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微ヤンデレ後輩ちゃんは愛されたい!!  作者: 正軒


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30/30

ご飯と朝と義姉妹ちゃん

 けたたましい目覚まし音が鳴っているのが聞こえる。

 いつもはここから二度寝するところだけど、今日は誰かに揺すられて目を開かされた。


「…あさ。おきて」

「なえさん…?」


 二人そろって眠り眼を擦り、布団の上に並んで座る。

 何でここにいるんだっけ。と少し考えて、そういえば奈恵さんの家に泊まらせてもらったんだと思い出す。


「おはよぉ」

「おはよーございます」


 ふにゃふにゃしてる。

 二人とも朝が弱いみたい。一つ大きく伸びをして切り替える。

目を覚まして、立ち上がってちょっとストレッチ。

ちゃんと体が動くようになったら布団を片付け、着替えを鞄から取り出す。


「奈恵さん。おきれ…起きてる……」


 振り向いたら制服に着替えている奈恵さんがいた。


 わータイツはいてるところえっちだなあ。

 と思考停止するけどぶんぶんと頭を振って邪念を追い出す。

……私とお兄ちゃんって好み同じなのかな?まあ兄妹だしありえなくはないのかな???


「明佳さん?どうかしました?」


 タイツはいてるとこガン見してました。

と言えるわけもなく、なんでもないよーと適当に笑って目を逸らす。


 私も制服を着て、奈恵さんのほうを見ると私を待っているのかニュースサイト?をスマホで奈恵さんが眺めてた。


「ごめーん着替え時間かかった~」

「いえいえ。朝ごはんきっと用意されてますからたべましょ」


 心なしか足取りが軽い奈恵さんの後ろをついてリビングに向かう。

 リビングに入ると奈恵さんが言ったように朝食と思われるお皿にラップがかけられてて、慣れた手つきで奈恵さんがお味噌汁の入った鍋を火にかけ始めた。


「温めるのでちょっと待っててくださいね」

「うん…なんか手伝うことない?」

「……先輩から明佳さんを台所に立たせるなと言われているので」


 ですよね。

 なんとなく予想できた答えが返ってきたのでおとなしく椅子に座って奈恵さんを眺める。

……幸せそうな顔でお弁当箱にいろいろ詰めている。昨日何か作っていたけどこれだったのかな?


「あ、もしかしてお兄ちゃんのお弁当?」


 奈恵さんの方がピクリと跳ねる。わかりやすいなこの人。

 ちょっと顔を赤くした奈恵さんが恥ずかしそうに頷くので面白くなって口を開きかけて


「先輩と明佳さんの分です」


 今度は私が少し赤くなった。顔があつい。

 私にもお弁当用意してくれてるんだ。とちょっとうれしくなる。


「私もいいの?」

「ええ、一人も二人もあまり変わらないので」


 そういって慣れた手つきでお弁当箱を包んで渡される。

 ちょっと暖かくて、おいしそうな匂いがした。


「ありがと、お義姉ちゃん」





 二人そろって靴を履いて家を出る。

 いつもより早いけど、奈恵さんと登校するほうが楽しそうだからいいかな。


「忘れ物ないですか?」

「だいじょーぶ!」


 Vサインを作って玄関から外へ飛び込む。

 奈恵さんが鍵を閉めたのを確認して、隣に立つ。

奈恵さんは結構小柄で、お兄ちゃんと同じくらいの私と並ぶと頭一つくらい違う。膝に乗せたらジャストフィットしそう。


「それでね。お兄ちゃんが~」

「先輩が~」


 わかっていたけどまあお兄ちゃんの話題だよね。

とても分かりやすい共通の話題です。


 どのくらい経ったのかわかんないけど、たぶん十分くらい?

 お兄ちゃんの背中が見えた。

奈恵さんと目を合わせて一緒に走り出す。


「「おはよーございまーす!」」

「ぐえっ!??」


 お兄ちゃんの背中に二人でダイブ。歩道にお兄ちゃんが倒れた。


「朝から元気だな……」

「今日は明佳さんがいたので。ちょっとテンション高めです」


 二人が楽しそうに会話をはじめて、ちょっと話に入りづらくなる。

 楽しそうだな。なんか、二人とも私に向ける笑顔とは違う気がする。


 ちょっとモヤっとした。

 嫉妬とか、独占欲とか、そんな子供じみた感情。


 一緒にいれる時間が違うんだから、関係が違うから当たり前なのに。

 その愛していると伝えるような顔が。

 その蕩けているような甘い顔が。

 私に向けられないことが、ひどく妬ましい。

 お兄ちゃんだけじゃなくて、奈恵さんにも、同じようなことを思った。


 ……最低だ、私は。大好きな二人の一番は私じゃないけど、大好きな二人が想い合っている。

そんな喜ばしいことを、祝福できない。


 行き場のない嫉妬、自己嫌悪、思いつく限りの負の感情がどうしようもなくなって、逃げるように走り抜けようとして、足を動かそうとしたときに二人そろって振り向かれた。


「明佳?」

「明佳さん」


 お兄ちゃんはいつもと変わらないけど、奈恵さんの目には少しだけ、ほんの少しだけ、私に対する警戒心があるように感じた。


 ……気づかれているのかもしれない。

 特に奈恵さんは人の悪意に鋭いから、それを見透かされて嫌われるかもしれない。

 自分が嫌になって俯く。

この期に及んで怖い。悪いことをして怒られるのが怖い。今は、奈恵さんに嫌われるかもしれないから余計怖い。


 視界に白い手と、来年は私も着れるんだろうなと思っていた制服が映る。

 その手は、私の手を握った。


「明佳さん。」


 顔を上げる。

 奈恵さんの優しい笑顔が真っ先に目に飛び込んできてちょっと驚いた。


「少し、お話しましょうか」


 その笑顔がただ優しい天使なのか、死刑宣告なのか、今の私に見分けはつかなかった。

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