一日目 不幸の手紙
「・・・。」
『これは彼方への忠告書です。』
これが、この手紙の初めだった。
『彼方は、もうじき死にます。』
『死にたくなければ、こちらの世界へと入らして下さい。』
・・・。
今時、低レベルな不幸の手紙だ。
俺は烈火。
こんな、かっこよそうな名前でも、見た目はもちろん、
頭が特別いいわけではないし、スポーツが最高に得意なことも無い。
頭の髪は、普通に黒くて、親からの遺伝でちょっと猫っ毛。
ひょろっと、背が高いわけでもなければ、小さくて丸いって訳でもない。
つまり、どこにでも居そうな16歳の少年だ。
で、今は高校に通ってて、親元を離れて暮らしてる。
ちょっと、訳ありでさ。
親父の古い友達が貸してくれている、なんとなく古い一軒家に住んでいる。
気がむいて、新聞やらチラシやらが詰め込まれた、ポストを開けてでて来たのがこれだ。
別に、何日までに何人に同じ手紙を渡せって書いていることも無いが、
死ぬって、何だよ。
まだまだこれからだぜ?俺。
『短い人生を楽しく暮らすか、あるいはこちらの世界で生き抜くか。』
『一生に一度の命の選択です。』
『彼方が決めてください。』
『こちらの世界へと来るならば、次の満月の夜、使いを出しましょう。』
『こなければ、次の満月の夜、彼方は死ぬでしょう。』
『では、間違った選択をしないように、祈ります。』
文字自体は、ふざけては見えなかった。
誰が書いたのかは知らないが、見たことの無いくらい綺麗な字だった。
筆で書いたのではなく、鉛筆で書いたわけでもなく。
なんとも不思議な文字だった。
でも、文は馬鹿げてる。
こちらの世界やら、使いを出すやら。
まるでファンタジーじゃないか。
16にもなった俺が、こんなこと、信じられるわけが無い。
むしろ、信じたくない。
でも、これがマジだったら・・・?
って、考えすぎか。
こんな手紙に、マジになっちゃ、絶対ならん。
次の満月は・・・。
いつだったかな?
確か、月カレンダーがあったっけ?
と、がさごそとあさってみると、意外と簡単に見つけることが出来た。
「て、明日じゃねーかよ。」
今日は、10月3日。
4日の場所に、丸い形が描かれていた。
今時、こんな偶然があるだろうか。
もうちょい、マシな偶然にしてほしい。
「んー。ま、明日になればわかるか。」
今はもう11時過ぎだ。
明日は日曜。
今しか眠れる時間は無い。
俺は軽くお茶漬けを食べた後、
すぐさま布団にもぐりこんだ。
ずっと干していないからか、少しカビ臭かった。
今を生きるか、向こうで生きるか。
短い人生を楽しむっつたって、明日だから一日しかない。
何をしろってゆうんだ。
大体、こんなことを考えてる俺って・・・。
手紙は、枕元においた。
捨てるにも、捨てられない。
そして、眠るにも眠れなかった。




