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好きな人に会いたい後輩ちゃん

 一時限目が終わり、僕は窓の外をひたすら眺めている。

 奴らリア充撲滅委員会に絡まれようが嫌がらせを受けようが無視を決め込んで冬特有の濃い青色をした空にひかれる飛行機雲を眺める。


「死ねやゴルァ!!」

「リア充がっ!」

「ウラァァァァァ!!!!」


 無視に耐えきれなくなったのか全員が飛び掛かってくる。とりあえず椅子を後ろに下げ、窓を開けると面白いくらい華麗に窓の外へ飛び出した。


「おいこら仲弥(なかや)!」

「ここ!」

「三階!」

「俺らじゃなけりゃ」

「死んでるぞ!!」


 珍しく孝一が「リア充爆発」以外の言葉を言うのに驚きながら窓枠にかけられている蓮の手を引き剥がそうとする。

 蓮の足に雅人が捕まり、その足に孝一が捕まり、その足に(ry…  なので蓮の手を引き剥がしてしまえば全員が落ちる。俺らじゃなきゃ死んでると言っていたがまずお前らじゃないとそんな危険なことしねえよ。と思いながら蓮の手を引き剥がした。


「舐めるなっ!」

「下ぁ!踏ん張れ!」

「四人は無理があるんですけどっ!?」


 ちなみに高身長の高校生×五人なので手を引き剥がす前から余裕で地面に足が付いていたりする。

もがくふりをしたのはあいつらなりの遊び心だろう、そう思いながら僕は窓を閉め鍵をかける。見ていたクラスメイトが明らかに引いていたが気にしたら負けだ。


 その後、まさかの人間梯子(にんげんばしご)の要領で五人とも降りたので打撲すらしなかったのは普通に驚いた…それと人間梯子は見てて楽しかった。





「先輩…あれ?」


「おら、可愛い彼女が呼んでるぞ」

「行けやリア充」

「リア充撲滅リア充撲滅」

「孝一いつものキャラに戻ってる…」

「いいから行ってこいや」

「アッハイ」


 物理的に背中を押されて(叩かれて?)奈恵の方へ向かう、何故か奈恵は目が笑っていない笑みを浮かべている。


「奈恵、どうした?」

「いえ、ただお話ししたいなーと思いまして」


 クスクス笑う奈恵にこちらも自然と笑いが零れる、とりあえず後ろからちょっかいをかけようとしてきた蓮には裏拳を叩きこむ。


「そういえば先輩」

「ん?どうした」

「ぎぶっ…ぎぶっ…すみせ、んでした」


 連の関節を極めながら奈恵の話に耳を傾ける。


「学園祭って何やるか決まりました?」

「あー…蓮、なんだった?」

「その前に…離せ…よ…」


 うちの学校は珍しく冬休み前…クリスマスに学園祭があるのだ。

 それで毎年告白スポットを作り出す部活(基本美術部)があるのでカップルができるとかできないとか…そんなのはどうだっていいが


「うちのクラスは…たい焼きやるら、し、い」

「そうか、ありがとう。蓮」


 そこまで知ったところで連を解放する。

 首に手を当てて荒い息を整えながら蓮はもう一度口を開いた。


「そういや文芸部ってなにすんの?」

「「………あっ」」


 奈恵と顔を見合わせて声を上げる。蓮が呆れたような顔をしながらため息をつき「いらない心配かもしれないが」と、前置きをして丁度近くにある自分の机からプリントを取り出す。


「ほら、これ今年の申請一覧。被ったら人数的に優先貰えないから気をつけろよ」

「…なんであるんだよ」

「俺実行委員だから」

「ありがとうございます。木戸先輩」

「おう、惚れてもいいぜ」

「それはないです」

「人の彼女に手を出すな、本の角で叩くぞ」

「ダメージの表現がわかりやすいなあ……」


 連は少しだけ遠い目をする。

 僕は取り出していた本を仕舞い、奈恵と何をするか相談する。


「二人でできるのって少ないよな」

「…古本市(ふるほんいち)はどうですか?」

「いいなそれ」

「じゃあきまりですね」

「蓮、古本市で」

「へいへい、どうせ終わったら二人で回るだろ?腹いせにピークの時間に店ねじ込むからな!」


 そんなことを言いながらも連の口元はわずかに上がっているので僕らがピークが終わって落ち着いた時にゆっくりと回ってこいという蓮なりの配慮(はいりょ)なのだろう。


 できた友人だな、と思いながら僕も少し笑って連にお礼を言う。


「ありがとな、蓮」

「……なんのことだか」


 連はそっぽを向いてプリントの「文芸部」と書かれている欄に営業時間と内容を書き入れる。

 その様子を見て奈恵はくすくすと笑い、僕はもう一度お礼を言った。


「いい人ですね」

「ああ、僕には勿体ないくらいできた友人だよ」

「楽しそうでよかったです」

「僕を何だと思ってるんだよ」

「ずっと将来のためだけに学校来てると思ってたので」

「…否定はしない、まあ、蓮は言ってみれば腐れ縁みたいな感じだからな」


 気付けば隣にいるのが当たり前になっていたくらいの腐れ縁、助けたし、助けられた。そんな関係だそう説明すると奈恵は少し不機嫌そうな顔をして…と言っても微細すぎてわかる人は少なそうだが、こちらを向いて聞いた。


「先輩と私、どっちが大事ですか?」

「奈恵」

「親友見捨てるのが早くねえか?」


 僕は即答すると、奈恵はわずかに顔を綻ばせる。

 蓮は文句を言っている声音だが顔は軽快に笑っており、なんだかんだでこいつリア充そこまで憎んでないだろと思った。

 ブックマークありがとうございます

 今週は何と二本書くことができたので新シリーズとしてそちらも投稿しております。それにしても恋愛小説は書いてて癒されます………

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