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水辺へ
辛いことがあると
自転車で峠を越えて琵琶湖を見に行った
蝉丸がいたという場所の前を通り
春にも夏にも秋にも冬にも行った
湖畔に座り
ぼんやりと湖を眺めた
琵琶湖に初めてたどり着いた時
海かと思った
あまり見えない目には対岸はかすみ
悩んでいたことをしばらく忘れた
愛した人が会えない人になって
深夜、千曲川に架かる橋の上で歌った
酒を飲み、歌い、また酒を飲んだ
巷で流行りの失恋ソングは別れを歌う
友達止まりにはそれは遠い幸せ
だから流行らぬ歌を歌う
川風はごうごうと吹き
橋の下には暗い川
遠く町の灯りがきらめいていた
暗い河面を見下ろして
暗い歌に慰められた
何かあると水辺を求めるのは何故だろうか
わからないまま、川を眺める
二十あたりで、一度区切りをつけようかなと思っています。




