一緒に寝たい後輩ちゃん
夕食を食べ終え、加苅と二人でリモコンの取り合いをしていると廊下側の扉が開いてタオルをかぶった奈恵と明佳が出てきた。
「お風呂どうぞー」
「先、いただきました」
奈恵の肌は風呂上がりのためか仄かに赤くなっており、眠いのかふにゃりとした焦点の合わない潤んだ瞳に自然と視線が惹きつけられる。
見つめられていることに気付いたのか奈恵は被っていたタオルで自分の顔を隠した。
それを見ていた加苅がからかうように僕の腹を小突いてきたので頭を軽くはたいた。
「なにすんだよ」
「こっちのセリフだ」
痛がっているような動きをする加苅をもう一度はたくと、加苅は笑いながら僕の背中をバシバシと叩く
「そういや風呂、加苅入るか?」
「俺最後でいいよ、見たい番組始まっちゃったし」
「うぃ」
加苅は最後に入るようなので僕は自分の着替えを持って洗面所へと向かった。
軽くシャワーを浴びて、シャンプーで髪を洗う。
もう一度シャワーを浴びて泡を流してから湯船につかり、目を閉じるといつもとは違う花のようなにおいがすることに気付いた。
何となく奈恵のシャンプーの匂いに似ている気がして、ついさっきまで風呂に入っていた奈恵を想像してしまう。
「……何やってんだ」
湯船の端に頭を叩きつけて想像を振り払う。
結局完全にそれを追い払うのに時間を使い、完全にのぼせ上ってからリビングに向かった。
「そういや、奈恵どこで寝よう…ありゃ、もう寝そうだな」
リビングに入り、加苅が居なくなったソファに奈恵を見つけ、覗き込むと、うとうとと目が閉じたり開いたりを繰り返している。
「せんぱい…?」
「ん…ここで寝るか?できれば辞めてほしいけど」
「…だっこ、して」
奈恵を両手を僕の方へ向けて「んー」と呻きながら見つめてくる。
どうしようかと戸惑っていると、奈恵がふらふらと立ち上がり、僕にもたれかかる。そして、離れる気はないと言わんばかりにぎゅう、と僕の体に手を回すした。
少し逡巡した後、奈恵の体を抱きかかえお望み通り奈恵を抱っこする。
「んー…」
奈恵が落ちないように少し強く抱きかかえると、奈恵は心地よさそうに目を細めて僕の首に手を回す。
子供みたいだ、と明佳や加苅の小さい時を思い出しながら奈恵を抱えて歩き出す。
「奈恵、空いてる部屋布団かベッドかどっちがいい?」
「せんぱい、のへやがいい…」
伸びきった声で脱力しながら奈恵は僕の部屋を希望した。「駄目」といって別の部屋に連れて行こうとすると「や」と言いながら降りてくれないので僕が別の部屋で寝ることにして奈恵を自分の部屋まで運ぶ。
「はい。おやすみ、奈恵」
「…はい」
自分の布団に奈恵を寝かせ、立ち上がり部屋から出ていこうとすると裾が引っ張られ、どうしたのかと振り返ると、奈恵が僕を見上げており、裾を掴んでいるのとは逆の手で自分の隣、布団の空いているスペースをポンポンと叩いている。
一緒に寝ろ、と言うことなのだろうが、固まってしまった僕が何もしないでいると、奈恵に引っ張られ、布団に引きずり込まれたと思ったら頭を抱きかかえられる。
「奈恵、これじゃ寝られない」
「や…せんぱいも、いっしょがいいの」
奈恵はわがままを言う子供のように僕を抱きかかえて離さない。
奈恵の花のような香りと、柔らかい感触のせいで理性がごりごりと削られていく。なんとか腕から抜け出すと、奈恵が無警戒に僕を潤んだ瞳で眺めているのが目に入る。
「どうしろって言うんだよ…」
奈恵は「はなれないで…」と言いながら僕の服の裾を離そうとしない。少しずつ力を増していく欲に理性が負けてしまい、奈恵を抱きしめた。
そのまま抱き枕のようにして奈恵の頭を撫でながら目を閉じる。
奈恵は僕の胸に顔をうずめてぐりぐりと頭を動かしているらしく、胸のあたりで何かがもぞもぞと動く感覚が伝わってくる。
「…おやすみ」
心地よい一定の寝息と人肌の温度に触れていると、すぐに意識は落ちていった。
ブックマーク、評価ありがとうございます。
寝ぼけて甘えてくる子って可愛い…可愛いですよね?(圧)