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第18話 子爵家七女ルルナ=レイアム。


彼女の胸は高鳴っていた。

ようやくようやくようやく、待ち焦がれていた時間がやってくるのだ。



あの人を見かけたのは学園だった。とてもとても素敵な人。

あの人が彼女にとっての運命の相手だと彼女は信じて疑わなかった。


学園での彼女の役目は顔を売る事に加えて人脈作りだった。家の駒、として役立てという事である。育ててもらったという思いはある。一応何不自由なく育てられた。

彼女の父親は子爵という立場である。貴族であるがその立場を利用し悪事に加担している事は知っている。というよりも悪いとも思っていないのだろう。被害にあうのは自分よりも下の者達ばかりなのだから。

それに何か言うつもりはない。

そのおかげで子爵家の懐は潤い、彼女は、彼女の兄弟達もだが、生かされているのだ。

もちろん恨みだって買っているだろう。だがそれは知らぬふりをする。

彼女はそんな風に生きて来た。


そんな中であの人に出会った。

貴族の、辺境伯の子息という立場であるけれども誰にでも気さくに話しかける人に。老若男女、身分に係わらず。だからそれこそ色々な人々に愛されている人。

まぶしかった。

あんな人の妻になれればと思わなくはなかった。

あの人の隣にいられる人はきっと幸せにしてもらえるのだろうと彼女は思っていた。

けれども彼女とあの人では身分が違うし、貴族として属している派閥も違う。

政略結婚が貴族としては当たり前だとしても、彼女があの人の妻になりたいと思うだけでは駄目なのだ。何か辺境伯家が彼女を娶りたいと思う様な何かが無ければ。

父にも話をそれとなくしてみたが、流石に辺境伯家に手を伸ばす事を良しとはしなかった。いつかはと思っているようではあったが今ではないと言う。


そして結局あの人との接点もこれといってなく、あの人は学園を卒業してしまった。

その後数年して彼女も無事卒業し、彼女は家の駒として、何人かの貴族の子息や令嬢と仲良くはなったけれども、あの人以上に惹かれる人には出会う事は出来なかった。子爵家の七女である彼女に良い縁談があるはずもなく、進んで婚約や結婚をしようという者もおらず彼女はそれで良いと思っていた。というよりもどこかの金持ちの老齢貴族などに嫁がされるのであれば婚約や結婚などはしたくない。

彼女の姉達はどこかのお邸に働きに家を出たか、家の駒として同じ派閥の爵位が上の貴族へ嫁いでいった。

「貴方も早くしないと、お父様に手を出されるわよ」

姉の一人が家を出る際にそう言っていた事は彼女にとって恐怖だった。父親の食指がもしかしたら血の分けた子供にすら伸びる可能性がある事に。

だから早く家から出なければと思っていた。


そんな折、風の噂で、あの人が結婚したと彼女は聞いた。

しかも相手は貴族でもなんでもない、一介の冒険者の女。それ以上の情報は出てこない。

その時の彼女の気持ちは、ドロドロと気持ち悪いくらいに何かが蠢いていた。嫉妬、憎悪、とにかく認めたくない感情ばかり。

まだ貴族の女であれば良かった。

どうして、と彼女は思う。


それからまた数年経ち。


ある日、辺境伯家のメイド募集が出されていると、とあるお茶会に参加した折に聞く。

どこから仕入れてくるのか噂好きの令嬢達の話では奥方の体調が優れず、支える人材が必要で今回の募集をかけているのでは、と。他にももし奥方が亡くなってしまった時には、もしかしたら、いや、亡くならなくても、奥方を献身的に支えている姿にもしかしたら目に止めてもらえるかもしれないなど。


そんな話に。

彼女は。


そうね、と。

私以外にだれがあの人を支えられるの?と、自然とそう思い込んだ。


彼女は父に強請った。辺境伯家へ働きに行きたい、と。

父は言った。今が好機だ、と。

お前の甲斐甲斐しい姿を辺境伯へ見せて歓心を買え、と。上手くいけば、いや、お前ほどの見目良い娘なら愛人、そう、もしかしたら後妻にだってすえられるかもしれないと。


王城に行儀見習いに出ていた事も、その後侯爵家へメイドとして働いていた事もある。

彼女の元には採用通知がやってきた。



そして今日。

彼女の目の前には辺境伯家の門。

執事長が彼女達にこれからの事を説明をしている。採用されたのは彼女を含めて六人。

貴族が三人に平民が三人。

そのうちの男爵家の男は彼女も見た事のある男だった。同じ派閥の、確か貧しくて侯爵家へ泣きつき、なんとか首を繋いでいるとか言っていただろうか、その三男だ。長男と次男は家に残され、三男以下は侯爵家へ預かりとされたはずだ。これも噂好きの令嬢から仕入れた話しではあるが。

一体何の為にそんな男がいるのか。

考えても解るはずもなく、彼女は考えるのを止めた。

執事長の話では、これから邸へと入り、まずは辺境伯一家へと挨拶をするとの事だった。


ようやく会える。

彼女はただ、会える、とそれだけの思いを秘め胸の高鳴りを止められない。


門が開けられ、執事長が一歩中へ。

平民の三人が中へと入り、年嵩のメイドが次に入り、そして、男爵家の三男と、彼女が入った時だった。


モォーーーーーーーー!!!!!


邸中に響く大音量で、牛の鳴き声が轟いたのは。



今年初の投稿となります。

今回の話は色々難産でしたが、今年も楽しんで頂けるようなお話を書いていきたいと思っていますのでまた投稿した際には読んで頂けますと幸いです。


昨年は閲覧・ブクマ・評価・感想と頂き有難う御座います。

それら一つ一つがとても励みになりました!


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