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週刊少年Z  作者: 倉田四朗
第二話 Zは誰だ?
8/21

Zの素顔

 ゼットは保健室内に足を踏み入れた。加藤が彼を見、腕の刃をギラつかせる。僕は後ずさり、部屋の壁に背中を預けた。

「お前か……最近俺たちを潰してまわってるのは」

 加藤が芋虫を喉奥に引っ込め、人間の顔でニヤニヤしながら言った。

「そんなマスクして、頭おかしいんじゃねぇのか?」

 ゼットは加藤の言葉を聞いているのかいないのか、ズカズカと保健室内を歩き、加藤にちかづく。

「それ以上ちか――」

 直後、加藤が吐血した。ゼットが素早く伸ばした腕からブレードを飛び出させ、目にも止まらない早業で加藤の胸に突き刺したのだ。加藤は目を白黒させた。

「え……ばっ……!?」

 ゼットがブレードを引き抜くと、加藤はその場に膝をついた。右腕の変形がもとに戻り、胸の穴から赤黒い、強烈な臭いのする液体が床に広がっていく。

「うぞ……だぼ……? ぞんな……」

 加藤の口が大きく開き、中からふたたびゾンビハートが顔を出す。明らかに弱っているそれを、ゼットはブレードで突き刺した。あまりにもあっけなく、ゾンビハートは絶命する。

「おい、お前」

 ゼットがいきなり僕を見た。僕はあやうく悲鳴をあげそうになった。

「後片付けをするから、そこの女を連れて出ていけ」

「は、はい……」

 僕は視線を落とした。するとそのとき、自分の手ににぎられた一本の包丁が目に入った。

 しげしげと眺めると、包丁の刃に自分の顔が反射する。自分自身と目があった瞬間、僕の中に不思議な勇気が湧いてきた。

(今の僕には、力がある!)

 僕は口もとを結んだ。

「ゼット!」

 僕が叫ぶと、彼はこちらを見た。仮面越しに見えるその視線の鋭さに僕は気圧されそうになったが、それでも包丁をかまえた。

「おま、おまえは、誰だ! 顔を見せろ!」

 だがゼットは動じない。僕はますます怖くなって声をはりあげた。

「ゾンビハートってなんだ! お前の目的はなんだ! 何人殺したんだ! おまえは――むぐっ!?」

「黙れ」

 ゼットが僕の耳元で囁いた。彼は僕が騒がしくなったのを見るやいなや、一気に僕との距離をつめ、あごを押さえて壁に押しつけたのだった。同時に、彼は手首をねじりあげ、僕は包丁をとりおとす。

「おまえがわめくと騒ぎが大きくなる。大きくなったら、また人が死ぬ。いいか、俺はこの学校にいるやつ全員を殺そうがなんでもないんだ」

 ゼットの冷静な口調に、僕は彼が本気でそう思っている

のだとさとって戦慄した。

「まだわめくか?」

 彼はそう訊いてきた。しかし僕は敵意をもってうなずいた。ここで引き下がったら、二度と真相に到達できない――そんな気がした。

「……まだ食らいつくのか、バカめが」

 ゼットは僕の目を見て言った。

「わかった、じゃあ教えてやる」

 彼は憎しみのこもった声で語る。

「ゾンビハートどもは昔からこの世界にいた。だが数は少なかった。数百万人にひとりという数だった。しかしここ数年、この街だけで、なぜか急に数が増えている。俺は独自に調査して、ひとつの結論にたどり着いた」

 マスクの下で、ゼットが顔を歪めたのがわかった。

「誰かがこの町にゾンビハートをバラまいてやがる。人間を殺し、そいつの人生を乗っ取るのを楽しんでる奴がいるんだ。俺の目的はそいつを殺すことだ」

 彼はそう言って僕を壁に押しつけると、手を離した。そのまま座り込む僕の顔の横の壁に、彼のブーツが押し付けられる。

「わかったらさっさとあの女を連れていけ、さもないとおまえも殺すぞ」

「僕にも!」

 思考の前に、言葉が出た。

「僕にも手伝わせてくれ!」

「ふざけるな!」

 ゼットは怒鳴る。

「遊び半分で首を突っ込むんじゃない。おまえはひとりで人も殺せないだろうが」

「……そうだな。だけど、殺せずとも……」

 僕の行動は素早かった。

 僕は頭の横にあるゼットの足を掴むと、立ち上がった。ゼットは驚きつつも、何もできずに床に倒される。僕は彼の体を押さえこもうとした。

「てめぇっ!」

 ゼットが怒りの声をあげ、腕を振る。僕の左頬に痛みが走った。

 ゼットが腕からブレードを出していた。頬から熱い液体があふれるが、僕は無視して彼のマスクに手を伸ばす。

「ばっ、やめ――!」

 ゼットの素顔があらわになった。その素顔を見て、僕は驚愕した。

「鹿羽……エイコ……!?」

 マスクの下には、黒い長髪をスーツの内側に隠し、恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にした鹿羽エイコの顔があった。

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