先輩を食べたい後輩ちゃん
昼休み、部室へ入ると机の上に弁当箱があり、近くに座布団を敷いて奈恵が座っていた。
僕が隣に腰かけると奈恵が肩に頭をのせてくる。
「先輩、ご飯、食べましょ」
「ああ………で、何で膝の上に座るんだよ」
「?ここが好きだからです」
さも当然のように膝の上に座り僕を見上げてくる。
それに僕の心臓が少し跳ねたのを分かっているかどうかはわからないがそのまま弁当箱を開けずに僕に抱き着いて首筋に顔をうずめる
くすぐったさを覚えながらも奈恵が満足するまではされるがままにしていようと体を委ねる。
「先輩、先輩、先輩、せんぱーい♪」
僕は苦笑いしながら幸せそうな奈恵を撫でようとして奈恵の頭に手を置いたのと同時に僕の胸に顔をうずめたまま奈恵の動きが止まり、匂いを嗅いでいる。
「…奈恵?」
顔を上げた奈恵はひどく傷ついたような、絶望したかのような、冷たい目を向けてそのまま僕を押し倒した。
僕が抵抗せずに倒れたのを見て奈恵は『してやったり』という顔で薄く笑う。
「先輩、やっぱりだめみたいです。私が見てなくても他の女の子と喋らないでください、先輩に他の匂いが付くのはどうしても嫌です」
どうやらほかの女子の匂いがついていたらしい、今日は奈恵以外女子と話した覚えはないがそれを言わない方がいいと思ったので口を噤んで奈恵の話を聞く、今ものすごく寒気と恐怖を感じたが、気のせいであってほしい。うん。
「先輩は、私の匂いだけ付けていてください」
「あn――」
「私以外の匂いは嫌です、ずっとずっと私だけの匂いをつけてください」
「いや、だかr――」
「あ、ごめんなさい。押し倒したとき、痛かったですよね」
「あの違――」
「これからは、ちゃんと私だけの匂いを付けていてください」
僕は反論をあきらめた。
勘違いが加速する前に誤解を解いておこうと思っていたが、言わない方がいいと判断したついさっきの僕に恨みの念を送る。
その間にも奈恵は僕とさらにくっ付くべく顔を近づける、座っていた時のように自然と胸に顔をうずめる形になり、奈恵は額をぐりぐりと僕の胸に押し付けるように動く。
「先輩…ずっと、見てください」
「離さないで、愛してください」
「私だけに愛を注いで、私を満たしてください」
「奈恵以外に愛す対象はいないし、する気もない」
「…じゃあ、今回は許してあげます」
「ありがとう」
起き上がると奈恵は僕の腹を背もたれにして座る、耳が赤いのがちらりと見えて自然とほおが緩む。膝に座ったのは照れ顔を見せないためか、独占欲の表れか、どっちでも可愛いなと思いながら奈恵のその僕に比べたら小さい背中を抱きしめる。
奈恵は腕の中でピクっとはねた後、さらに耳が赤くなる。
少しおかしくなって片方の腕で奈恵の白髪を崩さないように撫でる
「先輩っ…いきなり、そうゆうのはずるい、です」
「奈恵が可愛すぎてつい」
「ナチュラルに言わないでください……!」
ぷいと顔を背ける奈恵を可愛がりながら奈恵の作ってくれた弁当の中身を口に運ぶ。
「ん、美味しい」
「よかったです…先輩♪」
奈恵が振り向き、口を開ける。食べさせて、ということなのだろうかと思い、僕の弁当箱の中身を箸で掴んで奈恵の口に入れる。
「…先輩の方が、料理、美味しいです」
「そうか?奈恵の方が美味しいと思うけど」
「先輩の料理は、私の好みに合いすぎています」
「じゃあ、明日から互いに作る?」
「!…いいですね、それ」
奈恵はそのままはにかんで残りを食べていく、自分の料理を好きな人が美味しそうに食べてくれるというのは不思議とこちらも嬉しくなる。
「「ごちそうさまでした」」
「「…お粗末さまでした」」
「…ふふ」
「はは…」
どちらも声が揃い、二人揃って笑う。
「考えてることは同じ…ですね」
「そうか?そんなにそろってないと思うけど」
「じゃあ、相手が食べているのを見ているときどんなこと考えていましたか?」
「ん…そりゃあ」
さっき奈恵に対して思ったことをそのまま口から言葉にして表す。
「「美味しそうに食べてくれて嬉しい」」
また二人そろって笑う。本当に考えていることは同じらしい。
奈恵が膝の上で体を回して至近距離で向き合う、それから蕩けるように笑い、抱き着いてくる
「どうした?奈恵」
僕が抱きしめ返しながら聞くと、奈恵は一回顔を上げてからまたにっ、とはにかんで、僕の首筋に嚙みつくような姿勢で柔らかい額を押し付ける。
「好きだな、首筋」
「えへへ…先輩がすぐ横に感じられて、私のものだっていう印をつけることができますから」
「……えっ印?」
「はい、印です」
奈恵が離れ、指で首の横をトントンと軽く叩く、僕のそこに何があるのかは見えないが奈恵が得意げに笑ったことから何となく察しが付く。
「まさか…?」
「ふふ、焦ちゃって可愛いですね。先輩」
クスクスと奈恵が笑う。
僕は苦笑しつつ奈恵の頭をポンポンと叩く
「言えばいつでも付けていいっての」
「いいんですか!?」
「いいよ、別に」
奈恵が少しおどおどしながらもう一度首筋に噛みつく。
僕は苦笑しながら特に抵抗せずに受け入れた
奈恵はぱあっ、と笑顔になり、何度も首筋に噛みつく。僕はくすぐったいやら少し恥ずかしいやらの気持ちに耐えながら奈恵が満足するまで首筋を差し出した。
さ、最後雑になってしまってませんかね…?何日かに分けて書いたのでクオリティが落ちていないか心配です…
ブックマークありがとうございます