第13話 つい勢いづいてしまうもの。
「じゃあ、これからの授業の方針というか、どういう事をしていくかを話そうか」
先程までの暗い雰囲気からにこやかな笑顔になったネルフェがそう告げた。
ハーシィーも一拍遅れて「はい」と返事をする。
変わらずハーシィーの後ろでイジスは待機し、フェルドは見守る事にしたようで新たに紅茶を用意した後は椅子に座りなおし話を聞く姿勢をとっていた。
「まずは今何をどれくらいハーシィーが出来るのかを見させてもらう。ギルドの訓練部屋の方が結界もあるし、人払いをさせてそこで。それから、各属性上級まで心得がある様だし、複合魔法を覚えていくのも良いね。細かい制御が必要になってくる魔法も少なくないんだが、これで出来る事が格段に増えるし面白いんだ。それから、魔法薬に魔法具。こちらも覚えておいて損はないし役に立つ。特に回復系の魔法薬は冒険者にとって必需品ともいえる。流行病にも効く薬なんかもそうだけれど、薬草と魔法と合わせて作ったり、魔法具は今私達の生活に欠かせない物もあるし、新しい物を生み出す事の楽しさと言ったら!あぁ、そうすると、付与魔法も覚えておいて損はないな…。物に魔法を込めるんだけれど…」
すらすらぺらぺら。
ネルフェの口から流れる様に言葉が溢れていく。
成程、前にも言っていたが、魔法の事となるとかなり熱くなる質は健在だ。
ハーシィーもイジスも苦笑いで聞くしかない。というよりも口を挿む事が出来ない。流れる様に話しているが、言葉が詰まる事も無く、水分も取らず、口は乾燥しないだろうか。見ていて杞憂のようではあるが。
しかしここでもフェルドが助けてくれた。
「あだっ!」
「お前はいい加減にしないかっ!」
特大の拳骨をネルフェの頭に落とす形で。
物理である。
あまりにも痛かったのか、殴られた部分に両手を持っていってさすろうとして、しかし痛みの為に手が止まり、涙目になっているネルフェはちらりとフェルドを見やった。
「あたた…ち、父上……」
「本当に、お嬢様には何度謝れば済むのか…愚息が申し訳御座いません」
ネルフェの非難の声もフェルドは無視だ。
ふふ、とハーシィーは苦笑しつつも「気になさらず」と告げた。
元々ネルフェが魔法の事に関して我を忘れてしまうというのは知っている事。危害を加えられたりといった事は無いのだから、咎める事も無い。
何よりハーシィーの為にいろいろと考えてくれているというのも解るのだ。
この一撃が効いたのか、ネルフェは先程よりも落ち着いて今後の事を語りだし後日魔法士ギルドの訓練所にて魔法の確認から始める事となったのである。
そうして数日後、魔法士ギルドで人払いされた訓練所での上級魔法の確認は案の定というかネルフェが大興奮し、複数の属性を組み合わせての魔法を初級から中級と無理のない範囲で見本として見せ。
ハーシィーも楽しくなりつい使える魔法を色々と組み合わせてしまい、うっかり訓練所の結界にひびを入れてしまう大失態を犯してしまうのだった。
もちろんひびが入ってしまった結界はすぐさまネルフェと共にハーシィーも協力してさらに強固な結界を張り巡らしたのは言うまでも無い。
確かにネルフェの言っていた様に、かなり面白くなってしまったのだが、魔法を使う時は気をつけようと誓うハーシィーなのであった。
なお、もちろん専属護衛であるイジスもこの場にいたのだが「これは私かなり防御に重きを置いて鍛錬する必要あるかしら…」と悩ましげに吐息を漏らしていたとかいないとか。
ちなみにこの事が原因で、ハーシィーは己の魔力量がかなり多いというよりも膨大だという事を知る。
素直に赤ん坊の頃から魔法を使っていた事を告げた所酷く驚かれ、魔法を扱う事に長け生まれながら魔力量が多いエルフ達よりもハーシィーは凄いという結論に至ったのだった。
確かにぽんぽん上級の魔法を使って組合せ、けろりとしているハーシィーが普通の訳がない。
「私、もしかして、やりすぎ、と言いますか…やってしまった、と、言いますか……」
「まぁ力が無いよりはある方がやれる事は増えるから、私は気にしなくて良いと思うけれどもね」
こうしてハーシィーは己がやれる事を自覚していき、時に失敗しながらも、日々成長していくのであった。
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