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第2話 今出来る事の確認。

日々は順調に過ぎていく。


今のハーシィーは赤ん坊だ。

頭の中身は死んだ時…11歳になるかならないかくらいの知識を持つといっても、喋れないし歩けないのでは出来る事も限られる。

赤ん坊が出来る事と言えば、寝る事泣く事。

それは赤ん坊になってしまったハーシィーだって同じだ。


だからこそ。

自由に動けないハーシィーが今出来る事をと、思い出せる限りで過去読んだ本にある事を試していた。

もうすでにおぼろげな記憶になりつつもあるが、まだ思い出せるものを思い起こして。


最初に生み出し屋敷中が大騒ぎとなってしまった光の魔法。

想定外だった為に対処も出来なかった。

いや、魔法が使えないと諦めていたのだから、対処もなにもない。


はふぅ、と息を吐き出したハーシィーは身の内を意識する。


魔法を使う源となるのは、自身の内に流れる魔力だという。大気中には魔素と呼ばれるモノが漂い、魔素を取り込む事で己が魔力とするのだ。

そして魔力を使って魔法を成す。

体内に取り込める魔素の量は個人個人で違い、魔素を魔力に変換する上での効率も違う。

魔法といってもこれも千差万別。使える各属性で初級中級上級とあり、威力が違うし、攻撃系のものや防御、補助的なものまで様々。

これらを制御し、ある程度まで自身の適性のある属性が使える様になれば一人前、と言われている。


過去では才が無いと断じられていたハーシィーだが、今は違う。

きちんと解るのだ。

目をつむると見えてくる。体内を巡る魔力が。

それを取り出し、イメージする。


次に目を開けた時。


「たぅっ!」


ハーシィーの周りには六つの球体が浮かんでいた。


赤い球体は、火。轟々と燃え盛る。

青い球体は、水。ちゃぷちゃぷと音を立てて揺れ動いている。

球体、というにはいささか歪であるが、茶色のゴツゴツしたものは土の塊。

そして緑の球体は、そよ風をイメージして生み出したもの。球体の中で色づいた風が踊っている。

ぴかぴか瞬いているのは光。最初の頃よりも安定してまるで星が瞬いているかのよう。

真っ黒に染まった球体は闇だ。

この球体、実は空間を操りそれぞれの属性を閉じ込めているのである。


つまり、この時点でハーシィーは八つの属性の内、七つを使える事になる。

試してみましょう。

そう思ってやってみたら出来てしまった。


さらにさらに。

空間属性で一番知名度があり使われているであろうアイテムボックス。

何もない本当にまっさらの果てのない部屋を意識してみたら作ってしまえたし、物をしまう事も出来てしまった。少し遠くに置いてあった水差しを意識してアイテムボックスにしまい、元の場所へ取り出す事も出来てしまったのだ。

頭の中に水差しがしまわれている事がアナウンスされ、本に書いてあった事と同じだった。

まぁ初めは鞄をイメージするとやりやすいとは書いてあったのだが、鞄よりもよりたくさんの物をしまえたら便利かしら、と部屋をイメージしたハーシィー。


ここまでくれば、もう疑い様がなく、確信してしまう。


ハーシィーは寝かされているベビーベッドから見える窓にとまっていた小鳥に向けて魔法を使った。

時間よとまれ、と。

結果は成功。

ハーシィーは全属性を使う事が出来たのである。


つまり。やはりあの時に魔法を行使したのは自分自身なのだろう、とハーシィーは確信したのだった。


それからハーシィーはこうして魔法を使う日々を送っている。

とりあえずまずは慣れなければ、と思い出せるだけ家の中でも使用して大丈夫だろう魔法を使っている。

しかしやはり赤ん坊の身体では起きている事も辛い。

すぐに眠気に襲われる。

生み出していた球体を消し、今は無理は出来ないと眠りに身を任せ、夢の世界へ旅立つハーシィー。


だから彼女は気付けない。


いや、気付けるはずもない。

過去にすべてを否定され諦め、ただただ鬱々と本を眺める日々だった彼女が。


ハーシィーの元々の魔力量だけでも、他人と比べれば膨大だという事を。

球体にしてそれを六つ。割る事無く精密に制御し浮かべる事が出来るという事がどれ程優れている事なのか。声は気合の掛け声のようだが、それだけで魔法が発動する事がどれ程高度な事なのか。

赤ん坊だからこそ、魔力が枯渇した事で眠気となって襲っている事を。


本には、魔力が枯渇するまで使用する事で、魔力量が上がる事が書かれている。


故に、ハーシィーの魔力量は現在進行形で膨れ上がっている事を。


ハーシィー自身は知る由もなかった。


どれだけ規格外となったのかをハーシィー自身が自覚するのはこれからさらに先の事となる。



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