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田の中の道
田んぼに囲まれた道を歩き、蛙の鳴く声を聞く
それが一つの幸せだった
ビル街の夜景も綺麗で
湖面に沈む夕日
高原の夜の星
どれも美しく大好きで
そして一番好きなのは
初夏の夜
普通の田んぼに映る月
それを見ながら蛙の鳴く声を聞くこと
愛した人に思いが届かず
酒に溺れた日々に心を慰めたのは
田んぼで鳴く蛙の声だった
だけれど田んぼは駐車場になった
人が住む住宅地になった
人は歳をとる
ずっとあると思っていた場所も変わる
あの田んぼはもはや無い
けれど今夜
町に重なる田んぼを見る
幻の蛙の鳴く声を聞く
失われたけれど心からは消えない
田の中の道




