異世界転移の図書委員
チャラはお茶です。
「ん…いつの間にか寝てたのかな。」
微睡む頭を覚醒させるようにググッと伸びをする。
そうして辺りを見廻すと、見覚えの無い景色が視界に入ってきた。
「えーと…ここは何処ですかね…」
澄んだ空気の中、森の香りと木漏れ日が僕を包んでいる。
時折り、小鳥の囀りが聴こえてくるくらいで、誰もいないようだ。
「確か、まだ図書室に居たはずなんだけどな…」
思考が追い付かずホケ〜っとしていると、遠くから人らしき影が近付いてくるのが見えた。
近付くにつれ、ハッキリと全体像が分かる。
白い長髪に、スラリとしたモデル体型。特徴的なのは耳だ。
少し長く尖った耳。エルフ?まさかね。
その人は僕の側まで来ると、屈んで微笑んだ。
「運命の子」
僕は言われた意味が分からず、え?と聞き返した。
「聞きたい事は沢山あるでしょうけれど、今は私達の住処においでなさい。チャラを飲みながら、ゆっくり話しましょう。」
静かな落ち着いた声色で、僕は言われるままにその人の後について行った。
暫く歩くと、開けた場所に辿り着いた。そこは町のように家々が並び、奥にはお城の様な建物がそびえ建っていた。
どの建物も少し青み掛かった白色をしていて、周りの緑や木漏れ日が合わさって、聖域の様に見えた。
すれ違う人々もまた、少し尖った耳をしていたが、この町はそういう人種なんだろうと受け入れた。
どうやら奥のお城みたいな建物を目指しているようだ。
僕はお城を見上げながら歩いて行くと、
「此方ですよ。」
と、普通の民家っぽい方へ案内されたので、慌てて方向転換した。
「狭い所ですが、どうぞ。すぐチャラを注いで参ります。お掛けになってお待ち下さい。」
言い終わるとその人は奥の部屋に入って行ったので、僕は大人しく座って待っていた。
見知らぬ所へ来たと言うのに、案外落ち着いていると言う事を思いつつ、そっと忍び寄って来た猫を愛でている間に、なるようになるさと気楽に考えていた。
お城行かんのかい!