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うたをうたう
線路の下をくぐる道の先
カラオケボックスがあった
コンテナを利用した部屋
カラオケの機械に100円玉を入れて歌った高校生の頃
歌のように恋ができると思っていた
学校の行き帰り
自転車をこぎながら歌った
歌のようではないけれど
毎朝すれ違う女の子を好きになった
最後まで会釈をし合うだけだった
長く続く川沿いの道
ある時は歩き
またある時は自転車で走った
アルバイトの帰りにはやはり歌を歌いながら移動した
蛍が飛ぶ夜もあった
一度だけ
好きだった先輩と川沿いの道を並んで歩いた
夏の夜
横で歌う声を聞きながら
この夜が明けなければいいと思った
寒い夜
線路沿いの道を歩く
ひとりで歌を歌いながら