懐かれてしまった後輩ちゃん
「お義姉ちゃん」
「お義姉ちゃんー」
「お義姉ちゃん〜」
「………随分と懐かれたな」
「はい………」
奈恵を姉として呼び始めた明佳は何かのタガが外れたように奈恵にくっつき始めた。
きっと年の近い同性なのもあるが、年上で遠慮なく接して良い相手と認識したのが大きいのだろう。
……だとしても、少しくっつきすぎな気がするが。
「…………義姉さん」
全員が、奈恵にべったべっただった明佳すら目を丸くして声の主に目を向ける。
「やっぱなし。何もないです。見ないでください」
「…………………ありかもです」
「やめてください」
珍しく奈恵の目が輝いている。
じりじりと距離を詰め無言で「もう一度言え」と加苅に圧をかけているのが傍観している僕でもわかる。
壁まで追い詰められ、下がる場所がなくなった加苅が僕に視線を向けるが気づかないふりをして茶を啜る。
「わかった!わかりました!………義姉さん」
「へへ…えへへ…」
奈恵は余程嬉しかったのかかつてないくらいいい笑顔をしている。
もう身内以外に見せてはいけないレベルの油断しきった顔で二人の頭を撫で、くっつきに行く明佳と困惑しながらされるがままの加苅。
「…僕が義兄で奈恵が実姉なんじゃないか?」
思わず口走ってしまった。
「…まあそれでも良いよ」
「全然ありです」
「どっちでも大して変わらんだろ」
「思ってた反応と違うなぁ~?」
「「「結局家族だし」」」
それを言われると何も言えない。
……
うん。何も言い返せない。
………
じゃあいいかぁ…
「ところで昼飯どうする?」
「ハンバーガー」
「先輩と同じの」
「カレー」
「じゃあハンバーガー買ってくる」
「俺ってもしかして幽霊?」
「カレーパンでいいだろお前は」
「やったぜ」
時計を見ると昼時が近いので聞いてみるが、姉弟のくせに食の好みが合わない二人にいつものごとく回答される。
とりあえず好きそうなの買ってこよう。そう考えて家を出た。
「寒い。冬と夏だけ人を殺しに来てる…いや、昨日は暖かかった…?あれ?」
昨日はそうでもなかったのにいきなり気温が上がったり下がったりと不安定すぎて困る。
この世界がシュミレーションゲームなら寒暖差で人がすぐ死にそうだななどと下らないことを考えながら有名チェーンのハンバーガーショップへと向かう。
「んで何で待ち時間にお前と話さなきゃならんのだ」
「親友にその言い草は無いだろ~?」
まあ高校生だし休日だし昼飯時だしでいる可能性もそこそこあったわけだが、ばったりと昼飯を食いに来てた蓮達五人組に遭遇した。
二日連続で関わるのは疲れるが、まあ会った以上は仕方ない。
「…人を見るなり呼びつけてなんだよ。奢ってくれるのか」
「おめえが一人なら奢れたけどな。四人分は財布が悲しくなる」
「高校生なんだから金は気にせずカッコつけてくれよ」
「ひでぇ」
互いに笑いながら自分でも中々にひどいこと言っている自覚はある。まあ軽口を言い合える仲ということは素晴らしい。
そんなくだらないやり取りをしている間に呼び出されたので適当に会話を切り上げてレジへ向かう。
「じゃ、できたみたいだし帰るわ」
「達者でなー」
「なんだそれ。明日嫌でも顔合わせるだろうが」
「そうだったな…学校嫌だー!」
蓮のありきたりな嘆きを聞き流して店を出る。
「ただいまー…なにしてんだ」
家に入ると奈恵が二つの死体を前にガッツポーズをしていた。
ものすごくデジャブを感じる光景である。
「お義姉ちゃんにフルボッコにされた」
「勝てぬ」
「ぶい…です」
「そうか。昼飯買ってきたから食え」
楽しくやっているようで何よりだ。
この後、リベンジと言わんばかりに奈恵に挑み僕も含め三つの死体が出来上がった。




