一章 出会い
気が付くと、俺は草原に倒れていた。
『ここは?』
記憶を思い返す。
『そうか。俺は、異世界に転生したんだな。』
正直実感は湧かないが見たことない場所だし、多分無事に転生したのだろう。
『まずは、自分の能力が知りたいんだが、どうすれば良いんだ?』
当然の事ながら、今まで魔法など使った事はないし、ゼウスに頼んだように自分がチートキャラのような力を持っているのか確かめる術を知らない。
『ゲームみたいにステータス画面があればな。』
そう呟いた所で、答える者は当然いなかった。
『まずは、街を探してみるか。』
とは言ったものの土地勘は当然ない。
ふとポケットに手を入れると手紙が入っていた。
『お主の願いは叶えた。死ぬことはないから安心するが良い。地図を参考に冒険するがいい。』
どうやら、ゼウスが書いたらしい。
一緒に入っていた地図を見ると、丁寧に現在地の位置が記されていた。
『ここから一番近いのは、レーネ村か。』
俺は、とりあえずレーネ村に向かうことにした。
道中走ってみたが、体が軽い。
足はとても速くなっており、息切れも全くしない。
『本当にチートキャラになったのか。』
草原から山に入りしばらく走っていた時、叫び声が聞こえた。
『誰か、助けて‼️』
叫び声がした方に向かうと、小学生ぐらいの女の子がモンスター達に襲われそうになっていた。
そのモンスターは小柄だったが、体は緑色で、手に棍棒を持っていた。
いわゆるゴブリンと言うやつだ。
俺は、近場にあった石を拾い、思い切り投げた。
石は光の如く速さで飛んでいき、ゴブリンの頭を貫通した。
正直、気持ちが悪い絵面だ。
突然現れた俺にゴブリン達は驚き、慌てて山の奥へと逃げていった。
『大丈夫?』
俺が駆け寄り声を掛けると、女の子は安心したのか泣きながら、俺にしがみついてきた。
女の子が落ち着くまで、待とうかと思った矢先、最悪のタイミングで彼女に出会った。
『その子から離れなさい‼️』
声のした方を見ると、そこにはいかにも冒険者風の女の子が立っていた。
年は、高校生くらい。
髪は長く綺麗な金髪で、後ろでまとめていた。
格好は、冒険者みたいな格好。
『モンスター退治の依頼を受けて来てみれば、野盗がいたとはね。』
剣の切っ先をこちらに向けた少女は俺に敵意むき出しの目をしていた。
『待て待て。俺は、野盗でもないし、この子に何かしようって訳じゃない!』
『そこで死んでいるゴブリンから助けただけだ。』
少女はゴブリンの死体を一瞥すると
『嘘ね。確かにゴブリンは死んでいるけれど、貴方は素手じゃない。』
なるほど。
確かに武器も持たず、モンスターを倒したと言うのは不審がられても仕方がない。
『確かに、武器は持ってない。なら武器を持ってない野盗がいるか?』
少女は一瞬顔をひきつらせたが、キッと睨み付け
『なら、ただの変態ね。』
あくまで、俺がゴブリンを倒した事は認めないらしい。
俺が困っていると、泣き続けていた女の子が泣き止み証言してくれた。
『このお兄ちゃんは嘘ついてないよ。リナを助けてくれたの。』
女の子の言葉に半信半疑だったようだが、一先ずは剣を収めてくれた。
『納得はしてないけど、とりあえずは信じてあげる。』
そう言うと少女は女の子に話を聞き始めた。
『君、レーネ村の子よね。どうして、森の中にいたの?』
『木の実を取りに来たの。そうしたら、ゴブリンの群れに見つかって逃げてたの。』
『この辺りでゴブリンが多発してる話は本当みたいね。』
事情を把握した少女は、今度は俺に聞いてきた。
『で、あんたは何でこんな森の中にいたの?見たところ、冒険者じゃないし、変な格好してるし。』
そう言われて、改めて自分の格好を見た。
スーツを着ている。
仕事帰りに死んで、転生したのだから当然だが、事情を知らない彼女からしたら異世界の服装なんか知るよしもない。
事情を言うわけにもいかないし、そもそも信じてもらえないだろう。
『これは、俺の村で最近作った服なんだ。田舎だから知らないだろうけど。』
彼女は疑いの眼差しを向けながら
『どこの村よ?大抵の場所は知ってるけど、見たことないわ。』
まずい。
いい加減な嘘は通用しない。
俺が答えに困っていると、森の中に雄叫びが轟いた。
『これは!ゴブリンキング!?』
少女は剣を抜くと、臨戦体勢に入った。
やばさを知らない俺は、彼女に聞いた。
『そんなにやばい相手なのか?』
彼女は呆れた顔をして言った。
『はあ?あんた、ゴブリンキングを知らないの?』
『ゴブリンキングは、ゴブリンの群れの中に稀に生まれる存在。強さは、人狼並みよ!』
人狼と言われても俺にはよくわからんが、とりあえずやばい存在らしい。
少女と女の子を危険に晒すわけにはいかない。男として!
『何かよく分からんが、その子を連れて逃げろ!そのキングとやらは俺がひきつける。』
俺の言葉に少女は、突然激昂した。
『ふざけないで!武器も持ってないのに、ひきつけるですって!?』
『あんたは、ゴブリンキングの怖さを知らないから、言えるのよ。死ぬだけよ。』
『確かに俺は、ゴブリンキングの怖さを知らない。だが、女の子を危険に晒すわけにはいかないだろ。それに俺なら大丈夫。』
『わけわかんない。その自信はどこから来るのよ。』
俺達が言い合いをしている内にゴブリンの群れが現れた。
数は10匹程度。
さっきの様子からして全く問題ない。
『下がってろ。』
俺が言い終わらない内に彼女は、群れに斬りかかっていった。
強い。
あっという間に3匹を片付けた。
だが、剣の切れ味も無限ではない。
やはり多勢に無勢だ。
彼女の後ろからゴブリンが襲いかかる。
俺は、後ろから石を次々に投げた。
5匹片付けた。
あと、2匹。
俺がさらに石を投げようとした時、ひときわ大きいゴブリンが現れた。
あれがゴブリンキングか?
少女は、ゴブリンキングを見つけた途端、目の色を変えて斬りかかる。
だが、切れ味の落ちた剣では歯が立たない。
冷静さを失っており、闇雲に斬りかかっている。
彼女は剣を弾かれ、体勢を崩してしまった。
ゴブリンキングは少女を嘲笑うかのように、ゆっくり棍棒を振り上げ、少女に振り下ろす。
石では間に合わない。
俺は、全速で走り彼女を突き飛ばした。
あの時と同じだな。
俺は、死んだ時の事を思い出した。
だが、あの時と同じではなかった。
俺は、死んでいない。
俺の体を光が包み、ゴブリンキングの棍棒を粉砕した。
どうやら、魔法の障壁みたいなものが俺の体を包んでいるらしい。
俺は、近くに落ちていた彼女の剣を拾い、ゴブリンキングを斬りつけた。
剣はたやすくゴブリンキングの体を2つに切り裂く。
残っていた2匹のゴブリンはそれを見て逃げていった。
『ふう。何とかなったな。大丈夫か?』
俺は、彼女に近づき手を差しのべる。
彼女は、あまりの出来事に驚き、放心していた。
『あんた、何者なの?』




