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やっぱり独占したい後輩ちゃん

 恍惚(こうこつ)とした表情で抱きしめてくる奈恵の背中をトントンとあやすように叩きながら時計を確認してそろそろ昼休みが終わることに気付く。


「奈恵、そろそろ戻ったほうがいいんじゃ」

「嫌です…次はさぼりましょう」

「無理」

「………むぅ」


 頬を膨らませて不満を主張する奈恵。

その可愛い抗議を無視しながら奈恵を膝から降ろす、奈恵は不満げなことを隠そうともせずに僕の腰をポカポカと叩く。


「次、進路とかのことについてなんだよ。もうすぐ三年だし、しっかりと考えないといけない」

「…先輩は、どうするつもりなんですか」

「さあ、今のところは進学はできそうにない」

「そう、ですか」


 奈恵は悲しそうな顔を一瞬で引っこめると、いつもの……といっても、僕の前では珍しい感情の起伏が読めない無表情になる。


 奈恵は無表情で普段は話しかけにくいと同級生には言われているらしいが、僕の前では何もない時こそ無表情だが、基本的には柔らかい。


「先輩は、進学が嫌なんですか?」

「嫌じゃないさ、ただ単に難しいだけなんだよ」

「難しい…って?」

「……弟妹の学費稼がないといけないから」

「立派、ですね」

「あと単純に進学してあいつらと離れたくない」

「それシスコンってやつじゃ……」

「否定はしない」


 廊下を歩きながら奈恵と雑談をする。

可愛い弟妹のためだ、自分自身は別に進学しなくてもいいと思ってる。極端な話、あいつらがちゃんと未来を視れるようにするのが僕の役目でもあるし、そのためにやりたいことを捨ててもいいと思っている。


「先輩は、自分を捨てすぎることがあるので。ちゃんと私が見ておかないと駄目ですね」

「…なんで今までのこと知ってるみたいに言うんだよ」

「だって、知ってますから。妹さんが進学するために志望校より学費が安いこの高校に入ったことも、弟さんが好きなことを続けられるようにバイト代でスポーツ用品を買ってあげていることも。それに、自分で言っているほど読書する時間がないことも」


 なんでこんなに知っているんだろうと思いながら、考えるのがめんどくさくなって奈恵の頭をくしゃくしゃと撫でる。


 奈恵は目を細めながらも嫌な顔はせずにむしろ手のひらに頭を押し付けて「もっと撫でて」と主張するようにぐりぐりしてくる。


「ありがとうな、奈恵。ちゃんと見ていてくれ」

「っ!!プロポーズですか!?プロポーズですよね!?」


 はしゃぐ奈恵から目を逸らし、スマホを開いて時刻を確認する。

なおさっきの答えは恥ずかしいので何も答えずに奈恵を放置することにしよう


「奈恵、そろそろ五限目だ。また後で」


 奈恵にそう告げて、足早に廊下を歩く、奈恵達一年生とは違う階にある二年生の教室近くまで来てからしゃがみこんで頭を抱える。


「…何やってんだよ。授業始まるぞ」

「…………今行く」


 どのくらいそうしていたのか、蓮に引っ張られて教室に入ると同時にチャイムが鳴り響いた。





――――――


「はい、また後で」


 おそらく聞こえていないが、それでも先輩に返事をしなければと思い、声を出す。

きっと先輩は気付いていないが、私はずっと前から先輩を知っている。先輩と同じ大学に行けなさそうなのはショックだけど、先輩と一緒にいられるのなら大丈夫だ。


それだけで頑張れるから。


 それにしても、さっきのはプロポーズととらえてしまって良いのだろうか、どっちでもいいけど先輩にそばにいていいと言われたのがとてつもなく嬉しい。つい顔がにやけてしまう。


「あー、遅かったじゃん。奈恵……何?また彼氏といいことあったの?」

「そんなところです」


 ポーカーフェイスのせいか話しかけてくれる人もいない中で何故かずっと仲良くしてくれるクラスメイトの質問に答えながらにやつきを抑えようと顔をぐりぐりと手で揉む。


「いいじゃん、笑ってる方が可愛いよ」

「…私がそういう顔を見せるのは、先輩だけでいいので」

「そういわずにさあ、貴重な奈恵の表情だよ?写真撮らせて」

「やめてください」


 そんなことをしているうちに、チャイムが鳴り響いて教師が教壇の上で教科書を広げ始める。

帰りは先輩にどうやって甘やかしてもらおうか、そんなことを考えながら私も教科書を広げた。

 ブックマークありがとうございます

……ヤンデレ要素少ないですよね、ごめんなさい。でもでも、ネジを外した時にやばくなる子が好みなんです許してください(言い訳)

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