図書委員は学園に行く
「お待たせ致しました。あら、珍しい。その子は人見知りで隠れる事が多いのに。」
どうぞ、と差し出されたカップを手に取り、戴きますとひとくち飲んだ。
程良い温かさにスッとする後味。ハーブでも使っているのだろうか。香りもとても良く美味しかった。
「さて、改めて自己紹介をしましょうか。私はエミーアと申します。この町では占いを生業にしております。貴方のお名前を聞いても宜しいかしら?」
「僕は、勉です。西条勉。中学生で図書委員をしてます。」
「ツトムですね。中学生や図書委員と言うのは何でしょうか?」
エミーアは何の事か分からないと言う風に首を傾げた。
僕も、何でしょうかと訊かれると説明しづらくもあるが、噛み砕いて話してみた。
「…成程、学生なのですね。この世界にも学園がありますので、先ずは学園で学ばれるのも良いかもしれません。」
元の世界に戻る術も分からず、がむしゃらに動くよりは良いだろう。
他にも不安な事ばかりだが話すうちに、学園に行ってみようと言う事になった。
幸いにも、これからお世話になる学園はこの町の長老が関わっているようで、スムーズに入学が出来そうだった。
ただ、制服や色々な手続きで1週間は掛かるそうなので、その間はエミーアの下に住まわせてもらう事にした。
順応し過ぎだろと思うだろうが、慌てた所で何が出来る訳でもない。僕は順応した。それがスキルと分かるのは、入学した後の話だ。
1週間後…
「この転移魔法陣で、学園まで行けるわ。何かあれば校長に頼んで戻って来る事も出来るから安心して。」
まるで母親のようにお世話してくれたエミーアに感謝しつつ、母がいればこんな感じだったのかなと頭をよぎると、泣けてきた。
「行ってきます。エミーア。本当にありがとう。クロも、またね。」
エミーアに抱かれた猫。クロは僕に撫でられると嬉しそうに目を細めた。
「じゃあ、行ってきます。」
僕はエミーアを背にし、転移魔法陣へと足を踏み入れた。
あっ、と後ろでエミーアの声がしたが振り向く間も無く、僕は学園に転移した。
ご想像通り、かな?