表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

私には、選択肢など残されていませんでした。

難しいです…。

拙い文章ですが、さいごまでよんでいただけると

「レイス・アーガルト。今ここで、貴様との婚約破棄を宣言する!」  


らんらんと光るシャンデリア。美しい天使の洋画たち。美しく着飾った貴族。

それらが談笑しているとき、だった。

その言葉は、唐突に始まった。 

とっさのことで頭は回らず、けれど何かおかしいということは感じている。

私は、たった今、疲れたので隅で休んでいるところだった。

こちらを厳しい目で見据えてくるのは、私の婚約者のケイ・ルーシャルト第二王子。

そして、その後ろで涙ぐんでいるハリン男爵令嬢…。


「聞いているのか、レイス!なにか言ったらどうだ!」

「…それは、アーガルト国王が認めたことなのですか。」


潰されないように、そう口に出す。

アーガルト国王は、よく私が話し相手となったお方だ。チェスや樹の国の将棋など、ボードゲームも共によくプレイしていた。

優しくて、娘のように私を育んでくださった国王様。

あのお方は、この事に関係しているのだろうか。

この事を、知っていたのだろうか…


「お父様は今朝方死んだぞ。」


(…なっ!?)


あっさりと言い放った内容は、おかしなものだった。

あの国王様が、死んだ…?


「う、うそ、です…だって、国王様が亡くなられたときに鳴るケーリアの笛が、なって…」

「ああ。あの人は裏切り者だった、それだけだ。故に、私が国王の立場になり、お父様は王位を剥奪され、今朝方馬車の事故で死んだ。これはすべて昨日起こったことなのだから、笛は鳴らなくて当然だ。」


う、そ…

あの、お優しかった、アーガルト国王が…


「お亡くなりに、なられた…」


掠れた声が唇から漏れた。それほどまでに、信じたくない内容だった。 


「話を戻すが、私はお前との婚約を破棄する。」


その冷たい声によって、幾らか意識は覚醒する。


「お、お待ち下さい!いくら廃されたとは言えども、その契約は前国王が決めたものです。私は契約違反もしていませんし、破棄をできるはずが…」

「…お前、国王と密会していただろう。」


その言葉が広間を駆け巡る。

一瞬にして、私の周りに同様が広がった。

密会。

ああ。そういうこと。

王子は、つまり、私と国王の間で別の関係を持っていたと、そう言いたいのね。


「…根拠は、おありですか。」

「証言者ならばここにいるぞ。ロッテリア・ハリン嬢が、お前の姿を見たと。彼女だけでなく、うちの侍女達も見たと言っていた。」


ハリン様だけでなく、侍女まで…。

ああ。

何も言い返せない。

口が縫い付けられたかのように、ぴたりと結ばれて、開かない。喉はカラカラに乾いて、手には汗が流れる。


「さらには、ハリン嬢に権力を使って酷い嫌がらせをしたとも聞いている。」


嘘だ。

そんなこと、嘘なのに。

私はなにも言うことができない。声に、出すことができない。

ハリン嬢とは、今、初めて目を合わせたくらいの関係なのに。

なんで。なんで…


「黙っているということは、認めるということだな!」


違う、違うと首を振り抵抗する。

声は出せない。兵士が私の腕を掴んで、広間から引きずり出そうとする。

靴が片方脱げ、ドレスの袖は破けた。

誰かの投げたピアスの針が肌に突き刺さった。

誰かの投げた豪勢な料理が、私のドレスを汚した。

誰かの言った、「毒虫」という言葉が頭から離れない。

母と父は役立たずだ、我が家の汚点だ、ふざけるなとただこちらに怒鳴っていた。

私の可愛い弟は、そんなお母様たちを宥めようとしていた。そして、こちらに手を伸ばす。

ふふ。弟だけね。

私を、助けようとしてくれたのは。

広間の重い扉。

その隙間から見えたのは、こちらを見て愛らしく微笑むハリン嬢と、憎々しげにこちらをにらみつける私の婚約者。

声はこんな時でも出せない。

ただ代わりに、熱いものが頬に滴り落ちた。

ただ、空虚だった。

私はずっと、この国のために頑張ってきたのに。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ