五日目 異世界と音羽
…目が覚めたら、そこは見知らぬところだった。
・・・なんてのが、ファンタジーの始まりだ。
でも、まさか、ホントにこんな所にくるとは・・・。
目の前が真っ暗になり、次に目を開けた時には、
俺の前に、鬱蒼とした木々はなかった。
暗い夜だったはずの場所は、いまやその欠片さえ、残してはいない。
といっても、陽が昇っているわけではなく、何故明るいのかは不明だった。
この景色を見て、口を開かない人なんて、まずいないだろう・・・。
「・・・俺、完全に頭イカれたのか?」
「馬鹿ね。そんな訳無いじゃない。」
気が付けば、目の前にあの子がいた。
少女は続けた。
「ここは、死の無い世界への入り口と狭間、
楽園への扉なの。
…下手に行動しないでね。
一生出られなくなるから。」
その声は、見た目と違ってものすごく大人びていた。
そんで、なんとなく恐ろしかった。
「・・・てか、君の名前は?」
「…あ、言ってなかったっけ。私。」
言ってない。
夢の中で、言う途中で目が覚めたんだ。
判るわけがない。
「私の名前は、音羽。
幼く見えると思うけど、彼方よりは生きてるはずだから。」
「だって、死の無い世界だろ?」
「死ななくても年は取るよ。」
無表情で音羽は言った。
・・・とゆうか、その見た目で俺より生きてるって言われても・・・。
信じるに信じられん。
「で・・・えと音羽さん?」
「音羽。」
間髪いれずに音羽はいった。
ちょっとニガテだなぁ、こうゆうの。
「俺、結局死ぬのか?」
俺は、かなり真面目だった。
こんなわけの判らんところで、この世を去るのもじれったい。
夢なら覚めてほしいくらいだ。
「このままだったらね。
でも、彼方の行動次第で、元の世界に戻れないことも無いの。」
その言葉に、固まる俺。
「『戻れないことも無い』・・・帰られるのか?」
「確率は1%」
・・・。
少なっ。
そのまま音羽は、続けた。
「今の状態だと、だよ。
確立を増やすのは、単に運だけね。多分。」
服の砂を掃いながら言った。
「…あの方に会えたら、100%うまくいく。」
「あの方って誰だよ!?」
いるのかよ、そんな人。
会うだけで帰られるのなら、絶対に会ってやる!
「無理よ。」
弾む心に、氷を入れる音羽。
どうゆうこと・・・だよ。
無理って言えるほど、遠いところにいるとか・・・?
「なんでだよ?」
ムッとして、聞き返したとき、音羽は歩き出した。
真っ直ぐ先の、上が見えないほどのデカい扉に向かって。
途中振り返って、小さく言った。
「もう、死の無い世界には存在しないから。」
それだけ言うと、また歩き出した。
死の無い世界に、存在しない?
単に俺が馬鹿なのか、どうなのかはともかく、
意味が判らない俺は、小さな少女のあとを、ただ追っていくことしか出来なかった。




