双子伝説の始まり。
なぜこうなった…?満面の笑みで猛スピードハイハイで逃走してる弟のリックを捕まえようと必死に追走する俺。その後ろから鬼の形相で追走して来るメイドさんと兵士さん、さらに母親のクレハは体力が尽きリタイヤ状態。
こうなったのは誰のせいでもない。きっと、こうなる運命だったんだ…
魔法のある世界では避けて通れない… ハイ!私です!私が暇過ぎる日々の中で創造神様から授かった創造スキルで身体強化とか物理耐性の魔法を創りました!
もうすぐ、こっちの世界に来て1年。ハイハイしたり掴まり立ちの練習とかしてると、あちこちぶつけるんですよ。防御力が激低だから痛いんです…
そして、ある日の昼下がり皆でリビングにて談笑してる時に床でハイハイしてるリックに魔法の練習がてら身体強化と物理耐性を使ったらリックがポワーッと光って双子の絆から気づいたのか俺の方を見てニヤっと笑った次の瞬間には猛スピードでハイハイして逃走し始めたのだ!
まさかの行動に驚いた俺も自身に身体強化と物理耐性を使って皆にバレる事を恐れニックの捕獲に向かったのだ!
突然の出来事にリビングに居た母親や兄と姉、もちろんメイド達もフリーズ状態。ちなみに父親と執事は街へ、お出かけ中です。
「奥様…ラック様とニック様が…」
「何が起きたのでしょうか…?」
「お母様…何だったのですか今のは…?」
「立派に…育って…るのよね…?」
「母上…そう言う事じゃない様な…」
「さすが坊っちゃまです〜♪も〜あんなにハイハイが上手だなんて〜♪」
1人だけ天然メイドが喜んで拍手してる横で正気に戻ったメイド長が
「何を呑気な事を言ってるのですか!早くラック様とニック様を追いかけるのです!早く〜〜〜!」
「「「かしこまりました〜!」」」
(オイ待てニック!頼むから落ち着け!こっち見て笑ってんじゃね〜よ!)
ラックが追いかけて来るのが嬉しかったのかニックはウキャ〜っと笑い、さらにテンションupで屋敷内を逃走し始めた!
(ウキャ〜じゃね〜よ!何だよその満面の笑みは!追いかけっこじゃないから止まってくれ〜!)
止まれと言っても発する言葉は所詮1歳に満たない赤ちゃん。ダァ〜ダァ〜とかアウアウと虚しく響くだけ。
ラックは魔法を使った事がバレる事がヤバいと必死。ニックは大好きなラックが追いかけて来るのが嬉しくハイテンション。母親とメイド達は尋常ではない速度でハイハイする双子に追いつこうと必死。
ラックの努力も虚しく、この後2時間もニックは逃走し続けた。そしてメイド長の指示で呼ばれた兵士達20人とメイド達に包囲され魔法の効果が切れた双子は確保された。
「奥様!無事にラック様とニック様を捕獲…お連れしました!」
「ありがとうマゼラン。ごめんなさいね〜騎士隊にまで迷惑をかけちゃって。」
「迷惑だなんてとんでもありません!しかし何があったのですか?あの動きは、とても赤ちゃんとは思えない動きでございましたが…」
「申し訳ありませんマゼラン様。私達メイドだけでは追いつくのは無理で…貴重な訓練の時間を潰してしまいまして。」
「いやいやメイド長!あの早さは仕方ありません!現に我々も右往左往してましたから!それにこちらも良い訓練になりましたので、お気になさらないでください!」
「そう言って頂けると幸いです。」
「けど本当に何だったのでしょうね?ラックもニックも…今は疲れて寝ちゃってるし。身体には異常はなさそうね!レリックが帰ったら聞いてみるわ。」
「では奥様!我々は訓練場へ戻りますので失礼いたします!」
「奥様。私達も御屋敷の片付けへ参りますので失礼致します。」
「ありがとう皆。私もラックとニックを寝室で寝かして来るわ。」
その後、語り継がれる爆走ハイハイ事件を始まりにラックとニックは数多くの伝説という名の事件を起こしていくのだった。
そして父親のレリックと執事のワットが帰宅し。夕食後にレリックの執務室でクレハが今日の出来事を報告した。その場にはマゼランも同席していた。
「へ〜、そんな事があったの。しかし凄いね!兵士長のマゼランも入れて兵士20人とメイド達で2時間以上も逃げ回ったってことでしょ?僕も見たかったな〜!森でボワの被害報告が出たから楽しそうだから行ったけど失敗したな〜!」
「レリック様…本当に大変だったんですぞ!まだボワを2匹相手にしてる方が、どれだけよかったか!」
「しかし旦那様。ラック様とニック様が光に包まれたと言うのが気になりますな〜。」
「そ〜なのよね〜。フワ〜っと光に包まれたニックが急に動き出したと思ってビックリしてたら今度はラックが光に包まれて追いかけだしたんだもん。あれって…」
「そうか…(まさかあの歳で身体強化の魔法を使った?それはそれで将来楽しみだけど…まさかね?)とりあえず身体には異常も無いなら大丈夫でしょ?」
「そ〜ね。今後はメイド長のマーラや他のメイドさん達にも気よつけて見てもらう様に言っとくわ。マゼランも同じ様な事があったらヨロシクね。」
「もちろんです奥様!他の兵士達にも伝えておきますので!」
「じゃ〜夜も遅いし今日はこれくらいにしよう!」
これが後に暴走双子対策隊が作られる事になるとは、まだ誰も思っていなかった。