第244.5話 √Z-50 G.O.D.
実に良いものだ
昼食を終えて教室へと戻る。
ホニさんの満足げな顔を見ているとこちらもおそらくはニヤニヤと気持ちの悪い笑顔を浮かべているのだろう。
またまた駄弁りながら喧騒にまみれた廊下から教室の戸を引く――
「なっ!?」
そこには突然に巻き起こる女子の悲鳴とともに奇妙な光景が広がっていた。
「ユウジどうした? そんな扉前で固まってたら……うおう!?」
「ユウジ、何か見え――ふわっ!?」
「な、なんですか!? こんな何時の間にっ」
そう、それはまた奇妙な光景が広がっていた。
……と、一応解説台詞も置いておくものの内心はまた違っていた。
「なんだこの天国」
女子生徒に限って全員が――
「ユウジさん、あれって水着だよね?」
そう、それも――
「旧スクだと……?」
マサヒロの言うとおりの旧型スクール水着を着用した女子生徒達がそこには居た。
「(あー、やべー。プールだから抑えられる欲求やら理性が今にも弾け飛びそうだわー)」
一応説明しておけば俺はスク水フェチだ。
そんないきなりと言われても、いつか前に誰かの手によって暴露された気がするので渇愛しておく。
しっかしクラスの女子も思いのほかレベルが高いおかげでスタイルを際立たせるスクール水着を十二分に着こなせていて俺は見るだけでハッスル状態。
胸が小さい娘はなんともスレンダーでさっぱりとした印象を受け、胸の豊かな娘はなんとも色気を漂わせている。
そこで俺は気付く、クラスだけがスクール水着天国と化しているのだろうか? そう思って後ろを向く――
「や、だめ! ユウジっ」
「!?」
そこにはスクール水着姿で羞恥のあまり身を縮こませるユキが居た。
頬は紅潮し、スクール水着の特性と言うべき体のラインがくっきりと出て……ええとその、腕でちょうど豊かに育った胸が形を何度も変えて――なんかヤバい。
少し視線を逸らすも、そこにはなんとも柔らかそうに引き締まった足があり。そこに黒ニーソックスというからもう俺の理性はサタデーナイトフィーバーである。
もうそんなエロマンガのような展開を俺の姉貴の地味に展開する誘惑に抗うことで得た強い理性が揺さぶられてこのまま遠心分離するのを抑えて、静かに深呼吸をして――
「見ないでくださいっ、ユウジさん!」
「なんっ!?」
思わず気になるのは男の性。一方の姫城さんは何故か白スクだった。知らなかったのが姫城さんの胸は年を相応ではなく、なんとも突出した大きさを誇る。ユキも決して小さいわけではなく姫城さんが相当に大きいようだ。
思い出せば体育の時間もその胸の揺れ方には視線を固定してしまいかねない魔性の色気があった。
そして白色スクール水着のせいなのか、水着をつくったところが手を抜いているのかは分からないが。
「透け……」
透けていた。なんとも健康的な肌色が僅かに水着越しに覗いているのだからもう俺は死にたい。
そして気付く間もなく誰かの学ランを強奪したのかは分からないが、そのスク水学ランの上にいつもと違う表情……そう基本的に俺にはみせない恥ずかしさに赤くなる姫城さんのギャップも加わったトリプルコンボも俺の性的欲求は技あり状態だった。
「ユウジさんユウジさん、これって水着だよね?」
「うおう!?」
ホニさんまでもスク水の毒牙に……かかってはいるのだが、また他のスタイルとは決定的に違うものがあった。
それはスクール水着の胸辺りに貼られたというより刺繍された白い布生地に「ほに」と書かれている点。
「(お約束っ)」
それでいて中学生な容姿としては背こそ小さいほども体の各部位は結構に成長しており、水着生地を摘まんでくるくる回る度に、しっかりと起伏のある胸とボリュームのあるお尻やらが覗いて俺の脳内は理性抑制の為に割いたエネルギーのせいでパンク寸前とも言えよう。
「やばい、このままでは」
確実にギャルゲ原作なのに、エロゲ原作に逆移植確定で声優変更R指定格上げの事態になりかねない、主に俺の行動で。
そんな訳で――
「逃げるっ!」
とりあえず何も着れていないユキに学ランを手渡してスタートダッシュ。
「えっ、あ! ユウジっ」
「ユウジ様、どこに行くのですかっ!」
「……スク水もこのような場では興奮するものだ」
「「マサヒロくん最低ぇー!」」
後ろでマサヒロがクラス中の女子に罵倒される声が聞こえるがそんなのお構いなしだった。
道行く女子生徒がスク水、スク水、スク水。
もう女子生徒だけスクール水着という「春なのに、トリピカルフルーツゥ!」ではなく「春なのに、スク水フルーツゥ!(瑞々しい果実的な意味で)」てな状況になっている。
いやはや素晴らしいから家に帰ってから楽しもう。
なんて最低すぎることを考えていると前から敵が現れた。
「ユウくーん!」
「げ」
容姿端麗成績優秀スタイル抜群みんなの生徒会副会長に家事万能……と完璧超人でありながら常にパズルの一ピースが欠けるがごとくズレている人。
「この水着姿どうかなー……って、何で逃げるの!?」
「逃げるに決まってんだろ!」
姉貴は言わないでいたが魅力的になっていた。それもスク水がかなりの助力をして。
姉貴は分かっていたがモデルも裸足で逃げ出した上に穴に飛び込むほどのスタイルの良さと以前に背負っても分かるほどに実にたわわに実った大きな胸を持っており、まあ、なんだ。
弟であっても、少しばかり理性を揺るがされる訳で。
それがダッシュしながら、そんな男子生徒の理性を滅殺するような動きをみせる体の一部分に流石の俺も直視は出来ない。
「てかなんで追ってくるんだよ!」
「ユウくんにこのスク水見て貰いたいからー!」
見えてるよ! 誠に思い切り見えてるよ!
「それにこういう場でないと見せられないから……ね」
「意味深なこと言うんじゃねえー!」
早速「死に晒せ糞弟」やら「引っこんで氏ねえ!」などの罵声と共に空き缶やらゴミやらが飛んでくる始末。
しかし姉貴は先程並べたもののほかに”運動神経抜群”も有ったことをお知らせしておく。
「つーかーまーえーえーたー」
「ぎゃあああああああああああああ」
腕を掴まれ、途端に伝わるあまりにも柔らかいその殺人的な感触。
長袖ワイシャツでも分かる、そのほのかな温かさと魔法でもかけられているばっかりの柔らかさに昇天寸前だった。
「ねえ、ユウくん? お姉ちゃんの水着姿どう思う?」
「は、はは。冗談だろ? ドッキリとか言うんだろ? いや、からかってんだろ!」
「そっか……恥ずかしいよね、じゃあそこのトイレの中なら――」
「速効離脱っ」
「あっ、ユウくん! なんで逃げるのってば!」
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
一応補足しておくがこれは走って息が切れたのであった、決してあられもないとも言える校内を埋め尽くす女子生徒のスクール水着姿に興奮していることではないと……今は言っておく。
逃げ込んだのは外の混乱がじわりじわりと聞こえてくる男子トイレの中。
「な、なんなんだよ……」
『ユウジ、聞こえるか?』
「のわっ!」
途端に頭の中へと聞こえる桐の声。
「なんだ、桐か……」
『今そちらでは大変なことになっておるじゃろ』
「やっぱお前は分かってるか……」
にしても、なぜに突然――
『わしがそこら辺に落ちていた”スク水学園~全授業スク水大作戦~”というえろげをお主のパソコンに入れてしまった』
「なっ!」
そういえば俺が何を思ったかコノザマで注文したエロゲのタイトルだった。開封こそしたが、未だプレイしていないというのに……!
「どうしてくれる! てかなんでお前は家にいるんだよ!」
『わしは今日は午前授業じゃったからな。悔しいながら役得じゃろう?』
「いや、まあ……って直せよ! これ以上は耐えられない!」
『理性がか?』
「黙れこのロリ老人!」
「まあ待っておれ、少しばかり時間がかかるがの。ガマンせい」と言ってテレパシーは一方的に切れた。
そうして諦めて外に出てみると、そこはやはり桃源卿で。
なぜか”脱げない”仕様になっている水着のせいで午後の授業の五時限目はクラスメイトの女子が体操服を着たりして少しはマシにしつつもあはり男として性との激闘を理性内で繰り広げられる中、授業が行われていくのだった――
続かない。