三日目 ホコリにまみれた本
「うわぁわあああぁ!?」
飛び起きると同時に、布団を蹴散らす。
なんだよ、今の夢!?
り、生贄・・・!?
俺が・・・!?
だから、おれはまだ16だってのっ!
なんだか判らない、生贄になんてなってたまるかよっ。
・・・て、
なに俺ってば、焦ってんだ?
夢だ。夢になにムキになってんだよ。
ば、馬鹿馬鹿しいっつの・・・。
・・・・・・。
そうだ。
夢に決まってる。
何が起こったわけじゃないし。
第一、正夢になる確率なんて、低い。
さらに、俺は元から夢を見にくい体質なんだ。
たまに見た夢が・・・しかもこんな悪夢に等しい夢が、
・・・正夢になってたまるかよ。
「あ、そうだ。」
手紙をもう一回、読み直してみよう。
なにか、間違っていたのかもしれない。
眠かったし、意識もボォ〜っとしてたから・・・・
「な・・・。」
・・・無い。
・・・んでだよ。
さっきまで、ここにあったはずなのに。
別に誰かが入った、形跡もないし。
・・・消えたよ。おい。
もしかして、寝ているときにどっかに蹴飛ばしたか?
布団の下には無いしなぁ。
ぐ、偶然だよな。
悩んでたって、しょうがない。
今日は久々の休みなんだ。
遊ぶっ!
あの夢のことは、忘れるんだ。
忘れるんだよ、俺。
「っさて。」
今日の朝飯は、おにぎり一つ。
て、そんなの誰も聞いていない。
茶色いウエストバックに、財布とハンカチを詰めた。
あとは、テキトーに何か入ってる。
ちなみに、説明していると、頭が痛くなるものばかりだ。
母親に、「女の子じゃないんだから。」とも、言われたことがある。
まぁ、それで中身はご想像していただきたい。
「でも、どこいこっかな。
別に、誰と遊ぶ約束してたわけじゃないし。」
ドアに鍵をかけた。
窓は・・・閉めたよな。
鍵は持ち歩かない主義の俺。
いつもは、裏庭にあるパイプに引っ掛けた、傘の中に入れている。
でも、今日はカバンの外ポケットに突っ込んだ。
・・・。
なんでこんなことしてんだよ。俺。
今日でこの家とおさらばで、泥棒に入られないように持って行く訳じゃないんだし。
「・・・。」
ま、いっか。
気分だよ。気分。
多分、無意識に持っていこうとしたんだ。
だよな。
そのまま俺は、近くの本屋に行った。
いつもここで時間をつぶしてる。
ここのオヤジは、立ち読みしてても起こらない。
・・・『年』だからだろうか。
何を読もうかと、うろうろしていると、
目の前に、小さな女の子が通った。
赤いリボンを髪につけている、幼くかわいい子。
・・・決して、ロリコンではない。
走って通り過ぎたもんだから、一瞬しか見えなかったけど。
ここで親と離れるのも、珍しい。
だって、本棚が所狭しとあるために、立っていられる場所は少ない。
逸れたなら、簡単に見つかるはずだ。
でも、焦っているようにも見えなかったしな・・・。
て、なに考えてんだよ俺。
どうでもいいじゃんか、他人のことなんて。
しかも小さな子供相手に。
「お・・・?」
面白そうな本を見つけた。
何も書いていない、背表紙。
赤い背景に、金の縁取り。
表紙にも何も書いていないが。
どことなく、不思議な感じのする本。
・・・こんなのあったっけか?
てか、今時こんな素朴な本、見たことねぇよ。
パラパラと、開いてみる。
・・・何も書いてねぇ・・・。
ほこりかぶって、こんな所にあるなんて、
面白い本だな・・・。
作者に用意されておいて、何もかかれずに出されたってか。
・・・ぁはは。
ちょっと気に入った。
えぇっと、値段は・・・。
『○○○○万(税抜き)』
はぁ!?
なんだよ!この値段!!
しかも税抜きかよっ!
買えねぇよ、こんなの。
「ふむ。その本を見つけたか。」
「うわぁっ!?」
お店のオヤジさん!
びっくりした・・・。
存在感ねぇな・・・。
・・・と、オヤジさんは値段のシールをベリッとはがした。
「もってけ。この本はあんたんだ。」
「・・・は・・・?」
それだけ言うと、オヤジさんは店の奥へ、戻っていった。
何だったんだ?
貰ってもいいのかよ。
こんな高い本・・・。
本はやっぱりホコリだらけだった。
不思議で、なんとなく恐ろしくも感じた。




