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ゆらりゆれて、夢の中

 唐突だが、先輩も私も俗に言うモテる側の人間だ。

 私の容姿は整ってるし、手入れも努力も欠かしていない。

それが先輩一人に振り向いてもらうためという点を除けば十分に美人だ。


 先輩はいつも落ち着いていて、基本的に他人をぞんざいに扱うことがない。

いじめられっ子にすら平気で近づくし、なんならそのまま助けてしまう。

正義の味方、というほどではないが表裏のない善人というのが先輩を一言で表すのに一番適していると思う。

 私のアピールに何年も気付かなかった朴念仁でなければこんな胸が潰れるような思いもしなかったのかもしれないが…それも含めて好きになってしまったのだから仕方ない。

完全に恋は盲目という言葉を体現している。


 私は今、そんな恋して止まない先輩に長年の夢をかなえてもらっている。


「満足していただけてますか、お嬢様」

「…はい、とても」


 目の前には執事服に身を包み、私を膝枕で甘やかす先輩がいた。

 ことの発端は私が普段読んでる小説のコスプレを先輩にさせて楽しんでただけなのだが、執事服の先輩を見た途端になぜか「溶けるまで甘やかされたい…」と呟いてしまった。


 それから、まあ…呟きを先輩に聞かれて心臓に悪い甘やかしを受けさせられている状態だ。

 手の甲にキスをされながら微笑まれ、抱きしめることを要求したら耳元で甘言を囁かれ、挙句の果てには少し疲れているのを見抜かれて膝枕の上で頭を撫でながら寝かしつけられている。


 同じ家に住んでいるのだから当たり前だが、目の前の腹に顔をこすりつければ私と同じ匂いがする。

呼吸によって規則的に揺れるのが心地よく、私はそのまま睡魔に身を任せ、先輩の膝の上で眠った。



 目を開けると、長年の夢はほんとに夢だった。

 そもそも私と先輩は同棲してないし私も先輩も執事服持ってないし私は甘やかされたいなら真っ先に抱き着く。

 それに先輩はあんなに演技っぽいイケメンムーブはしない。それは解釈違いだ。


「奈恵、立てるか?」

「はい…すみません」


 寝起きの目をこすりながら先輩に手を引かれ、電車を降りる。

 改札を通って外に出れば昼休憩中なのか近くの飲食店に行列ができかけているのが見える。


「昼ごはんどうする?食べたいのあるか?」

「……先輩のが食べたいです」

「今から帰って作ると少し遅くなるけど大丈夫か?」


 まだぼんやりしている頭で意味をかみ砕き、首を縦に振る。

 私の返事を待っていた先輩が「わかった」と言って家の方向へ足を進め、手を繋ぎながら少し後ろをついていく。


 夢のことが恥ずかしいし、そこで感じたことは本物なので余計に顔が熱くて先輩に黙って付いて行くことしかできない。

 ふと、出会ってすぐのころにもこんなことがあったなと思いだした。

怖がりな私は、安心して縋れる先輩に出会ってからはずっと近くにいた。何も予定がない日には先輩を私の家まで送迎させてしまったこともあるくらいべったりと。

 先輩が高校に入る少し前まではずっと一緒にいた。


 私の恋は本物なのかと、時々不安になることがある。

 いじめられてたのもあってか、私は父と祖父、そして先輩と蓮さんぐらいしか男の人とかかわりがない。

 だから自分の好意は恋ではなく友愛、親愛なのではないかと不安になる。

 不安だから告白する勇気もない。

 不安だから自信を持って先輩が好きと言えない。

 でも、それでも先輩に感じる気持ちは、他の人には感じない胸が焦げ付くような思いだったから。

 私を肯定してくれた先輩が私を好きになってくれたから。

 私は、この燃えるような思いを恋と呼ぶ。


「せんぱい」

「ん?」

 上手く息ができない

「大好きです」


 そうやって頬を染めてそっぽを向くあなたが好き。

 私の気持ちを余すことなく受け止めてくれる

 私のことを正面から好きって言ってくれる

 私のヒーロー。

 今は、まだ言っても困らせるだけの言葉を飲み込む。

だから代わりに、別の言葉をこの人に贈る。

 なんども、なんども。

 大好きです。と

 名前も知らない誰か様。ブックマーク。ありがとうございます。

一応ここで一区切りです。

あ、べつに完結とかそういう話ではないです。

 私が書きたいこと書き切ってないのでまだ続きます。今のペースだと少なくとも私が人生の節目を迎えるまでは完結しそうにないです。

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