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テンプレてんこ盛りになる予定です。
はじめまして。
同僚(激仲悪)といきなり異世界に飛ばされた一般人です。
名は井成霧子と申します。
親しい人達は『キリ』と呼びます。
が、そう呼ぶのはほんの一握り。
なぜか『ナル』と呼ばれることが多いです。
理由は不明ですが、不便はしていないので問題ないです。
高校卒業後、少々名のある会社に勤めておりました。
結婚を前提にお付き合いをしていた人もいました。
ええ、『いました』過去形です。
両家への挨拶も終わり、結婚式の日取りも会場も決まり招待状を送る段階になって破局しました。
破局理由は今回一緒に異世界に飛ばされた同僚(激仲悪)に寝取られたからです。
ええ、ええ。
テンプレっしょ?
招待状の送り先の最終確認をプランナーの方や両家の両親と最終確認して帰る時に同僚(激仲悪)が突然現れ、喚き散らしたのですよ。
「彼が本当に愛しているのはこの私よ!この女が私から彼を奪ったの!」と。
ちなみに同僚(激仲悪)は私より4つ年上で、高校卒業後4年間ふらふらしていたあげく世間体を気にした親戚(社長)のコネで入社したにも関わらず何もできない能無し娘と上司・同僚たちに言われてどの部署からもお荷物扱いされているが本人は気づいていない困ったちゃんです。
社長の親族ということで強く言えないのが原因なんだろうけどね。
ちなみに社長に進言した人たちはことごとく地方に飛ばされるか退職しているので次第に誰も何も言えなくなったんですよね。
面倒毎はご免だと思った人事部長が『受付にでも座らせておけ。外面だけはいいのだから』と創業初の受付嬢に就任させたほどだ。
彼とは中学時代の同級生だったとか。
高卒の私と同期入社なのですが、何かと(彼女が自分で)いろいろと比較し、自分が人(主に私)より劣っていることが許せないというか絶対に認めないので何かと絡まれ苦労した。
最初の頃は相手の方が(一応)年上だから抵抗せずにいたのだが、仕事を押し付けるくせに自分の功績にするわ、自分が犯したミスを他人のせいにするわで誰もが認める不仲になったが、相手はそれに気づかず絡んでくる。
仕事に支障をきたし始めた事に気づいた上司達の暗躍により一時期、彼女を本社から隔離(スキルアップ研修と言う名の地方勤務)されていたので平穏だったのだが…………
社長の鶴の一声であっという間に本社に戻された。
(この時に『受付係』という部署ができた)
たった数か月で平穏が崩れ、多くの人が『orz』となったのだった。
私と関わっていない間は他の人とトラブルを頻繁に起こしていたらしい。
簡単に言えば、恋人がいる男を寝とりまくっていたというわけである。
プライベートな事なので会社側としても介入できずにいた。
そして、私が結婚間近という話を聞き付けて…………今回の騒動である。
いきなりの修羅場(一応そう言っておく)にプランナーさんの顔が引きつっていました。
後日、平謝りをしました。私が。
何人かの結婚間近の知り合いを紹介させていただきました。
ええ、ちょっとした罪滅ぼしです。
うちの両親はこの修羅場(別名茶番劇)に大激怒。
そりゃ、そうでしょう。
うち(地方ではそこそこの資産家)に婿入り予定の男が結婚前に愛人作っていたようなものですから。
ちなみに私は知って……教えてもらっていましたよ?
ええ、ええ。
親切なお姉様方(先輩と呼ぶよりもお姉様と呼びたくなる方達)がわざわざ密会場所などを事細やかに教えてくださいましたからね。
密会場所は私が普段足を踏み入れない場所と時間帯というのが計画的よね。
それに時々、嘘の出張や接待が増えていましたからね。
同じ会社に勤めていて、しかも私の配属部署(総務)を知っていたらつけない嘘ばかりだから「そろそろ潮時かな」と思うようにもなっていましたしね。
彼への愛情?そんなもんお姉様方から浮気の目撃話を聞いた時から徐々に減っていきましたよ。
でも、私の結婚を泣いて喜んでくれた祖父母や両親の笑顔を思い出すとなかなか切り出せなかったんですよね。
周りが結婚ラッシュで焦っていたというのもあるけど……
ああ、二人の社内密会(R18指定含む)は私一人では覗いていませんよ。
彼の上司(既婚者)と一緒でした。たまたま偶然一緒になっただけですけどね。
まさか本当に会社の資料庫(出入りがほとんどない古い資料庫)で逢引していたとわね。(お姉様方や男性の先輩方からの情報……どうやってキャッチしたんだろうかは不明)
彼の上司は社内での密会現場(R18指定)をしっかりスマフォに録画(後日上層部に提出する予定の証拠だそうだ)しつつも呆れながら『結婚は早急に取りやめたほうがいいね』と助言を頂きましたが、修羅場(あえて修羅場と言おう)の前日の事だったので対処できませんでした。
もっと早くに証拠集めしておけばよかったと思います。
いや、ほらいろいろと準備とかで忙しかったからなかなか証拠集めが……はい、ただの言い訳です。
後日、式当日でなくてよかったと友人に呟いたら「浮気の気配に気づいた時点で証拠集めてさっさと別れろ」と怒られました。
友人たちに膝を突き詰められて延々と2時間説教をくらいました。
結婚話はその場で破談になりました。
浮気を始めたのが半年前らしいですが知ったこっちゃないです。
結婚準備は1年以上前から行っていましたからね。
会社の上司や同僚、友人達も知っていることです。
うちの両親は嫌味ついでに
「招待状を送る前に発覚して良かった。多少(娘の名に)傷はついたが仕方ない。どうでしょう、そちらのお嬢さんは息子さんの子を宿しているというではありませんか。このまま新婦の名前を変えて式を行っては?」
と提案したのだ。もちろん費用は相手が全額負担で。
妊娠の有無は自己申告なので本当に妊娠していたのかはわからない。
ただ、同僚(激仲悪)の出で立ち(ヒールの高い靴を履き、お腹を締め付けるような服を着ていた)から嘘だろうとは予想している(これは私の両親も同意見だった)
私の両親の提案に即座に同僚(激仲悪)は飛びつき、プランナーさんにマシンガントークをかましていた。
プランナーさんはマシンガントークをキレイに聞き流していたようだが。
そのスルースキルぜひ取得したいと思ったね。
相手の両親は
「とんでもない!(資産家の)お嬢様との式だからここまで話を詰めたのです。愚息がその女と一緒になるというのなら我々は息子と縁を切ります。式を挙げたいというのなら自分たちで一からプランを立て直しなさい。援助は一切しないからな!」
と息子さんに絶縁状を叩きつけたのでした。
当の息子さん(私の元婚約者)はご両親の言葉に慌てていましたが、最終的には私よりも同僚(激仲悪)の手を取ったのです。
確かめもせずに「腹の子を無視できない」と言って。
まあ、堂々と浮気を白状したわけですよ。
私達だけではなく、この日は個室が満室だったため、招待状の確認だけで1時間もかからないとのことで開放的なフロアで打ち合わせをしていたので、他のお客さんのいる前でした!
あの時の周りからの好奇心旺盛な視線や憐れむような視線はつらかった。
この修羅場は翌日にはあっという間に会社関係者や友人に広まりました。
いえね、本当に偶然なんだが、たまたま同じ会社の人(顔見知り程度)が式場の下見に来ていたり(会社と取引がある式場の為、格安で利用できるから)、彼が担当していた取引先の会社の方がご友人や親せきの式に参加されていたそうで……ほんと、あっという間に広がりました。
その後のことは……もちろんテンプレです。
私は憐みの目で見られ、彼と同僚(激仲悪)は周囲から白い目で見られたのでした。
修羅場から3か月後。
私は出社早々に上司と共に社長室に向かいました。
最後の挨拶をするためです。
辞表を提出した時は上司たちは引き止めてくれたのですが、あの人達とこれ以上同じ空間にいたくないという私の意見を尊重してくださり、引継ぎ等の関係で3カ月の猶予をもっての退職が決まったのでした。
社長への挨拶を終え、自分の部署に戻る途中で、同僚(激仲悪)に絡まれ、運悪く階段を踏み外した時、まばゆい光と共に私は異世界に放り込まれました。
うん、ファンタジー小説のテンプレです。
放り込まれた異世界で同僚(激仲悪)は見た目だけは美しかったので『聖女』と呼ばれもてなされています。
私?
なぜか牢屋にぶち込まれ、食事もまずい水だけで数日間放置されてましたよ?
たまたま持っていた(出社後、自分の部署に寄らずに社長室に直行したため持っていた)カバンの中に水(なぜか2リットル)と食べ物が入っていたから助かりました。
食べ物は通勤途中でお姉様方から頂いた差し入れです。
婚約破棄後、少しゲッソリとしてしまった私を心配してくださったのですよ。
お姉様方もあの同僚(激仲悪)に男を奪われた過去があったそうです。
お姉様方はあの同僚(激仲悪)と小学校からずっと一緒だったとか……
ちなみにお姉様方は元彼(奪われた彼)よりも上のランクの旦那様をゲットできたそうです。
旦那様の友人(もちろん独身)を紹介してくれる約束をしていたのですが……もう無理ですかね。
数日目(多分2~3日)の朝、神官長とか宰相とか名乗るおじ様たち数名が慌てて私を見に来て死にかけていた(実際はただ空腹を紛らわせるために寝ていた)私を救助してくれたのです。
神官長と名乗ったおじ様は床に額を擦り付けて
「申し訳ございません。聖女様をこのような目に会わせましたのは私の息子たちです。いかようにも処分を……」
と涙ながらに私がなぜ牢屋に放り込まれたのかを説明してくれました。
神官長曰く。
今この世界は『魔王』率いる魔族の脅威にさらされている。
武に長けた者が幾度どなく魔王や魔族が住まう魔国に攻め入るも返り討ちにあい、さらなる脅威にさらされているという。
魔族がばら撒いている瘴気のせいで作物が育たなくなり、辺境では魔物が暴れまくっているという。
あー、うん。
ここでまたテンプレがきましたね。
これはあれですよ。
この世界のモノでは魔王たちには立ち向かえない。
だから異世界から勇者ないし聖女を召喚しよう!ってやつですよ。
でもって、今回召喚されたのが女だから『聖女』
しかも見た目だけが美しいだけのあの同僚(激仲悪)こそが『聖女』だとあの場にいた人たちの中で最高位にいる王子がいったものだからあの同僚(以下略)は『聖女』としてまつられているそうだ。
しかし、彼女が『聖女』の認定を受けても何も起こらない。
むしろ彼女に構う王子たち(神官長の息子含む)のせいで国庫が激しく傾き始めたという。
たった数日で、である。
たった数日であの女は国の財産を浪費したという。
どんな贅沢をすれば国を傾けるほどの金を使えるんだ!?
もともと少なかったのか!?
そして誰も止めなかったのか!!
この数日間、あの女はただ男を侍らせて豪遊していただけだという。
何度か神殿より出向いた使者から魔王対策の話をされても無視しているとか。
強く言えば『私には無理です~』と涙を浮かべて王子達に縋っているとか。
『聖女』の行動に頭を抱えていた神官長はあの召喚時にもう一人いた事を部下から聞いたという。
なぜ今まで黙っていたのか!と怒鳴りつけるも気を失っていた私を王子付の騎士が抱えていったから丁重にもてなされていると思っていたらしい。
しかし、数日たっても私のことに関する情報が流れてこないことを不審に思ったその部下(神官)は気になって私を抱えていた騎士を捕まえて事情を聴きだし(箝口令を引かれていたらしい)、私が牢屋に放り込まれたまま放置されていることを知り、上司に報告したという事だ。
神官長は宰相に連絡を取り、すぐさま私のもとに来たというわけである。
二人が私のもとに来た時、私はぐっすりと寝ていた。
それが死んでいるように見えたらしくかなり慌てて運びだし治療をさせたとか。
医師から『ただ眠っている』といわれてもなかなか信じなかったという。
なんせ部屋に運び込まれてから2日間ずーっと寝ていたらしいからね。
どこでも寝れる自分の神経の図太さに驚いたわ。
ちなみに牢屋に入れられたのはあの女が私の悪口を王子達に聞かせ(もちろん全て嘘の話である)、視界に入らないようにしてほしいと涙ながらに懇願したから王子が即座に命令したんだとさ。
どこまで自分至上主義なんだあの女は!
「……で?私にどうしろと?」
「……『聖女』として、」
「断固お断りします」
最後までいわせずにお断りしますよ。
「すでに『聖女』のお披露目は済んでいると聞いています。いまさら『聖女』は違う人でしたと言ってどれだけの人が信じるのですか。今更私の方が本物の『聖女』だといっても誰も信じやしません。そもそもどうやって私を『聖女』だと判断しているのですか!ただ位の高い人が『この人は聖女だ』と言えば『聖女』になるんじゃないの!?あの女のように!この数日間であの女はこの国の上層部の男を誑し込んで『聖女』だと認めさせたんでしょ?国が認めたならあの女が死ぬまであの女を『聖女』として扱いなさいよ。あの女のしもべになった者達の個人資産からでもお金出させれば?」
途中で口調が変わってしまったが致し方ないと思って許して欲しい。
怒りのボルテージがぐんぐん上がってしまったのだから。
「ですが……」
「異世界から無理やり誘拐してきて、『あなたはこの世界を救う神の御使いです。どうかこの世界をお救いください』ってふざけているの!?なんの縁もゆかりもない世界を無償で救えって?親、友人たちと無理やり引き離され、知り合いが一人もいないこの世界で!?しかも真っ先に私をふざけた理由で牢屋にぶち込んで放置していた国のために!?まあ、牢屋におトイレ(しかも水洗だったよ!)があったのは助かったけど」
ふと窓の外を見ると空は眩しいくらいに青かった。
うん、キラキラ光って見えるよ。
どれくらいの時間沈黙が流れただろうか。
「ねえ、今更聞くけど、私は元の世界に戻れないの?」
「……はい。召喚術は一方通行と言われています」
「…………そう、ならば私の今後を決めなければね」
もうこうなったら腹をくくるしかないのかもしれないわね。
「……なら、せい」
「『聖女』としての生き方以外で」
キッパリと告げると神官長は項垂れた。
いい年したおっさんらしいがなかなか可愛いと思ってしまったのは見た目が年齢よりも若いからだろうか。
「そういえば、なんで私、あなたたちと普通に会話できているの?」
「多分、召喚魔法に含まれる術の一つかと」
「ふーん、でも話せたり、文字を読めたりはするけど書けないみたいね」
「は?」
今まで黙って神官長と私のやり取りを見ていた宰相さんが驚きの表情を浮かべている。
「サイドテーブルの上にある本は読めるんだけど、この世界の文字は多分書けないわ」
医療術師という人が作った薬を飲んだおかげか、腹が満たされたおかげかそこそこ体力は回復している。
が、ベッドから出ると部屋付のメイドさん(侍女さん?)が慌てて「まだお休みください」とベッドに押し込まれているのである。
退屈しのぎに本を持ってきてくれたんだけど、チョイスがベタ甘の恋愛モノだったのはなぜでしょうね。
「そうね、元の世界に戻れないというのならこの世界の事を教えて」
少々、胸焼けがする恋愛小説を読んでいたので気分転換をしたいのだ。
それに、この世界のことを知らなければこれからのことを決められないのも事実だからね。
ジャンルはしばらくの間は『その他』になるかと……
ファンタジーメインになるか異世界恋愛(恋愛要素あるのか?)になるのかは彼女たち次第……
月一で更新できればと思います。