後悔と後輩
「後悔と後輩って似てますよね」
「いきなりどうした」
授業が終わり、夕日に目を焼かれながら文化祭の用意……という名の執筆をしていると暇になったのか唐突に奈恵が話題を投げてくる。
「語呂が似てるので後輩を恋人にしたら後悔するのかなと」
「さらっと世の半分くらいのカップルに喧嘩を売るんじゃない」
んもうこの子は真顔でとんでもないことをたまに口走るんだからも~
驚きで思わずオネエになってしまったがとりあえず奈恵の話を黙って聞くことにしよう。
「まず結婚って人生の墓場って言うじゃないですか」
「せやな」
「つまり人間にとって結婚自体が後悔の対象なんですから語呂合わせすれば後輩彼女=後悔なのではと」
「酔ってる?」
「酔ってないです」
まあ言葉遊びとしては成立してると言えるかもしれないけども。
「うんまあ、僕は今のところ後悔してないから何でもいいけど」
「そういうことを口走る時点で先輩も大概ですね……まあ、後悔したところで手放すつもりは微塵もありませんが」
人のこと言えないだろ、とは思いながらも口に出さず印刷の設定を進める。
どうやら過去に同じように文化祭で本を作った先輩がいるらしく顧問からやり方は教えてもらえたし職員室のプリンターを使う許可も下りた。
その顧問は現在隣の空き教室で睡眠中である。
『馬に蹴られる趣味はない』とのことだ。
……まあ、部室に入った途端奈恵が睨みつけていたから仕方ないとは思う。
ついに男にすら邪魔者扱いを始めたのか、と思いながらもこうして作業を続けている。
「しかし、眩しいな。無駄に日当たりのいいところに部室をもらってしまった」
「そうですねぇ。これじゃこの時期は本を読みづらいです」
夕日が容赦なく目をさしてくるのでパソコンの光と合わせて目が疲れる。
サングラスでも買おうかとそれで作業している自分の姿を想像して、少し面白いなどと考えながら一通り設定を終えて伸びをすると視界が少し暗いことに気づく。
自覚はなかったが夜のとばりが下りる時間まで続けていただろうか、それなら奈恵に申し訳ないななどと思いながらパソコンを閉じようとして時間が大して進んでいないことを表示された時刻が伝えてくる。
ではなぜ暗いのだ、と窓に目をやろうとしてようやくそれに気づいた。
「……あ、やっと見てくれましたね。先輩」
微笑んだ奈恵と目が合う。
自分よりも少し高い場所、パソコンからこぶし三つくらい左に白い絹のような髪が空調に合わせて時折動きを見せていた。
その持ち主は体を少し僕の方へ向けなおし、座っている机の上から少し危ない姿勢で見下ろす。
「……スカートの中見えるぞ」
「大丈夫ですよ。中に履いてますので」
ほら、と奈恵がスカートを持ち上げ、明らかな白が見えた瞬間反射的に目を逸らす。
「「………………」」
気まずい沈黙。僕の反応で気が付いたのか隣で少し騒がしく音が聞こえた。
「……見ました?」
声が近い。目を閉じているから見えないがおそらく耳元まで近づいてきている。
ここでの迂闊な発言は命をなくしかねないので両手を上げて何も見ていないアピールをする。
うっすら見えた白いものについては墓場まで持っていく所存である。
「せ~ん~ぱ~い~?」
「何も見てない!何も見てないです!」
ぺしっ
……弱いしかわいいとはいえなんでぶたれたんですか???
目を開けて奈恵の方を見ればなぜかふくれっ面でジト目の奈恵がいた。
「先輩にならいいから見せたのに」
故意犯かい
月一とは何だったのでしょうか。
まああくまで目標なんであれなんですけど。
でもさすがに宣言した一回目くらいは守ると思うじゃん。
自分の怠惰さをなめていました。精進します。
そして名も知らぬ誰かさま。ブックマークありがとうございます。




