5話 放課後、校舎裏にて美少女たちを観察する、俺
翌日。放課後。
はい。俺は元気です。
昨日は酷い目に遭った俺だったが、一日経てばあっさり復活した。
まあ、厳密に言えば朝起きたときも、良い気分ではなかったのだが。
いざ意を決して学校へと来てみたら、今日も綺麗な桐野さんがいて、何となく見ていたらそれだけで心が浄化されました。
見た目だけなら橋澤さんもかなり可愛いけど。
やっぱ滲み出るオーラが違うんだよなあ。
そんなことを考えつつ、いつものように桐野さんのことを目で追っていたら、桐野さんが昨日のギャル3人衆に声を掛けられているのを目撃してしまった。
嫌な予感がした。
なにせ、彼女たちはいつも桐野さんとは会話をしないのだ。
昨日は自分のことで精いっぱいだったこともあり、次の標的もまた自分であると思い込んでいたが、どうやらそれは俺の思い上がりだったのかもしれない(思い上がりとは)
もしかすると、俺のせいで桐野さんにも嫌な思いをさせてしまうかもしれない。
そう思うと、不安で居ても立っても居られなくなった俺は、何故か場所を変えようとし、人気のない所へと向かう4人の後をこっそりつけることにした。
♢♢♢
桐野さんとギャルたちが辿り着いたのは、誰もいない校舎裏だった。
それこそ、まるで告白スポットにうってつけの場所といえる。
ますます嫌な予感がしてくる。
まさか、次の嘘告のターゲットは、桐野さんなんじゃ…
そう思ったが、すぐさま桐野さんは女の子であったことを思い出す。
流石に、女子が女子に…なんて特殊な、といったら失礼だが、珍しい告白を『噓』でやるなんて、考えられないか。
でも、もし本当に告白が行われるとして、桐野さんがそれをOKしてしまったら…
あわわわわ
ムフフフフデュフフフフ
それも悪くない。
というかなんかそそるシチュエーションだ。
BSS、いわゆる『僕が先に好きだったのに』でしびれるポイントといえば、『好き』の気持ちが誰より長く積み重ねられて大きかったとしても、突如現れたライバル男の容姿やら才能やら、そういった輝きに勝てないことで、彼女はライバル男を選んで何もかもが叶わないものになってしまうところにあると俺は思うのだが(早口)、その彼女をさらう相手が女の子だった場合、『僕だけじゃなくてどんな男でも、彼女の心を満たしてあげることができなかった』という更なる強い感情が生まれて…
デュフフフ悪くないぜ
…ごほんごほん。失礼しました。
今はそれどころじゃないんだ。
俺は木の陰に隠れて紛れられるように、道中でちぎり取ってきた木の枝を両手に、その場で待機する。
これらのアイテムを取得する際に、バキバキっと大きめの音が出てしまい一瞬ヒヤッとしたのだが、彼女たちは気づく素振りも見せなかった。おそらく、橋澤さんたちにとってはそれほどまでに今から桐野さんに対して行うことが大層なことなのだろう。
そう思うと、俺の方もじっとしていられない気持ちになる。
「桐野さんさ~?最近、林田によく話しかけられてるよなあ~?」
「え?えっと…その、はい…」
どういうわけか、桐野さんが恥ずかしがっている。今の話の流れで照れる要素がどこにあったのか謎だけど、こんな桐野さんを見るのは初めてで、少しドキッとしてしまう。
しかし、この話の切り出し方は正直予想外だった。
さっきはああだのこうだの妄想が膨らんでしまった俺が、今更言っても説得力がないかもしれないけど、やっぱり一番にあるのは桐野さんには傷ついてほしくないという気持ちだ。
あんなにも真っすぐで、優しくて、綺麗な彼女の心が曇ってしまうところなんて、俺は見たくないのである。
だから、俺が想像していた展開(嘘百合告白ww)とは異なっていったことで、内心少しほっとしていた。正直話が見えないが、俺と仲が良いことを妬むやつなんていないだろうから、どうせ桐野さんから何か俺にとって弱みとなるようなエピソードでも聞き出そうという考えだろう。
「林田にさ、告白してくんない?」
だから、山田が言ったこのセリフを聞いた瞬間、背筋がぞわっとして、体の震えが止まらなくなった。
俺、また、噓告されるんだ。
好きな人に噓告される。これほど悲しいことはない