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知らない町
日本海しか知らなかったから
その町で見た穏やかな海が不思議だった
桜の花が四月上旬に咲いていたのも
なんだか別の世界に来たようで
着ていた冬の外套が周りから浮いていた
会いたい人に会いに行った
多分無駄とわかっていた
知らない町から見える山には雪がなくて
自分がここでも異物だと感じた
遠く旅した達成感はなく
会えない予感だけがした
城跡を二人で歩いた
少し歩調を緩めて
並んで歩いた
知らない町が少し好きになった
今はよく知る町から出ることもあまりなく
旅に耐えうる体もない
それでも疲れている時まれに
独りで知らない町を歩いているような気がする




