ラストフィリアの演目。
誰も知らないハッピーエンドの裏側で、断罪された悪の子どもが泣いている。
その叫び声は届かない、お祭り騒ぎの大団円。
皆が喜ぶ、笑顔が溢れる、正義は勝ったと拳を上げる。
誰もが望んだ結末を手に入れて、確定された道義の胴上げ。
これが正義だ、悪は滅んだ。
英雄が讃える、御満悦のヒーローショー。
全てが正義に満ちていく。
「それ以外」の人達を差し置いて。
誰か助けて……。
声が枯れても誰にも振り向いて貰えない。
どんなに泣いて縋っても、皆は英雄側に居たいんだろう?
正義と悪なら必ず正義が勝つよ、なんて戯言だ。
悪は滅びる運命なんだ。
勝手に決められた結末を浴びる側の気持ちなんて知らないだろ?
そうやって騒いで喜んで皆が幸せ。
大多数の正義の前に、たった一つの悪なんて跪いて無に還される。
誰かが泣いていた事なんて誰も知らない。
ハッピーエンドに付録は付かない。
小さな願いすら、大きな正義の前では踏み潰されたんだ。
どうして悪だと決め付けた?
なんで正義は強いと言える?
見えない誰かが決めた定義に弄ばれる。
もう悲しんだって死んだ人は還らない。
その正義が間違いだって主張した所で嘲笑われる。
それでも振り向いてくれていたなら……。
ただ生きていただけだった。
皆と同じように息をして空を見上げて星を数えた。
たったそれだけの日常を奪われる未来に取り残された。
正義の裏には悪があって、悪は倒さなければならない。
悪側に配置された人間の気持ちなんて誰にも理解されないんだ。
強い正義に押し潰されてたった一人の仲間は散った。
引かれた線を無くすには誰かが犠牲にならなきゃならない。
そんな道しか選べないくだらない世界だ。
それでも生を全うして生きていくしかないと言う。
誰も傷付かなくていいのなら、悪も正義も意味がない。
もう二度と誰かが泣かなくて済むように。
それでも繰り返されるなら、復讐を手に取るしかないのだろう。
辛くて泣いてそれで世界が変わるなら、どんなに楽な世界だろう
ハッピーエンドもデッドエンドも全て回収
白い雪が世界を白紙に戻すまで。
どうか……
次こそは笑って生きられるそんな人間になれますように。
作詞∶彩世
作曲∶彩世
vocal∶サクラ