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気の毒に思う後輩ちゃん

 台所で朝食を作っていると、着替えてきたらしい奈恵が覗き込むようにして扉の隙間から顔を覗かせる。

 顔は真っ赤で、僕に視線を合わせようとしない。さっきからかったことで余計に恥ずかしがらせてしまったのかもしれない。


「先輩…すぐからかうのやめて下さい」

「…からかってない。奈恵の可愛いところを口にしてるだけ」

「それが恥ずかしいんですっ!」


 奈恵は涙目になりながらも僕の隣に立って料理を始める。


「別に、手伝わなくてもいいよ」

「私がしたいんです」


 客に料理させるのは悪いと思ったが、これまでの経験からして奈恵はこうなると言っても聞かないので諦めて奈恵にエプロンを手渡す。

奈恵は小さく「ありがとう、ございます」と言ってからエプロンを付け、ヘアゴムで髪をまとめる。


「先輩、勝手に始めておいてなんですが…何作ってるんですか?」

「筑前煮と卵焼き」

「はい、では私もいくつか作りますね」


 奈恵はふんっ、と効果音が付きそうな顔で目をキラつかせながら包丁を手にし、そばに置いてある人参を切り始める。








「…なんか量多いね」

「そうだな、いいから食おうぜ。俺腹減ってる」


 起きてきた明佳と加苅がテーブルの上を見ていつもよりも量が多い朝食に少し困惑気味だが期待しているような声を上げる。


 そのまま席に座って食べようとするのでいったん止めさせて二人を洗面所の方へ向かせる。


「先に手洗ってこい」

「「はーい」」


 寝起きとは思えない元気な声を上げ、洗面所に向かう二人を見て台所から出てきた奈恵は微笑ましそうに、開け放たれた扉を見ている。


「どうかしたか?」

「いえ…こういうのいいなー、って」


 奈恵の目には羨望とも、憧れともいえるような感情が渦巻いている。奈恵の家庭は両親ともに出張が多かったり出勤が早かったりするので、休日以外まともに話すこともできないからだろう。


「いいのか、今日。親と過ごせたのに」


 気付けば、そんなことを口にしていた。

 奈恵はその言葉に驚いたように瞬きを何度かすると、僕にくっついているときのような甘いはにかみを浮かべて


「先輩といる時間が、一番楽しいですから」


 心から嬉しそうに笑う奈恵の頭を、無意識のうちに撫でようと手を伸ばした。


「はいはい、そうやってすぐいちゃつかないの」

「兄貴、やめてくれ。こっちが恥ずい」


 戻ってきた明佳と加苅の姿を見て手が止まり、そのまま二人に押されるように椅子に座る。


「奈恵さん、家族は大切にしなよ。きっかけなんて無くても、大切なものほどすぐ消えちゃうから」

「………説得力が違いますね、貴方たちが言うと」


 さっきの会話を聞いていたのか、加苅が発した言葉に奈恵は苦笑しながら答える。


「ま、お兄ちゃんは消えないだろうけど」


 朗らかに笑いながら明佳は同意を求めるように奈恵の方を見て、それに気づいた奈恵は肯定するかのように微笑みを浮かべて頷く。


「……どうせ…私が………」


 明佳は顔を下に向けると小さく呟き、不思議そうな顔をする奈恵を見ると、それをまるで無かったかのように笑顔を張り付けて朝食を食べ進める。


「明佳、」

「どうかした?」

「…何でもない」

「?変なの」


 明佳は心底不思議そうな顔を浮かべ、加苅の皿から筑前煮をとる。


「おい」

「?」

「『?』じゃねえよ!自分でとれ!?」

「いーじゃん、減るもんじゃないし」

「減るんだよ!俺の飯は減るんだよ!」

「……(・д・)チッ」

「兄貴、この人どうにかして」

「その前に謎の顔芸が気になる」


 鍋の爆発と同じく文字通り目を点にするのはどうしているのか小一時間聞きたいが、加苅と明佳が互いの筑前煮をとり合う無意味な喧嘩を始めたので溜息をついて、台所から鍋ごと筑前煮を机に移す。


「今更だけど、二人とも大丈夫か?」

「……あ」

「…やべ」


 時計を一目見ると、二人はさっきまでのやり取りが嘘のように高速で朝食を食べ終え、玄関に置いてある鞄をとり、全力疾走で玄関を飛び出す。


「いったいなにが…?」


 座っている奈恵が箸を止め、玄関の方を見て固まる。


「部活と仕事?」

「……え、仕事、ですか?」

「うん。まあ、部活の延長みたいな感じらしいけど」

「何ですか?」

「軽音部でバンド組んでて今日ライブらしいんだよね」

「…すごいですね、明佳さん」

「やりたくても実行できる人ってあんま多くないからな、その点に関しては尊敬する」


 明佳は別に駄目人間ではない、というかむしろ僕なんかより数倍立派な人間である。

料理以外の家事は自分でほとんどできるし、勉強の呑み込みも早い、後、何と言ってもモテる。彼氏はいないらしいが。


 そんな話をすると、奈恵がじとーっとした目を向けてくる。


「どうかしたか?」

「いえ…何となく告白を受けない理由がわかってしまって」

「何なんだ?」

「……本人の精神衛生上、言わない方がいいですね、これは」


 奈恵は今にもため息をつきそうな表情で箸を進め始めた。





ーどっかのライブハウスー


「へっくち」

「…それ、くしゃみなの?」

「うん…」

「アニメかな?」

「お兄ちゃんにも言われた」

「三人とも、いいから調整しよ、本番近いから」

「「「はーい」」」

 ブックマーク、ありがとうございます


~ノリで書く!きんきょーほーこく~

 今回からたまに雑談していこうと思います。というよりも、聞いて欲しい話が多いだけですね、はい。

 スプライトたやばすぎて私の六花じゃ対抗できねえ…(ひとひらに墓穴撃たないで…死んじゃう)

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