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2話 桐野涼華という女

 俺には、好きな女の子がいる。

 だが、所詮凡人の俺には、手の届かない相手だ。




♢♢♢




 桐野涼華。


 圧倒的な美貌を誇るが、あまり他人との接点を持たずにクラスの端の席でいつも窓の外を眺めているような、クールな雰囲気の漂う女の子だ。


 桐野さんはそのスペックからして、本来であればクラスの中心にいてもおかしくないような存在だが、今のうちのクラスの中心は橋澤さんたちギャル共だから、彼女たちと特に仲が良いわけではない彼女は、大抵は1人でいる。



 だが、そんな彼女に俺は一目惚れしてしまった。

 仲良くなりたいと思った。



 だから、俺は『いつも他の人に対するときとできるだけ同じ何気ないノリ』で、定期的に彼女に話しかけるようにした。

 本当は沢山話したいのに、広く浅いコミュニティの一環としてでないと、近づけないのが辛かったぜ!

 しかし桐野さんは、実際に話してみると意外にも表情豊かで、凡人の俺にも優しい笑顔を見せてくれて、それを見た俺はますます彼女に惚れてしまったのだった。




 そして先日、そんな俺たちの関係が、少しだけ変化した出来事があった。

 桐野さんに、勉強を教えてあげるというイベントが発生したのだ。

 桐野さんの方から頼まれたときは、そりゃびっくりしたよ。

 でもまあ、高嶺の花である彼女に話しかけるクラスメイトは少ないので、逆に桐野さんにとっては頼みやすい人が俺くらいしかいなかったのだろうな。俺は心の中でガッツポーズした。




 しかし、完全無欠に見える桐野さんが、勉強が苦手だったとは意外だな。


 …そんな風に思いながら放課後の図書室へと向かったのだが、実のところ、桐野さんは家で集中して勉強できていないだけだった。

 少し教えるとすぐに内容を理解する桐野さん。地頭が良いにもかかわらず勉強が上手くいっていなかった彼女に、普段家ではどのように勉強しているのかを尋ねたら、すぐ弟の話になるのだ。



 弟は勉強に関係ないでしょ!



 そう思って話を聞いていたのだが、しょうもないことですぐ構ってもらおうとする小学生の弟くんに、つい優しく接してしまうという桐野さん、という彼女の新たな一面を知ってしまったことで、俺の桐野さんに対する気持ちはますます膨れ上がり、ついにはガチの大好きになってしまった。美人なうえに優しくて面倒見が良いなんて、桐野さんは女神か何かかな?きっと、小学2年生の弟くんもお姉ちゃんのことが大好きなのだろう。俺のライバルは弟!?


 …ちなみに、あの日をきっかけに、今では桐野さんとは放課後もメッセージアプリでやり取りをする仲だ。

 結果的に桐野さんとはかなり打ち解けることができたし、メッセージの端々では俺のことをちゃんと男子として扱ってくれていることも伝わってくるので、もしかしたら脈ありなのでは??と時々勘違いをしてしまいそうになる。

 しかし、実際のところそんなことはあり得ないだろう。俺は桐野さんにもう1歩近づきたいと思いながら、このままの関係に甘んじていた。告白で気まずくなるなんて絶対嫌だし、これが俺の妥協点だった。(ヘタレとも言う)



 だから、桐野さんとは学校ではあくまで友人として、会話するだけ。

 だが、たったそれだけでも、そんな俺を良く思わない連中もいるらしい。

 ここ数日は、俺が桐野さんに話しかけているときのクラスメイトの視線が痛い。

 俺はクラスカーストの位置付けで、彼女には話しかけてはいけない身分なのだろうか?


 …そういうことに疎いから、俺よくわかんないのよね!(すっとぼけ)




♢♢♢




 しかし、だ。

 折角ここまで仲良くなれたのに。

 橋澤さんと付き合うことになったら、桐野さんのことは諦めるしかないし、もしかしたら友人として仲良くし続けることも、難しくなってしまうかもしれない。


 『今の関係を壊したくない』という中途半端な妥協によって、桐野さんに告白しなかったことで、桐野さんへの未練が残ったまま、橋澤さんと付き合うことになっては、橋澤さんに申し訳ないし、俺としてもモヤモヤした気持ちが残ってしまう。



 やっぱ、振るべきだよな



 『美少女を振るなんて勿体ない』という気持ちがつい、湧いてしまう自分が嫌になる。

 が、自分の本当の気持ちにはやっぱ嘘はつけないぜ!

 俺には諦めない母の血も流れているんだからなあっ!


 それほどまでに、身の程知らずな俺は桐野さんに惚れてしまっているらしいことを再確認し、馬鹿だなあと思うのだが、それが俺だから仕方ない。



 さてさて、大分話が脱線していたが、そうこうしているうちに空き教室はもう目の前だ。

 好意を向けられるのは嬉しいけど、橋澤さんを今から振るのだと考えると、胸が痛い。全く、俺は罪な男だぜ!




 なんて考えながら、ドアを開けた俺だったが…







 あれれー?なんかおかしいぞー??


 橋澤さんの他に、いつも彼女と仲良くしているギャルの子がもう2人、付き添いでいらっしゃるじゃああーりませんかー!




 え、告白ってギャラリーいるのが常識ですか?

読んでくださりありがとうございました。

3話目は明日の朝7時を予定しています。

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