? いつもはホニって呼ぶのになんで――」

「ごめんなさいー、ちょっと家族内でお話したいからホニちゃんとお兄ちゃんを借りますねー」

「え、なになに」

「ちぃ、おまっ」


 何か化けの皮が剥がれそうだったのを感じ取ったか有無を言わさずホニさんの手を掴んだ上で俺の腕を掴んで、どこからそんな力出るんだよ言わんばかりの力で連行される俺。

 極めつけは以前にもされた”金縛り”状態で、完全に桐に連れて行かれるしか行動の選択肢がないというからまたまた理不尽な展開だ。


 


 どこに連れて行かれるかと思えば、お約束かと言わんばかりの半地下こと倉庫手前の薄暗くちょっとしたスペースだ。


「ホニ、わしはアレがデフォルト・通常じゃからな」

「えー、今はこうしてホニって言ってるのに?」

「……それでお主らを呼んだ訳じゃが」

「っ」


 すると金縛りが解け、口も開き体の自由も戻る。

 

「な、なにすんだよてめえ!」 

「わしが来たのは他でもない」

「……茶化しに来たのか? 遊びに来たのか?」

「何を言う、ユウジが弄られるのを見に――げふんげふん、現状視察じゃ」

「おい後者に言ったことよりも本命は言いなおした前者のように聞こえるんだが!」

「いかにも」

「あっさり認めたらどう反応すればいいんだよ……」

「死ねばいいと思うぞ」

「なんでやねん」

「いくら面倒だからといってツッコミに手を抜くのはどうかと思うぞ」

「いやいやいや、なんでいきなり俺がキルユーなんて言われなきゃいけないのかと小一時間」

「……お主は学校が同じなったからと、ホニとイチャつきおって」

「なんか言ったか?」

「女のデリカシーの分からない男なんて馬に蹴られて死ねばいい!」

「ひ、ひどい」


 先程のクラス生徒全責めも堪えるが、ここまで一方的に罵られると怒りを通りこして泣きたくなる。


「……で、わしが来たのはほかでもない」

「まあ、一応聞くよ」


 なんで繰り返してんだよ、というツッコミを入れる気もならず。寛容な俺はそれを流して聞いてみることとする。


「この学校にはアイツらがいるのじゃろ?」

「っ!」


 驚くことではない。以前に雨澄に会ってから分かっているはずだ。それでいて今日はホニさんが来ているというのにアクションが来ないことに疑問を覚えるべきだったと今頃になって思う。


「会ってはおらぬじゃろ?」

「それは、まあ……」

「一応は”アイツら避け”の術をお主とホニはかけているおかげじゃな」

「!」


 そうか、また桐には助けられているのか。

 いくら俺が戦うとは言え、あの過酷であっても絶対に必要な鍛錬も。あの時家に逃げ込む寸前のことも……そして今日も。


「ああ、すまんな桐」

「礼を聞く覚えはないの、わしは言ったはずじゃ。助力すると、サポートすると」

「桐……」


 少し感動する、桐は一生懸命にここまでやってくれているのだと。


「そういえば、これは何時の間に術をかけたんだ?」

「お主が寝ている間に」

「なっ! それはお前っ、何度も止めろと――」

「というのは嘘で、昨日のドリンクじゃ」

「……いや冗談に聞こえないから止めてくれ」

「入ったのは事実じゃがな」

「桐ィ!」


 ……なんというか素直に感謝しようとするのに、調子を崩すのが天才級だな。


「まあ、わしもお主の部屋には入らないといけないからの」

「なんでだよ! 力使ってまで入るなよ!」

「……悪いな、ユウジ。しかしこれだけは譲れぬのじゃ」


 その時の表情を俺は見ていた。いつもながらの茶化すかのような笑顔が消えて、そこには本当に時々に見せる真剣な桐の表情があったことを。

 桐は……もしかして。


「お前、何か隠してんだろ」

「んなわけないじゃろ! ――それでじゃな」

 

 返しこそいつものペースだが、俺は桐が何かを見に秘めていることを少なからず予測できた。

 あまりに都合のよい能力。いくらなんでも、チートにも限度がある――


「この学校には少なくとも一人、この町には三人。アイツらが居るようじゃな」

「さ、三人っ!?」

 

 桐のことを考えていたことも吹っ飛んで、途端にその「三人」という新情報に驚愕する。


「それもお主の交戦した和とは一味も二味も違う高い力を持っていると思われるの」

「まじか……」

「そして、帰ったらテレビのニュースを見てみるがよい。新聞でも良いがの、最近起り続ける事柄としては異常じゃからな」

「お前、何を……」

「わしは一度家へと戻る。そのアイツらを避けさせる術も数日もつ訳ではないからの。出来るだけ早くに帰るのじゃ」

「…………ああ」

「じゃあの」


 そう言って桐は階段を駆けあがって行った。


「ユウジさん……」

「大丈夫だ、大丈夫」


 根拠なんてあるわけない、力なんてもあるわけない。

 あるのは守ると決めた決意のみ、それでも俺は――


「俺とホニさんはこれからも一緒だ」

「……うん」

 

 そうして昼休みの予鈴のベルが鳴る。こうして、また日常へと戻る。

 またいつ非日常へと落ちるのか変わるのかは分からないが――俺は抗うつもりだ。


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