計画通りな後輩ちゃん
『まってろブラザーすぐ行く!』
「…持ってくるらしい」
「良かったです」
明佳が奈恵の忘れ物を届けに来てくれるしいので待とうとしたが奈恵に手を引かれて家に連れ込まれる。
「いや、外で待ってるからいいんだが」
「駄目です。風邪引いたらどうするんですか」
「気軽に男を家に上げるんじゃない」
「大丈夫です。既成事実が欲しいなら私から襲うので」
「何を口走ってるのかなあ!?」
「むしろ襲うので心の準備してくださいよ!!」
奈恵の親に聞かれなくて良かったと心の底から思う発言が次々と出てくる。
「奈恵ー?誰か来てるの?」
「あ、お母さん」
まずい、奈恵の母親に会話が聞かれていた可能性が出てきた。
「お久しぶりです…」
「あら仲弥君。送ってくれたの」
「まあ、はい。荷物だけ渡して帰り…」
「駄目です。上がっていってください」
帰らせてもらいたい。あの会話をした後なので今すぐにでも帰らせてもらいたい。
「まぁまぁ、上がって行って…………ちょっと聞きたいこともあるしね」
死刑宣告か?
断頭台に登る気持ちで玄関に上がる。
「……おじゃま、します」
奈恵に導かれながら廊下を歩き、部屋へ入れられる。
異性の家であること、彼女の母親の前であること、そして先ほどのまずい会話を聞かれたかもしれないという心配のトリプルパンチで居心地が悪い。
「どうしたんですか先輩?顔色が悪いですよ」
いつもの察しの良さというか、僕の行動を完全に理解しているような立ち回りは休暇を取ったらしい。
頼むから今すぐ帰ってきてくれ。そして僕を帰してくれと無意味な願いを心中で吐き出して現実から目を背ける。
「ところで奈恵、一つ聞きたいのだけれど」
「?」
神様、普段は信仰してませんがあの会話が聞かれてなければ僕はあなたを信仰します。
祠でも寺でも神社でも教会でも造ります。だから聞かれてないことにしてください。
「さっき襲うのがどうとか言ってたけど、そんな関係なの?」
神は死んだ。
「そうなの。手を出してくれないから私から行こうかなって」
奈恵さん?なに口走ってるのこの子???
「いいじゃない。しばらく買い物行ってくるわね」
沙織さん?
まってください。そんなこと言わずに奈恵を止めてください。
そう思って口を開こうとしたが、すでに目の前から沙織さんはいなくなっていた。
早くない?娘にそんな簡単に手を出す許可出しちゃダメじゃない?
少なくとも僕が明佳に同じことを言われたら文句の一つは言う自信がある。
「というわけで先輩。覚悟してくださいね」
「待ってくれ!勢いでやるのはまずい!」
天井のシミとか数えてる場合じゃない。何とか抜け出さなければ。
と、思うのだが先に動いた奈恵に手首を掴まれて床に押し倒される。
初めてはもっと大切にしたいんですけど!!!!
…そうだ。明佳が奈恵の忘れ物届けに来るはずだ。
早く来て明佳!!兄がいろいろとまずい状況だから早く来て!!!
その願いが届いたのかどうかはしらないが、奈恵に手首を掴まれたところでインターフォンの音が響いた。
『奈恵さーん。忘れ物だよー』
我が妹ながらタイミングがいいな。と褒めてあげたいところだ。
更新が久しぶりすぎてキャラ崩壊してないか心配です。
名前も知らぬ誰か様。ブックマークありがとうございます。




