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『聖女』と『勇者』の国民へのお披露目は無事行われた。
晩餐会の方は宰相殿達に丸投げしたので知らん。
そもそも私は部外者だ!
とりあえず、国民へのお披露目だけはなんとか行うことができた。
『聖女』の不機嫌の理由が自分専用だと思っていたお菓子を他人に振舞われたことだというので、すでに国王・王妃主催の茶会で『聖女様より教えていただいた異世界の珍しい食べ物』としてすでに広まっているという事実を国王から告げるように進言。
国王の容姿が渋いイケてるおじ様なので『聖女様』の守備範囲内であるからだ。
この時、『聖女様』をヨイショすることを忘れてはいけないという忠告もしておいた。
ヨイショするのは王の側近や王妃の侍女たちにやらせれば効果抜群だろうと軽い気持ちで伝えたのだが、本当に効果は抜群だったらしい。
『聖女様』は手のひらを返したように『勇者』に詫びを入れたとか。
王の側近と王妃の侍女がどのようにヨイショしたのか知らないけど、あの『聖女様』があっさりと『勇者』に謝罪したというのだからものすごく優秀なのでは!?
え?あの『聖女様』が頭を下げた!?と話を聞いたときは驚きすぎて手に持っていたマグカップを落とすところだったよ。
改めて会談の席を設け、『勇者』のお供たちにも改めて異世界のお菓子を振舞ったとか……
まあ、あれこれ自慢げに話していたそうだが、国際問題にまで発展せずに宰相殿と外交官達はほっと胸をなでおろしていたとかなんとか……
ちなみに『勇者』のお供たちにはこっそりと「食べすぎには注意。聖女の体型を参考に」と伝えたそうだ。
最初はなんのことだと首を傾げた『勇者』とそのお供たちだったが、改めて『聖女様』を見て察したそうだ。
座っている時はゴテゴテなドレスのせいかわかりづらかったが、立ってみて実感したそうだ。
『聖女様』縦ではなく横に広がっていることに。
これはアーシャさん情報。
私は直接『聖女様』を見ていないからね。
アーシャさん曰く、召喚された当時から1.5~2倍になっているそうだ。
思わず関取を想像してしまったがあながち間違っていなかったと、国民へのお披露目で理解した。
元の世界ではやたらと『ダイエット』を口にしていたが、こちらに来てからは食っちゃ寝生活に近いのでそりゃ肥えるわな。
いまだに『聖女』としてのお仕事はされていないらしい。
取り巻き王子曰く『この地にいてくれるだけでいいのです』だそうだ。
実際、召喚されてから徐々に魔物の数が減っているらしく強く仕事しろとは言えなくなっているそうだ。
***
お披露目も終わったので私はお役御免となり、日常生活が元に戻った。
そうそう『ステータス』の件は魔術師団長が『勇者様』のお付きの人(驚いたことにハーレム要員以外の人もいた)から色々と聞いてなぜ自分でステータスを見ると言うことを今までしようと思わなかったのかと凹んでいた。
基本、この国では特定年齢(大抵が魔力量が安定する10歳前後)の時に神殿で魔力検査をして終わりだそうだ。
魔力検査の時に魔力量が多いと魔術師団への入団資格が付与され、入団試験を受ける受けないは本人次第だそうだ。
あ、もちろん私は速攻でやり方を教えてもらった。
神殿で見たときより、スキルが増えていたけど大まかな部分は変わっていなかった。
このステータス、道具を介さない限り他人からは見えないらしい。
魔術師団長はその道具のことを聞いてさらに落ち込んでいた。
なんでもすでに冒険者ギルドに設置されているらしい。
魔術師団長は冒険者ギルドに登録していないので知らなかったとのこと。
ちなみに神殿にある道具も冒険者ギルドにあるのと同じものだって。
しかもこのステータスを見る道具、大量生産されているのでかなり安いらしい。
うん、修理代だとかなんだとかで給料から天引きされていたんだけど……ぼったくられていた!
後日、宰相様経由で清算させていただきます!
それから、念願の他国へ行ける『通行証』が発行されました!
ワーイ!パチパチパチ!
国発行の『通行証』を手に喜んでいたら同僚に
「冒険者ギルドに冒険者登録すれば格安でどの国にもフリーパスな通行証が付いてくるぞ」
と言われた時のあの虚しさだけは多分一生忘れないと思う。
しかも発行手数料の金額が国発行の方が倍以上高かった。
『通行証』て国だけじゃなくて冒険者ギルドでも発行できたのか!
よくよく調べてみたら国発行の通行証は基本的に貴族にしか発行されない。
そして国王が世代交代したら作り替えないといけないとのこと。
冒険者ギルドの通行証は一度発行すれば一生モノだとか(紛失しない限り)
しかも、冒険者ギルト発行の通行証は冒険者レベル(こちらは魔術師と違って実力検査がある)が高ければ高いほど各国の入国審査が簡単になる。
ちなみに国発行の通行証の場合、面倒くさい書類を大量に提出しなければならないらしい。
速攻、冒険者ギルドに登録したのは言うまでもない。
それに魔術師団としても副業OKらしく、一般魔術師は全員冒険者ギルドに登録していた。
なんで誰も教えてくれなかったのよ~と喚いたが誰かが教えているもんだと思ったと全員に言われた。
うん、この世界の事もう一度勉強しなおそう。
この世界の一般常識というものが全く身についていないことが分かったからね。
え?今更?
いいのよ。一応田舎から出てきたってことになっているからね!
ということで、週末にアーシャさんに頼んでこの世界の常識を教えてもらうことにした。
報酬は魔術師団(主に一般魔術師)が作成している魔石。
うん、勇者様に渡したあの魔石と同じものを格安で購入させてほしいということだった。
ちょっとまて……
勇者様に魔石を渡したことをなぜ知っているの!?と問い質したら
「え?勇者様から教えていただきました。キリ様のお名前を出したらあっさりと」
だと!?勇者は馬鹿なのか!?
誰にも教えるなって言ってあったのに~!!
まだ販売レベルに達していないといえば、モニターになると言い出した……
それ、報酬になってないとぼそっと言ったら
「私なら勇者様よりもより詳細のレポートを提出できますが?しかも即日に」
と満面の笑みで言われた。
うん、もうアーシャさんには逆立ちしても敵わないな。
報酬は別のものにして魔石のレポートをお願いすることにした。
魔術師団長に報告して、魔術師団からの正式な依頼にしてもらった。
レポートの内容によって報酬を払うって形でね。
のちに彼女のレポートのお陰で改良に改良を重ねた魔石は魔力が少ない平民にも広く知れ渡るようになる。
そこからいろいろな魔道具が生まれるのだが……それはまだまだ未来の話。
すみません。
しばらく更新が途絶えます。
ストックしていた数話が文字化け起こしちゃった。
原因は不明
一から書き直しています。(*T^T)っ【PC】