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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第九章 G.O.D.<出会い>
102/648

第240話 √2-45 G.O.D.

もっと経過を踏んだほうが良かったかなあ、と反省中

「…………」


 何の変哲もなくデザインを度外視した淡泊で機能性重視のアルミサッシの引き違い窓と、何の模様もなく薄汚れ始めたベージュの天井や壁に、統一性のないデザインの家具をただただ自分が使いやすい位置に置いただけの至って普通の高校生のスペースであるこの部屋。

 そんな部屋の中心で、この世とも思えない程に美しい光景が繰り広げられていた。


「――――」


 余りにも長い黒髪を有した少女を包むのは蛍光灯やら電球やらハロゲンランプのような人が加工したうえで生み出す光とは完全に異なる、全身から淡く金色の光……言うなれば夏夜に静かに草葉の上で淡く強い主張することなく短い生涯を光り生きるようなホタルをそれは連想させる。

 神秘的で、眩しいことはないのにどこか力強さを感じる。”美しい”という言葉がふいに溢れるほどに、この世とは思えないほどの絶世の光景だった。

 そして窓が開いてもいないのに彼女を包み祝福するように優しい風が吹き始め、そのしなやかな黒髪が舞いはじめる。

 目を瞑って、全てのものを許しているかのようなその彼女の表情には思わず今までとは違う方向性で――人があまりにもな絶景を見た際に絶句してしまうことのように、見惚れ沈黙していた。


 自分は本当に生きているのだろうか、というほどに。何かの夢か幻か、見間違いなんじゃないかと邪推するほどに。

 衝撃的で、美しく、神々しかった。


「ユウジさん――隠していてゴメンね」

「!」


 その彼女の――ホニさんの言葉で我に返る。


「これでも我は神様だから――望めばこの世界の自然は祝福してくれるんだ――我は恵みの神だからね」


 今望んだのは”風”なのだろうか。ホニさんに寄り添うように流れる風は冷たくなく暑くすぎることなく、長い間当たっていたら眠気が襲ってきそうな心地の良い風だった。


「ユウジさんには知ってほしかったの」

「そう……か」


 やっと声が出せた。声も出すのが惜しいぐらいにそれは美しかったからで。そして今も変わらず美しい。


「我を受け入れてくれた――嬉しかったよ。でも――今の我はどう思う?」

「……」


 素晴らしい、綺麗、美しい。色々な陳腐なかける言葉が頭には浮かぶ。だから出すのには憚れてその目の前のホニさんは――言葉では表現できないほどだから。

 そして俺はそんな言葉を出さずに――また違った答えを返してしまった。


「びっくりした」

「……え」


 その答えにはホニさんも唖然としたようで、俺もなんでそんなこと言ったんだろうかと思えるほどに残念な受け答えだった。


「うん、びっくりした」

「え……ユウジさんは怖がったりしないの?」

「怖い?」


 ……そんな感情は全く浮かんでいなかった。

 ホニさんを一目見ても何度見ても怖い気持ちは浮かばない、それ以前にあまりの可愛さに果てしなく庇護欲を掻き立てられる。


「だって我は――これで本当にユウジさんとは異なってるから」

「あー……」


 根本から違うのだろう。その幼い容姿の何倍も何十倍も何百倍もの力強さに溢れているように見えた。

 だからこんなやっとこさ高校生という大人の階段を昇り途中の俺なんかは永い時を生きる中ではひよっこのひよっこを通り越して胎児レベルなのかもしれない。

 異なっているのは確かで、でもそれは少なくとも――嫌悪感も恐怖なんて微塵もなければ、むしろ。


「すげえ綺麗だった」

「え……えっ?」

「いやー、ホニさんは可愛いだけでなく綺麗なんだなあ。と再認識させられた」

「ええええええええ」


 未だ包み込む光の中で驚くホニさんの姿はなかなか面白可愛かった。

 本当に素直な感想だった。ここまでホニさんのような容姿の女の子が光に包まれることで神秘的かつ美しく見えるなんて想像すらできなかった。

 とにかくそれは純粋に綺麗だったのだ。


「……気持ち悪くないの?」

「とんでもない、ずっと見ていても飽きないほどの素晴らしさだぞ?」


 なんともこの綺麗なホニさんに返す言葉としてはカスを通り越してナノウイルス級だとは思う。でも見ていても一生飽きない――そう思えてしまうわけで。


「こんな我でも――いいの?」

「どんなホニさんでも俺はいいぞ?」

「っ!」


 それを聞いた途端にホニさんの顔が金色の光の中に居るなかでも分かりやすいほどに赤く茹であがった。

 俺は無礼すぎるが思ってしまう――こんな可愛い神様がいるのだろうか、と。


「ユ、ユウジさん? ほ、本気で言ってるの?」

「ああ」


 一瞬その美しさに俺は「こんなすんごい人を守るとか凄まじいほどに失礼で無責任なこと俺は言ってしまったんだろう」と自分の小ささ無力さに思ってしまった。

 それでも俺は名前をまた呼んでくれた時に「やっぱホニさんだなあ」とも思ってしまったのだ。

 俺のことを律儀にさん付けで呼ぶホニさん。自分に自信がないかのように問いかけるホニさん。俺の予想外の反応に驚くホニさん。俺の何かの言葉で赤くなるホニさん。

 可愛い。

 今回で美しさが大幅にプラスされただけで、ホニさんは相変わらず可愛かった。

 そんな可愛いホニさん、色々に表情を変えて見ていて思わず癒されてしまうホニさんだから。

 ホニさんをこれからも見てみたいから、だからこそこんな理不尽で残酷で、理由を五千万文字ほど喋られても絶対に納得がいかない展開に俺はふつふつと怒りの募らせて――守ると決めた。

 

 この美しく見惚れてしまうホニさんも、日々の思わず微笑ましくなってしまうホニさんも。

 全部俺が守ると決めたホニさんなのだ。


 ――いや、魅力的な表情だけホニさんを守るのではないのだろう。

 例え姿形が変わっても、きっとホニさんを守りたい――そう思い続けるだろうと思う。

 

 俺はこれでもホニさんラバーなのだから。

 ホニさんが自分を忘れることがなければ、俺はずっと隣を居続けるだろうと思う。いや自分をいつか忘れても――それでも俺は傍にいたい。

 

「……ホニさん」

「は、はい」


 どこかいつもと違って緊張とした面持ちで身構えるホニさん。


「俺じゃ役不足どころじゃないけどさ、俺がホニさんを守りたい気持ちは誰にも負ける気がしないんだ」

「…………」 


 俺の言葉を真剣なまなざしで聞くホニさん。


「こんな俺でよければ、これからも宜しく頼めますか?」

「…………本当に」


 上目遣いで世の男ならばほとんどがその一瞬で胸を射とめられそうな、あまりに可愛いホニさん。


「?」

「本当に我なんかを守ってくれていいの? ユウジさんも我のせいで――」


 不安に俯く、光に包まれているのにどこか消えてしまいそうな儚げなホニさん。


「俺はホニさんが隣に近くいてほしい、もちろんホニさんと出会えたことを絶対に後悔してなんかいない」

「っ!」


 また顔を赤く染めて、衝撃のことを聞いたかのように表情を変えるホニさん。


「俺は神様にありがとうとお礼を言いたいぐらいだね」

「……わ、我も一応神様だよ?」


 訂正を促すように、たじろいで言う自分を主張するホニさん。


「だからホニさん、ありがとう」

「!? ……なんか変だよ」


 驚いて、不思議そうな表情をするホニさん。


「ホニさんは神様なんだろ? 信じていいんだろ?」

「うん……うん、そうだけど」


 どこか納得のいかないような、眉間にしわを寄せるホニさん。


「ならいいじゃねえか、俺はホニさんに出会えた運命的な奇跡に神様へ感謝する」

「…………」


 俺の言葉で反論を止めて、何かをこらえるかのように。溢れるなにかを留めるように俯くホニさん。


「だからホニさん、これからも――歩いていこうな?」

「ユウジさんっ!」


 何かを吹っ切れたような、俺の方へと飛び向かう――やっぱりに可愛いホニさん。


 ホニさんは飛びこむように俺に抱きついてくる。そのあまりに華奢で小さな体を俺は優しく壊さないように胸で抱きしめた。 

 包んでいた光がゆっくりと終息していく。俺に包む役目を託すかのように――


「……ユウジさん、我こそこれからよろしくね」

「ああ、絶対負けねえ」


 言葉だけで終わる……そんなことは自分が許さない。だから俺は桐の言われた基礎体力を付ける特訓をしてみようと思う。

 どこまで俺には出来るかは分からないけども――何もしないことだけは避けたかった

 

「うん……我ももっとここに居たいから、ユウジさんと一緒に過ごしていきたい」

「ああ、ああ! ……俺は強くなるよ、ホニさん」


 誓うように俺は呟いた。俺はホニさんを守る為、ホニさんと時を過ごす為に俺は抗っていく。


「ありがとうユウジさん……ありがとねユウジさん……我も抗い続けるから――」


 俺の胸の中で小さな女の子の姿をした神様は泣きぐずる寸前なほどに温もりを求めるかのように顔を埋め続けた。

 そんなホニさんが可愛くて――俺は時を忘れるかのように、しばらくは抱き合ったままでいた。

 

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